Amazonが最大の美容品小売業者になることが予測され、あるレポートでは2025年に市場シェアの14.5%を占めると推定されているなか、多くの美容品ブランドはこのオンラインマーケットプレイスに店舗を開設しはじめている。

ことしだけでもクリニーク(Clinique)、キールズ(Kiehl’s)、トゥーフェイスド(Too Faced)がAmazonで販売を開始した。そして、創設から3年のアンチエイジング・スキンケア・ブランドであるエージェンシー(Agency)も、新たにAmazonに参入した。

2021年に創設されたエージェンシーは、創設から10年になるカスタム・スキンケア・ブランドのキュロロジー(Curology)の姉妹ブランドだ。どちらも、処方箋が必要な商品と処方箋不要の商品の両方を、サブスクリプションモデルで販売している。

Amazonでのスキンケア製品展開戦略を強化



キュロロジーは主にニキビや色素沈着過度などスキンケアの問題に特化しているのに対して、エージェンシーはアンチエイジングを対象としている。キュロロジーは12月に18の処方箋不要の商品をAmazonで発売した。エージェンシーは7月下旬、キュロロジーの小売展開戦略に続くことになる。

エージェンシーは、自社の中核の処方箋不要商品であるクリームオイルクレンザー(Cream Oil Cleanser)、ウエイトレスホイップトモイスチャライザー(Weightless Whipped Moisturizer)、シルクスクリーン(SilkScreen)、ハイドロセーラムアイスティック(HydroSerum Eye Stick)、ミルキーハイドレーションコンセントレート(Milky Hydration Concentrate)をAmazonで発売した。

価格は18ドル(約2700円)から52ドル(約7800円)の範囲だ。エージェンシーのD2Cサイトとは異なり、Amazonでは消費者が2カ月のサブスクリプションの条件なしに、各商品を個別に購入できる。

エージェンシーとキュロロジーの最高マーケティングおよびイノベーション責任者を務めるスティーブ・シーガル氏は、Amazonで販売を開始する前に、チームはエージェンシーにとって最良の展開戦略を決定するため包括的な調査を行ったと語る。

「誰もが特定の商品を買うためにサブスクリプションを望むわけではない。当社の内部的な調査から、消費者の40%はサブスクリプションを嫌い、特定のサービスに登録しないことが示された。また、D2Cエクスペリエンス外での発見についてのデータを調べたところ、eコマースを通じて、または小売環境でブランドと関わる機会を得ることで見つけてもらえるということが明らかになった」と、同氏は述べている。

アンチエイジング市場への新戦略を推進



最終的にチームは、このデータを元に、最初の小売パートナーとしてAmazonを選択した。「エージェンシーを次の段階に引き上げるため、消費者、特にサブスクリプションを望まない消費者に見つけてもらう必要があった。このため、消費者にエージェンシーというブランドを紹介するための優れた方法として、Amazonを選ぶことになった」と、シーガル氏は述べている。

このAmazonでの販売開始により、エージェンシーのチームが最初は小規模の運営を行いながら、次第にAmazonストアフロントとマーケティングへの投資を増強する大きな計画があることを、シーガル氏は示した。「いわゆる『ハイハイ、歩く、走る(crawl, walk, run)』アプローチだ」と、シーガル氏は語る。

この多層的な戦略は最初のうちは、Amazonの検索と広告による発見に特化する。「我々は消費者が当社を見つけられるよう、妥当な金額を投資する」と、シーガル氏は述べる。チームはことしの後半、9月に開始する予定の新しいキャンペーンで「多額の投資」を行う。

「これはアンチエイジングのカテゴリーに大きな衝撃を与えると考えており、エージェンシーの製品によってエイジングを回避することがテーマになる」と、同氏は付け加えている。最後に、エージェンシーは自社のインフルエンサーパートナーシップとギフトを増やし、それによってストアフロントへのトラフィックが増大して売上が増加することを期待している。

エージェンシーの中核的な利用者層は40歳から54歳の消費者なので、Amazonで販売を開始し、消費者のオンラインショッピングの行動に適応するのは戦略的な行動だ。以前の米グロッシーのレポートによると、年齢層が高い消費者は次第に対面からデジタルショッピングに移行しつつある。

大手金融企業のキャピタルワン(Capital One)のショッピング調査のデータでは、2024年3月までの12カ月間に、X世代の消費者の85%がオンラインショッピングをしたことが明かされている。さらに、X世代の消費者の9.52%は、最低でも毎週オンラインショッピングをする割合が、平均的なアメリカ人よりも高い。

シーガル氏は、エージェンシーやキュロロジーの収益の額を明かしていない。しかし、2022年10月のプレスリリースでは、その年にCEOに任命されたヘザー・ウォレス氏によって、同社が「収益性のマイルストーン」に達し、2億ドル(約300億円)を超える収益を生み出したことが明かされている。またウォレス氏は、同社がこの時点までの5年間、75%の複合成長率を達成したと付け加えた。

[原文:Curology sister brand Agency launches on Amazon, setting its sights on the mature consumer]

Tatiana Pile(翻訳:ジェスコーポレーション 編集:坂本凪沙)