出張をスマートに、「スーツケース」選び方の正解
コロナ禍を経て出張が解禁となり、スーツケースを求める人が増えている。トレンドの主流は、機内持ち込みサイズだ(写真:左からBERMAS、TUMI、LEGEND WALKER提供)
コロナ禍が収束し、出張が解禁となった企業が多い中、出張用のスーツケースを求める人が増えている。
円安の影響により海外出張のハードルが上がっている今、主にニーズが高まっているのは、国内の短期出張で活躍する機内持ち込みサイズだ。
しかし、いざ手に入れようと思うと、機能やデザインが細かく異なり、迷ってしまうのではないだろうか。スマートな出張をかなえるために、まずは失敗しないスーツケース選びのポイントを押さえよう。
注目したい「キャスター」や「フロントオープン」
基本となるのが、容量とサイズ。短期出張で、かつ現代のビジネスパーソンにとって欠かせないガジェット類を入れるとなると、機内持ち込みが前提だ。また、新幹線移動の際にも大型荷物用スペースは確保しにくいことを想定し、足元や頭上棚に置くことができる小型サイズが便利だろう。
これらの条件をクリアするには、国内線の機内持ち込み規定サイズ(3辺の和が115センチメートル以内)を選んでおくと間違いない。また、1〜2泊分の荷物を過不足なく詰めるには、30リットル台の容量が適度だ。
【写真】機能性抜群のものからおしゃれなデザイン、管理職向けのラグジュアリーなものまで、優秀なスーツケースを厳選
スーツケースの要ともいえるキャスターも重要なポイントとなる。方向転換や急な動きの際には、2輪より4輪のほうが取り回しがしやすい。さらに、1輪に2つのホイールが付いたWキャスターのほうが、より安定した走行が可能だ。また、早朝や深夜の移動に備え、静音仕様であればありがたい。これらの性能について、各メーカーにどのようなこだわりがあるのかをチェックすることをお勧めする。
また、移動が多い出張シーンに不可欠なのが、電車内などでキャスターが勝手に転がらないようロックできるキャスターストッパー。この機能があれば、新幹線でトイレに行く際や、離れたスペースにスーツケースを置いておく際もほかの乗客に迷惑がかからないため安心だ。
PCや資料を素早く出し入れしたり、駅でお土産を購入したりすることの多い出張ユースには、両面にのみ開くタイプよりも、立てたまま出し入れできるフロントオープンが圧倒的に便利。さらに、フロントがフルオープンできてメイン収納にも直にアクセスできるタイプであれば、狭いホテルの部屋でもパッキング時に省スペースとなる。
長く使うためには、強度と耐久性を保ちつつ軽量化も実現できる純ポリカーボネート、ポリカ+ABS樹脂などがオススメだ。また、雨を想定した場合、ソフトよりもハードのほうがケアしやすい。
質感やデザインの意匠も素材によって変わってくるが、ポリカ製は加工しやすくさまざまなデザインに応用がきくと言われている。また、根強い人気のアルミ製も、デキるビジネスパーソンのイメージを裏切らないビジュアルのものが多い。
機能性とスタイリッシュなデザインを求めるなら?
ここまでのポイントを理解したなら、自身のニーズに合わせて選ぶとよいが、とくに機能性とスタイリッシュなデザインを重視する人は、スウェーデンのブランド「innovator」をチェックしてほしい。
innovatorは、北欧らしいデザイン性と機能美が光る優秀なモデルが揃う。中でも7月19日に発売したばかりの「INV5 EVA」は、出張ユースに秀でた新モデル。
innovator「INV5 EVA」2万8600円(税込み)/サイズ:H55×W35×D25cm/重量:約3.3kg/容量:約38L、カラー:ブラック・カーキ(写真:innovator提供)
スーツをシワにならずに持ち運べるガーメントバッグと、スーツを掛けたままコンパクトに畳める画期的な折り畳みハンガーが付属しており、スーツやネクタイをきちんと収納できるのが嬉しい。
ガーメントバッグ(左)、スーツを掛けたまま肩部分を巻き込んで折りたためるハンガー(右上)、パンツボード(右下)(写真:innovator提供)
スムーズな移動に欠かせない、静音Wキャスター、キャスターストッパーを備え、荷物の上げ下げの際に便利なボトムハンドルも付いている。
左から、サイドハンドル、トップハンドルとキャリーバー、ボトムハンドルと静音Wキャスター(写真:innovator提供)
そして何より大きな特徴は、オープンになるフロント部分がソフトなEVA素材となっている点だ。その分、軽量化が図れるうえ、柔軟性があるので少し開くだけで楽に物を出し入れできる。PCを守るクッションや防水加工も施され、“ハードとソフトのいいとこ取り”といったところだ。異素材の組み合わせが抜群にオシャレで、ほかの人と差を付けたいビジネスパーソンにとって魅力的に違いない。
移動中や宿泊先でもすぐに物を出し入れできるフロントオープン(写真:innovator提供)
「ドイツのこだわりと日本の機能美」が結集
ものづくりの技術を生かしたしっかりとした作りや利便性を求める人には、BERMASの「INTER CITY PLUS No.60525」に注目してほしい。BERMASはドイツ生まれの歴史あるブランドだが、現在は、鞄の町として知られる兵庫県豊岡市の老舗鞄メーカーがこのブランドを取得し、日本で進化を続けている。
BERMAS「INTER CITY PLUS No.60525」3万4100円(税込み)/サイズ:W34×H48×D24cm/重量:約3.2kg/容量:34L/カラー:ブラックヘアライン・シルバー・ジェットブラック(写真:BERMAS提供)
質実剛健なドイツのものづくりと繊細な日本の機能美を併せ持ち、三菱ケミカルと日乃本錠前が共同開発した静音素材「Lisof」のWキャスターやキャスターストッパー、YKK製のWコイルファスナーなど耐久性のあるパーツがポイントだ。
とくにビジネスユースに強く、フロントオープン、USBポートも装備。注目すべきは背面にあるドリンクホルダーだ。つい買ってしまうテイクアウトのコーヒーを、ホームや待合室でホルダーに置いておけるのは非常に便利。
フロントオープンで、USBポートも装備(左)。便利なドリンクホルダーも付属(右)(写真:BERMAS提供)
また、外付けのアタッチメントフックはワンタッチで付けられて、サブバッグやお土産、弁当、上着などを下げられるのでとても使い勝手がよい。ドイツ時代のアルミ製を彷彿させる無骨で格好いいデザインもビジネスシーンにピッタリだ。
外付けのアタッチメントフックが便利(左)。ビジネスシーンにピッタリのデザイン(右)(写真:BERMAS提供)
才色兼備で魅力的な価格のスーツケースも
一方、ビジネスシーンで重宝する機能性と、小旅行にも使えるようなおしゃれ感を両立する才色兼備なものを探している人も多いのではないだろうか。そんな場合には、「LEGEND WALKER」を紹介したい。
つねに画期的で高品質なスーツケースを生み出し続ける国内ブランドで、工場との密な連携により、機能性、デザイン性、質感を妥協せず、かつ求めやすい価格を実現している。
例えば「Malibu5208‐49」は、フロントオープン、Wキャスター、キャスターストッパーを装備。ほぼ万能な機能と品質を持ちながら1万円台という抜群のコスパだ。
LEGEND WALKER「Malibu5208‐49」1万9580円(税込み)/サイズ:49×34×23(+7)cm/重量:3.6kg/容量:35L(46L) /カラー:ブラック・アイボリー・ネイビー(写真:LEGEND WALKER提供)
最大の特徴は、30%も容量が増える拡張機能。マチを広げることで荷物の増減を調整できる機能だ。そのマチ部分には蝶番プレートが内蔵され、たわむ心配もない。お土産が増えがちな人や、荷物の増減がある場合に便利なうえ、これ1台で出張にも小旅行にも使えるのが秀逸だ。
中央のマチは7cm拡張し、30%容量が増える(写真:LEGEND WALKER提供)
デザインはシンプルな横リブ。アイボリーやネイビーはファッションを選ばすオシャレに持つことができる。また、8月には洗練されたライトグレーや上品な抹茶など、品よく持てるニュアンスカラーが登場するという。
アイボリー(左)とネイビー(右)はファッションを選ばない(写真:LEGEND WALKER提供)
エグゼクティブが持ちたいラグジュアリーな逸品
キャリアを重ねた管理職には、アメリカで誕生した「TUMI」が似合うはずだ。TUMIのブランドコンセプトは「パフォーマンスラグジュアリー」。ラグジュアリー感のみならず、数々の特許を持つ技術力と確かな品質とを兼ね備えている。あらゆるシーンで美しい所作、機動性(パフォーマンス)を実現する点はまさにエグゼクティブにふさわしい。
とくに、「19 Degree Aluminumコレクション」は、自然界や建築界からインスピレーションを得た19度という射角の模様を刻むことで、単調になりがちなアルミボディをジュエリーのように美しく輝かせ、持つ人を品よく見せてくれる。
カラーもスタイリッシュなシルバー、甘くなりすぎないピンクと、洗練された趣だ。また、航空機規格のアルミ素材は、アルミの中でも軽量かつ耐久性に秀でている。
TUMI「19 DEGREE ALUMINUM コンパクト・キャリーオン」19万8000円(税込み)/サイズ:40.5×44×22.5cm/重量:約4.68kg/容量:24L/カラー:シルバー・テクスチャーブラッシュ(写真:TUMI提供)
取り外し可能な蛇腹式ディバイダーは、PCや書類の出し入れをスムーズにし、そのままビジネスの現場へと運ぶことが可能だ。
整理しやすい蛇腹式ディバイダー(写真:TUMI提供)
また、衣類などプライベートなものは本体片面部分のファスナー付き収納に隠しておくなど、さまざまな荷物を整理しやすい仕組みになっている。
本体の収納部分の片面にはファスナーが付いており、プライベートな荷物などを収納するのに適している(写真:TUMI提供)
同じように見えて、実は千差万別なスーツケース。ビジネスシーンにおけるフットワークの軽さ、機動性、洗練された動きは、メーカーの細やかな工夫や機能の違いで大きく変わってくる。ぜひ今回紹介した選び方のポイントやモデルを参考に、自分に合った出張スタイルを見つけてほしい。
(藤井 麻未 : フリーライター、スーツケース専門家)