製造元の磯山商事WEBサイトより

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外食産業専門コンサルタントの永田ラッパと申します。「日刊SPA!」では、これまで30年間のコンサルタント実績をもとに、独自の視点から「食にまつわる話題」を分析した記事をお届けしていきたいと思います。今回のテーマは、「激辛食」です。
7月16日、東京都大田区の高校で、「18禁カレーチップス」という激辛ポテトチップスを食べた高校生14人が体調不良を訴えて救急搬送される事故がありました。幸いにも皆さん軽症で、命に別状はないとのことですが、この報道に接したとき、私の中にいくつかの懸念が芽生えました。

◆辛さの適量は人それぞれだからこそ…

この事故がきっかけで、「辛いもの=危ないもの」というイメージが定着してしまうのは危険です。適度な辛さは健康にいいというエビデンスがあります。辛い料理の多くはトウガラシが使われています。トウガラシの辛みの主成分であるカプサイシンは、摂取することで発汗が促されてダイエットや血液循環がよくなるなどの効果が期待できます。また善玉コレステロールが増えるというデータもあるのです。

しかし辛いものに強い人もいれば、そうでない人もいます。辛さの適量は人それぞれで異なるのです。食べたときに「辛い!」と思いながらも次のひと口を求めてしまうものは、その人にとって適量の辛さと言えるでしょう。逆に食べたあと、噴き出すように汗が出たり水をガブガブ飲んでしまい、次のひと口に手がのびない場合は、その人の辛さの適量を超えていると言えます。

◆激辛食は「ハイリスク」であることを忘れてはいけない

「激辛」といわれるものは健康へのリスクも非常に高いのです。激辛食は、のど元過ぎれば安全というわけではありません。食道や胃や腸も一定のダメージを受けます。食道部分がヤケド状態になることもあれば、逆流性胃腸炎を発症してしまうケースや、喘息持ちの人のならばそれが悪化することもあります。

それでも数年前から「激辛ブーム」と呼ばれるものが続いています。「激辛女子」と呼ばれる女性も増えていますね。私は四川料理店やインド料理店、辛さを選べるカレーショップなどの存在を否定するつもりはまったくありません。辛いものが好きな人にとって、そんなお店は選択肢のひとつになっているでしょう。すでに述べた通り、辛さの適量は人それぞれです。自分の適量を把握して、辛い食べ物を楽しむというスタンスであれば問題はないのです。

◆激辛メニューを食べさせるテレビ番組の悪影響も?

激辛ブームの流れからか、テレビのバラエティ番組などで激辛メニューをタレントなどが食べてコメントしたり、演出としか思えないようなリアクションをするシーンも増えました。ブームがエスカレートし、今回のような事故が起きた背景には、このような番組の影響が大きいかと思います。私は以前からSNSなどで警鐘を鳴らしていました。

そのような番組に出演するタレントの中には、本当に激辛好きの人もいるでしょう。でも、そうでないタレントの場合、自身の露出のために我慢して食べた結果、体調を崩しているかもしれません。

私の根底にあるのは「食を提供することでお客さまに喜んでいただき、その人の人生を豊かにする」というものです。これは、ほとんどの飲食店でも飲食料品メーカーでも同じだと思います。ゲーム感覚で激辛メニューを食べさせるような番組に協力している飲食店は、自分たちのビジネスのプロモーションや利益を優先しているのではないでしょうか。健康を害してしまうレベルのものを提供する人たちは、食を扱う者としての知識も勉強も足りないのです。食べた人の命にかかわることもあるということを、食に携わる者はしっかりと認識しなければなりません。