スバル新型「BRZ」登場! MT車に新設定の「SPORTモード」がスゴい! 自由自在に操れる“ふたつの個性”とは?
新型「BRZ(D型)」何が変わった?
2021年に2代目に進化したスバル「BRZ」が3回目の改良を行ない、通称「D型」へと進化しました。
従来のスバル車だと「D型=ビックマイナーチェンジ」することも多いのですが、今回はどうでしょうか。
まず内外装ですが、デザイン的な変更はありません。ただ、細かい部分ではエクステリアはデイタイムラインニングライトの採用、インテリアはウインカーレバーの操作方式変更(リターン式からロック式)と、アップデートは行なわれています。
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この辺りを開発責任者・小林正明氏に聞くと「デザインは高い評価を得ていましたので変える必要が無いと判断。そのリソースを機能のアップデートに集中させました」とのこと。
では、肝心な機能の進化を見ていきましょう。
パワートレインではMT車専用の「SPORTモード」を追加。ノーマルに対してワインディング/サーキットでのさらなるコントロール性向上のために、よりリニアに、よりレスポンシブなスロットル特性が与えられています。要するに現代版「SIドライブ」と言うわけです。
小林氏は「これはスーパー耐久(S耐)のST-Qクラスを戦ってきた61号車から得られた知見・ノウハウを量産車に応用したモノになります。同時にアクティブサウンドコントロールの音量もアップしています」と自信を見せます。
一方、AT車は「マニュアルシフト時のダウンシフト制御許容回転数の拡大(一律制限を、ブレーキ開度や減速度から総合的に判断)」が行なわれています。
フットワークは「電動パワーステアリング(EPS)のアシスト特性最適化」と「ダンパー減衰力最適化(STIスポーツ以外)」が行なわれています。
もう少し具体的に説明すると、EPS制御は「スポーツ=重い」ではなく、操作性を上げつつ手ごたえを感じやすい特性に変更。ダンパーはタイヤの接地をより感じ取りやすい特性にすべく、減衰のみならずリバウンスプリングにもこだわった味付けだと言います。
小林氏は「スバルの『安心と愉しさ』はそのままに、日常域では『意のままに操れる愉しさ』、非日常域は『直感ハンドリングの深化』を磨き上げたセットアップになっています」と、パワートレイン同様の自信です。
ただ、初代では、2016年のマイナーチェンジで「E型」が登場していますが、当時のD型からの大幅進化と比べると、今回のC型からD型への変化が少なめに感じる人もいるでしょう。
そこで今回、発表に合わせて富士スピードウェイ・ショートコースで従来モデル(C型)と乗り比べをしてみました。
走り始めて即座に感じたのは、全てにおいて「雑味が無くなった」という点です。
ステアリングはまるでいいベアリングを使っているかのようなスムーズさと抵抗感の無いスッキリした操舵感にも関わらず、路面の状況はよりクリアに伝わります。
ちなみにアシスト量は軽い方向に変更されていますが、微小なコントロールはむしろやりやすくなっています。
安心感がより増したフロントに対して、リアも接地性アップを実感。従来モデルよりもコーナリング時にアクセルオンでリアに荷重を乗せやすく、まるでリアタイヤをよりグリップの高い銘柄に変更したかのような粘り強さを見せます(タイヤは変更なし)。
そのため、クルマなりに走らせている限りはリアが破たんする気配はなく、FR(後輪駆動)にも関わらずまるでAWDのようなスタビリティの高さを実感。
ドライ路面に加えて土砂降りのウエットでも走行しましたが、従来モデルではちょっと躊躇する雨量でも、新型は喜んでコースインできるくらい安心して走れました。
今回は乗り心地に関するアナウンスはありませんでしたが、足の動きもよりしなやかな印象。
縁石を跨いだ時の入力の優しさは、STIがチューニングしたダンパーを装着する「STIスポーツ」にかなり近づいたように思われ、恐らく乗り心地もレベルアップしているはずです。
SPORTモードとノーマルモードの違いは?
このようにいうと、「結局安定方向なのね」、「FRの旨味が減ってしまった?」と思う人がいるかもしれませんが、むしろその逆。
リアの接地性が上がったため、ドリフトをするためには従来モデル以上に前荷重を意識した走行が求められますが、それさえできれば今まで以上に自由自在です。
ちなみに従来モデルは限界を超えて流れ出す時に若干唐突な所がありましたが、新型はそればほぼ無くなっているため、スライド量のコントロールも僕レベルのドライビングスキルでも楽勝と、とにかく懐が深いのです。
ただ、個人的にはFRらしい派手なドリフトよりも、スライド量は少なめの「速いドリフト」が超絶に気持ちいいと感じました。
この深化したフットワークに、SPORTモードがとてもいい仕事をしていて、ノーマルのリニアな特性を損なわずに、より高応答、より高レスポンスな特性になっています。
体感的にはエンジンがシャキッと目覚めたかのようなピュアさと、過渡領域では2.4リッターエンジン(FA24型エンジン)がまるで2.6リッター級の“FA26型エンジン”になったかのような力強さを実感しました。
ただ、操作に対してとにかくダイレクトな特性なので、ラフな操作をするとクルマは間違いなくギクシャクします。だから、デフォルトではなく、モード切り替え式としたのは大正解。通常走行は間違いなくノーマルのほうが扱いやすいです。
逆を言えば、それくらいドライバーの細かいアクセル操作に忠実に反応するので、サーキットなどの非日常域でのコントロール幅は確実に増しています。
今回の走行では、ドライ路面でのスライド量のコントロールのしやすさ、ウエット路面ではグリップで走る時のコントロールに大変役立ちました。
ちなみにS耐のST-QクラスでBRZを走らせるTeam SDA Engineeringの総監督である本井雅人氏は、「実はSPORTモードは事前にS耐ST-4クラスに参戦するチーム(トヨタ GR86)に提供して評価もしていただいています。各ドライバーからは『このほうが乗りやすい』と高い評価を得ています」といいます。
つまり、すでに実戦でも“お墨付き”というわけです。
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新型BRZの走りに関しては「ビックマイナーチェンジ」に恥じない伸び代と言っていいでしょう。
初代BRZがマイチェンでE型に進化した時は「走りが86に寄った!? 」と感じましたが、現行BRZのD型への進化は、「BRZの軸をブレさせることなく、走りの純度が引き上げられた」だけでなく、「ドライバー次第で二つの個性を備える」といった印象です。
そういう意味では、D型はスバルの「GT思想」とBRZの「FRスポーツらしさ」がバランス良く両立できていると思いました。まさに控えめだけど、大きく進化したというわけです。