オープンイヤー型オーバーヘッド耳スピーカー「nwm ONE」

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 2022年からNTTグループ初のコンシューマー向け音響ブランド「nwm」(ヌーム)を展開しているNTTソノリティは、7月18日にオープンイヤー型オーバーヘッド耳スピーカーの新製品「nwm ONE」を発売した。新製品は音を操る2つのコア技術を搭載したnwmのフラグシップモデルで、グローバルでの展開も予定している。

●リスニングデバイスは外音を遮断する没入から外音との共存へ



 NTTソノリティは7月18日、東京・港区で発表会を開催し、オープンイヤー型ヘッドホンの新製品「nwm ONE」を発表した。nwm ONEは発表会当日の18日から販売を開始。オープン価格だが、実勢価格は3万9600円だ。

 NTTソノリティは2021年9月、最先端の音響信号処理技術を駆使して音響関連事業を行う会社として設立。2022年から音響ブランドnwmで4製品の音響デバイスを発売してきた。ちなみにブランド名のnwmはNew Wave Makerの頭文字を略したものである。

 nwmのネーミングは音のテクノロジーと新しい発想でよりよい暮らしを提案し、世の中に新しい波を起こしていくという想いが込められている。

 コロナ禍でライフスタイルは大きく変化した。会議や授業はオンラインになり、スマホによる動画・音楽視聴の普及拡大で日常的にイヤホンを装着することが当たり前になった。だが、長時間の装着による耳の疲れや外部の音を遮断することによる会話のしにくさ、周囲の音の聞こえにくさなど、新たな課題も生まれた。

 同社では外部の音を遮断してイヤホンから出てくる音への没入感ではなく、イヤホンから出てくる音と外部の音との共存を目指し、nwmブランドでオープンイヤー型イヤホンを展開。特許出願済みの独自技術であるPSZ(パーソナライズサウンドゾーン)技術を搭載した製品を「耳スピ」として発売している。

 発表会で登壇した同社の坂井博代表取締役社長は「オープンイヤー型イヤホンの国内市場規模は直近の1年間で倍増し、今後も継続的な成長が予想されます。グローバル市場でも8.34%の年平均成長率で今後も推移していくと見られます」とオープン型イヤホンの市場拡大について述べた。

●音を操る2つの技術を採用し音漏れが気にならずクリアな音声を届ける



 新製品のnwm ONEは2つのコア技術を搭載している。一つは前述のPSZだ。これはノイズキャンセルと同じく、音の波長と逆位相の波長を出して音を打ち消し合うもの。ただし、従来のノイズキャンセルは再生する音以外の外音を消すのが目的だった。

 PSZは、イヤホン本体から外に漏れる音に対して逆位相の波長を出す。これによりオープンイヤー型にも関わらず、音漏れを最小限に抑える。つまり、逆位相の波長で音を消すのはノイズキャンセルと同じ原理だが、PSZでは外音を消すのではなく、外に漏れる音を消す技術なのだ。

 搭載した2つのコア技術のもう一つが、Magic Focus Voice。これは通話やオンライン会議などでの発話に関する技術で、既発の高性能イヤホンnwm VoiceBudsに搭載されている。

 これは話し手の声を特定するビームフォーミング技術とマイクに入ってくるさまざまな音にフィルターをかけて話し手以外の音を分離するスペクトルフィルター技術をハイブリッドで用いて、必要な声を仕分けて相手に届ける。

 Nwm ONEでは既発のnwm製品に搭載した、それぞれ2つの技術を合わせて採用しているのだ。

●低域と高域の2wayドライバーを搭載して高音質を実現



 2つの技術は余分な音をカットして音を操る技術だが、nwm ONEはこれに加えて高音質のサウンドを楽しむ製品。そこで採用したのが、新開発の2wayドライバー。高い音域は直径12mmのツイータードライバー、低い音域は直径35mmのウーファードライバーで再生する。オーバーヘッドタイプだからこそ高音質につながる大口径ドライバーを採用できた。

 2つのドライバーはそれぞれ個別のアンプで駆動させ、同軸上に配置。さらにスピーカー最先端のグリルに設けられた孔は、低域帯と高域帯でパターンを変えることで高音質を実現している。

 オーバーヘッドタイプで背面開放ではないオープンイヤーは、nwm ONEの特殊な形状だからこそ実現できたといえるだろう。左右の中央には回転式スピーカーカプセルがあり、その同心円状にはソフトで劣化が少ないシリコーンゴム製のイヤーパッドが配置されている。

 使用の際はイヤーパッドを耳の周囲に当て、ヘッドバンドのスライダーで位置を調整して固定する。本体の重量は約185gで軽く、長時間装着しても蒸れずに快適という。

 装着した状態で回転式スピーカーカプセルは耳に触れていない。耳から近い位置にあるのは確かだが、耳穴から離れており、物理的に耳と接触していないのだ。人によって耳の角度は異なるため、スピーカーカプセルを動かして微調整もできる。

 再生デバイスとはBluetoothで接続し、付属のUSB Type-Cケーブルで有線接続も可能だ。Bluetoothのバージョンは5.3で、LE Audioやマルチポイントに対応。専用アプリ「nwm Connect」では立体音響技術の360 Reality Audioの設定やイコライザーによる周波数帯の調整、バッテリー残量の確認、オートパワーオフの時間設定などもできる。

 約1.5時間の充電で最大20時間の音楽再生ができ、わずか5分の充電で約1時間の再生が可能だ。

 同社の坂井博代表取締役社長はnwm ONEの発売を機として「世界に向けてのアプローチを開始し、販売を強化していきます。アメリカではイベントの出展などで体験を強化し、EUではドイツからテストマーケティングを実施します。中国市場では今年度に販売を開始する予定です」と語った。

●nwmアンバサダーの磯村勇斗さんらがゲストとして登壇



 発表会では俳優でnwmアンバサダーの磯村勇斗さんと東京事変のギタリストで音楽家の長岡亮介さん、モデルの秋元梢さんの3名がゲストとして登壇。その場でnwm ONEを体験した。

 磯村勇斗さんは「これまでの耳スピも革新的と思いましたが、nwm ONEはより音のベールに包まれているような感覚です。耳をふさがない開放型で非常に軽く、長時間付けていられますね」と感想を述べた。

 長岡亮介さんは「耳のそばで音が鳴っているような感じ。ラクで気持ちよいですね」と話し、体験で感じたインスピレーションをギターのインプロビゼーションで表現した。

 秋元梢さんはモデルの立場から装着した印象を語った。「ピアスをしたままヘッドホンを付けると圧迫感を感じることもありますが、つけ心地が良くて全く違和感がありません」

●耳のすぐ近くに高音質スピーカーがあるから耳スピ



 発表会の後でnwm ONEを試す機会があったので、その体験した感想を記す。まずは装着感だ。一般的なオーバーヘッド型ヘッドホンと比べると重さは約185gと軽く、耳全体をふさいでないこともあり、圧迫感や重量感は全く感じない。また、装着しても周囲の音は普通に聞こえてくる。

 耳の周囲と接するイヤーパッドは前述のとおり、シリコーンゴム製。イヤーパッドの円周部分だけが当たるので開放感があり、蒸れたりすることはないだろう。

 音楽を再生すると、その音質や音場に驚かされた。ツイーターとウーファーの2wayドライブ搭載の効果により、音楽がキレのある高音域と濁りや歪みのない低音域で再生された。低音から高音までクリアな音で再現されながらも一体感があり、まとまりがある。

 ダイレクトに音が耳に入ってくるカナル型イヤホンや密閉型ヘッドホンとは全く聞こえ方が異なる。耳のすぐ近くに高音質のスピーカーを置いて聴くようなイメージだ。しかも密閉空間で音を鳴らしていないので、音の広がりも感じられる。

 スピーカーで音楽を聴く場合、スピーカーと耳とは当然、距離がある。その距離ゆえに周囲の音も音楽に混ざって耳に届く。また、高音域に比べて低音域は音が拡散し、スピーカーから離れるとボヤケた音になりがちだ。nwm ONEはこのような音の拡散やボケがなく、音はあくまでクリアだ。

 音質にこだわる人は置く高さや左右のバランスも考えてスピーカーを配置する。nwm ONEは耳のすぐそばにスピーカーがあるため、高さもバランスも常に最適な状態だ。同社の耳スピというネーミングの確かさは、実際に音を聞けば納得できるだろう。

 ちなみに音楽を聴いているときは周囲の音もしっかり聞こえ、音楽を聴きながら会話もできる。外音と聞こえている音楽は混じらず、別物と認識できる。表現は難しいが、音楽の周りに外音があるという感覚で、同社の提唱する音の共存が実感できた。

 試しにヘッドバンドを頭から外してみたが、音楽を再生しているにも関わらず音は聞こえない。スピーカー部に耳を近づけると、かすかに音楽が聞こえる程度。普通であれば気になる音漏れについて、これならば全く気にしなくてもよいレベルだ。

 同社ではnwm ONEを圧倒的な開放感が生む、新時代のサウンド体験とうたい、UNMUTE THE WORLD・今こそ、ミュートを解こう。をキャッチコピーにしている。実際に体験すると、これらのコピーが実によく分かる。

 グローバル展開も視野に入れて開発されたNTTソノリティのnwm ONE。リスニング体験ができるのであれば、ぜひ試してほしい。これまでのイヤホンやヘッドホンとは全く異なる音の体験ができること間違いなしだ。