毛先が細くなったり、根元が白くなったりと、髪トラブルは年齢とともに増えていきます。その変化を受け入れて白髪染めをやめてみると、心や体がラクになることも。俳優の竹下景子さん、川上麻衣子さん、作家の池田まき子さんに「グレイヘアの楽しみ方」や「移行期間の乗り越え方」をお聞きしました。

竹下景子さんインタビュー。2週間に1回の白髪染めをやめて、ストレスフリーに

昨年に古希を迎えてもなお、映画やドラマ、舞台でイキイキとした姿を見せている俳優・竹下景子さん。毎日をストレスフリーに過ごすために役立っているのが「グレイヘア」なのだそう。

「きっかけは、2020年に『70才、初めて産みますセブンティウイザン。』というドラマに出演したこと。70歳で妊娠する女性を演じたのですが、タイトルにも入っているくらいですから、やはり年齢が重要なわけですよね。70歳らしく見せるためにも、思いきってやめてみようと。それまでは身だしなみのつもりで、2週間に1回のペースで染めていたのですが、それがなくなったら本当にストレスフリーで。手入れもラクになったし、気持ちも軽くなりました」(竹下さん、1ページ目以下同)

ドラマの撮影が終わったあとも、そのまま続けることに。黒く染めることはしませんが、半年に一度程度明るいカラーを足すことで華やかな印象になるそうです。

「今は、ほんの少しだけゴールドのハイライトを入れて明るくしています。白と黒だけで中間色がないと、メリハリがつきすぎてしまうので。私は幸いにも髪が丈夫なほうですが、黒く染め続けるよりは、きっと髪や頭皮の健康にもいいはずですよね。でも、役の上で必要になれば、またここからどんな色にも変えられる。すごく自由度が上がった気がします。ただ、カットをさぼると、どうしてもフェイスラインのまわりに白の分量が増えてきて。そうすると、夫から『ちょっと白髪が多いんじゃない? お母さんは女優なんだからね』と、チクリと言われることも(笑)」

グレイヘアの挑戦は、変化をゆっくり楽しめるときに

「グレイヘアにしてみたい」という女性は年々増えていますが、きれいなグレイヘアになるまでは時間がかかったり、家族の目が気になったり…。途中で断念してしまうケースも多いもの。

「たしかに、即座に変えられるわけではないので、移行期間はかなり辛抱が必要ですよね。私のまわりにも、悩んでいる方が何人もいらっしゃいますし、なかには挫折してしまったという方も。もともとの髪質やライフスタイルによって、それぞれ適したタイミングがあるでしょうし、ストレスになっては元も子もありませんよね。変化を楽しみながら、ゆっくりつき合っていけるときにトライしていただけたらと思います」

グレイヘアを引き立てる鮮やかな色合いのワンピース姿での撮影中、さまざまなポーズを軽やかにとってくれた竹下さん。身の回りのことにも、新しい挑戦にも、好奇心いっぱいに向き合えるのは、すこやかさを保つための日々の習慣のたまものかもしれません。

ワンピース¥92400、カーディガン¥91300(ともにアルファ ストゥディオ/サン・フレール)、サンダル¥29700(コール ハーン/コール ハーン ジャパン)、イヤリング¥30800、ネックレス¥31900、ネックレス¥24200(すべてヲジェ/WOJE)

白髪染めをやめて半年の実態は?

俳優・川上麻衣子さんは、50代後半で「白髪染め」を思いきって休止したそう。今回は「白髪染めをやめて半年」経った現状や、中途半端な白髪への対策について語っていただきました。

白髪染めをやめてから3か月でもう少し様子を見ると決断したのですが、そこからさらに3か月が過ぎたところです。つまり6か月目に突入したのですが、いやはやこれは相当に根気のいる作業だということを感じています。

白髪を受け入れようと決意はしたものの、やってみると意外に白髪のパワーがいまひとつなために、どっちつかずの中途半端に心悩ませる方が多いことを、身をもって実感しています。

「あなたは一体どうしたいの? どこに向かっているの?」

髪の毛が今にもそう語りかけてきそうです。白い部分は確実にその幅を増してきている一方で、黒髪の量はじつはまだまだ圧倒的に多いというのが還暦前世代の平均的な現状かもしれません。

40年来の美容師に「白髪が中途半端」問題を相談

さぁ、どうしたものか、と次のステップを探すべく、まずは長年カットをお願いしている美容師さんを訪ね相談してみることにしました。

その彼曰く、グレイヘアへの転向はかなりの時間を要するとのこと。とくに私のように黒髪を残しながらの転向は非常に難しいことがわかってきました。メッシュなどを入れることも検討してみましたが、茶髪が不似合いだった過去の記憶を考えるとブリーチを施す過程で却下。

結果、美容師さんが教えてくれた、老け顔にさせない大切なポイントである「前髪と周辺の顔まわり」だけは、携帯型の白毛隠しのようなもので対処していくという方法を取ることにしました。幸い私の場合、現状、顔まわりよりも中側に白い部分が集中しているので、この顔まわりに気を配りながら、今後も進めていくことに落ち着きました。

50代からの髪に必要なもの、避けるべきもの

そしてなによりも大事なのは、じつは「ツヤ」なのだと今更ながら感じています。髪にツヤさえあれば、白が目立ち始めても可哀想な印象にはなりません。グレイヘアへの転向でいちばん避けなければいけないのが「諦めの精神」かもしれません。

どうせ年を取ってしまったのだからと諦めないこと。若い頃、寝ぐせがついたまま外出するのがいやで早起きをして朝シャンを日課にし、くるくるドライヤーが発売されればすぐに飛びついて技を習得したあの頃のように。そしてツヤは健康のバロメーター。食生活や生活習慣を見直しながら昭和世代の同志のみなさま、ともに人生楽しんでいきたいですね。

60代、グレイヘア歴10年。負担が減って心もラクになった

55歳で白髪染めをやめ、ありのままの髪を活かす「グレイヘア」に移行した児童書ノンフィクション作家・池田まき子さん。グレイヘアにしたことで、白髪染めをするための美容院代、時間の負担がなくなりました。
しかしいちばんよかったことは、精神的な部分だったそうです。

「白髪を染めていた頃は、鏡をのぞき込んでは、『ああ、また白髪が出てきた』と、うんざりする毎日でした。それが、グレイヘアにすることを決めた途端、白髪が伸びるのを心待ちにするように。目尻のシワ、おでこのシワまでもが、なんとなく愛おしく感じられるようになったんです」(池田さん、以下同)

品のあるグレイヘアにするためのコツ3つ

「すてきなグレイヘアに見せるためには、3つのコツがあります」と池田さん。
「まずはワックスをつけてスタイリングすること」。

また、眉もグレイヘアに合わせた描き方にすると、はつらつとした印象に。
「1年ほど前から、眉毛に白い毛が混じってきました。私は眉の白い部分と眉頭を、グレーのアイブロウペンシルでちょんちょんと書きたしています。眉毛が黒々とくっきり見えると、きつい印象になりがちです。アイブロウペンシルでたすくらいが、グレイヘアとのバランスがよいと感じます」

エレガントに見せるために、背筋を伸ばすことも心がけているそう。
「姿勢が良くないと老けて見られると思うからです」

黒髪からグレイヘアへ、移行期間の乗り越え方

白髪染めをやめたばかりの黒い髪から、染めていない髪がのびきるまでの期間を「移行期」といいます。黒染めした髪からは色が抜け、茶色に。根元には白髪が生えてきます。この期間中は、ただ髪が伸びるのをじっと待つしかありません。三毛猫のような髪が続くことが我慢できず、グレイヘアを諦める人も少なくないそうです。

「私はグレイヘアを始める前からベリーショートだったので、移行期間は3〜4か月ほどでした。そんなに困った思い出もありません。だから移行期間を短くするために、ベリーショートにするのもひとつの方法ですね。また白髪と黒髪の境目をぼかすために、白髪だけを淡いグレーに染める方法もあります。移行期は、家族や周囲の目が気になってしまう人も多いようです。けれども、『私はグレイヘアにするの』と宣言してしまえば、受け入れてもらえることがほとんどですよ」