Photo: NASA/Helen Arase Vargas|2023年後半に打ち上げられるはずだった月探査車「VIPER」

打ち上げ時期が何度も後ろ倒しになっていた、月探査車「VIPER」。開発の遅れと膨らんでいくコストにより、NASAは月で水氷を探す同プロジェクトの中止を発表しました。

VIPERとは?

VIPER(Volatiles Investigating Polar Exploration Rover、揮発性物質調査極探査車)は、月の南極域で氷状の水を探して分析するよう設計されたNASAの四輪ローバーです。NASAは約450kgのローバーの開発に、4億5000万ドル(約708億円)ほど費やしていました。

中止に至るまでの経緯

当初は2023年後半に打ち上げられるはずでしたが、まずは2024年にずれ込み、その後は追加スケジュールとサプライチェーンの遅延のせいで2025年へと後ろ倒しになっていました。

そして今回、NASAは他の商業月面輸送サービス(CLPS)ミッションに支障をきたす恐れからVIPERプロジェクトの打ち切りを決めたと水曜に発表。なお記者会見では、この判断により少なくとも8400万ドル(約132億円)ほどのコストを削減できると語られていました。

VIPERはAstrobotic(アストロボティック)社の月着陸機「グリフィン」と共に打ち上げられるはずでした。そしてグリフィンは3億2200万ドル相当のCLPSタスクオーダーの下、探査車を月に届けることになっていました。グリフィンのミッション自体も2025年9月へと延期されています。とはいえNASAは、他の民間パートナーの協力を得て引き続き月面探査に尽力していくようです。

NASA科学ミッション局Nicola Fox副局長は、リリースに以下のコメントを寄せています。

NASAには今後5年間で、月上の氷と他の資源の探索をする計画のミッションがいくつもあります。私たちのこれからの方針は、幅広い月のプロジェクト群を支える重要な資金を温存しながら、VIPERに注ぎ込んだ技術と労力を最大限に活用することです。

VIPERの今後

NASAはVIPERを分解し、今後の月面ミッションでパーツを再利用する予定。しかし解体前に、同探査車の活用に興味を示す可能性のある民間及び国際的なパートナーからの提案をまずは考慮するようです。

月の南極域を調べる理由

中止する前、NASAはVIPERを同機関が月に送る最も有能なロボットと評しており、同プロジェクトは月に持続可能な駐留拠点を構築するというNASAの未来の計画に不可欠なものでした。

VIPERはNASAのアルテミス計画の一環として、宇宙飛行士たちが将来的に使うかもしれない水氷を探すために、月の南極域の永久影を掘削するよう設計されていました。

また同プロジェクトでアルテミス計画の将来的な着陸地点について調べられたかもしれませんが、NASAは「VIPERの目標の多くを達成し、月の南極域で氷の存在を確かめる代替の方法で進めていく」とのこと。

2024年第4四半期に着陸予定のNASAのペイロードPolar Resources Ice Mining Experiment-1(極地水氷資源採掘実験機、PRIME-1)が、ドリルを使って水氷を探し、質量分析計で地下物質の揮発性成分を計測することになっています。

Source: NASA, YouTube,

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月の水はどれくらい使える?を探る、NASAのVIPERとは