「糖尿病で足を切断する」…なぜ糖尿病は「足」と関わりが深いのか? 糖尿病歴30年の専門医が解説
糖尿病が重症化すると、最悪の場合「足を切断」しなければならなくなることは、糖尿病を患ったことのない人にも広く知られていると思います。「靴擦れ」といった日常的な足のトラブルが、足を失うきっかけにつながることもあるほど、糖尿病と「足」は密接に関わり合っています。
しかしなぜ、糖尿病と「足」はこれほどまでに深い関わりがあるのでしょうか。自身も30年の1型糖尿病歴がある、内科医・糖尿病専門医の市原由美江さんが解説します。
「靴擦れ」で膝までの切断もあり得る
糖尿病になると、足を失うことがある――。糖尿病に詳しくなくても、「こうしたことが起こり得る」と聞いたことがある人は、きっと多いと思います。実際、糖尿病と「足」の関わりは非常に深いものです。
足を失う主な原因は、高血糖による末梢神経障害と、血管障害(動脈硬化)です。末梢神経障害による知覚鈍麻(どんま)により、足の傷や腫れに気付かずに炎症が広がり、血管障害により血流が悪くなり、傷の治りが悪くなるためです。
糖尿病になると、足のトラブルが起こりやすくなるといわれていますが、これは本当です。糖尿病によって免疫力が低下するため、「水虫」などの感染症にかかりやすくなるのです。先述した末梢神経障害による知覚鈍麻により、痛みに気付きにくいので、知らないうちに傷や靴擦れができることもあります。そのため、糖尿病の人は「足のケア」が重要になってきます。
例えば、糖尿病患者が「靴擦れ」を起こし、適切な処置をしなかったとします。病歴や血糖コントロールの良しあしで個人差はありますが、血糖コントロールが不良な状態であれば、靴擦れにより皮がむけたり、水疱(すいほう)ができたりした場所から菌が感染し、炎症が周辺の組織にまで広がります。放置すると壊疽となり、足の切断、また感染の広がりによっては膝までの脚の切断もあり得ます。
糖尿病で足を失うことにならないために、糖尿病患者が日常生活上で気を付けなければならないことは、第一に「血糖値をなるべく良好に保つこと」です。さらに、毎日入浴時に自分の足をしっかりと見て、傷や潰瘍、湿疹がないかどうか確認を行うことが大切といえます。「深爪」も足壊疽の原因となるので、爪切りの際には十分に注意してください。