待望の「ロータリーエンジン」復活! マツダがコツコツ継続しているユニークな技術がスゴい! 一体どんなもの?

写真拡大 (全3枚)

燃費の悪さは過去の話? 発電用でロータリーエンジン復活!

 2024年4月にマツダのフラッグシップモデル「マツダ6」が生産終了しました。
 
 現代では希少になったセダン&スターションワゴンというボディバリエーションだったこともあり、クルマ好きのあいだから「このご時世に強気のラインナップ!」や「さすがマツダ!」といった賞賛の声が多数あがっていました。

市販化が期待されるマツダ新型「ロータリースポーツカー コンセプト」(アイコニックSP)

 そんななか、マツダは中国で新型セダン「EZ-6」を発売する予定だといい、海外モデルではあるものの、セダンを作り続けることが明らかになっています。

【画像】カッコいい! これがマツダの新型「ロータリースポーツカー」です! 画像を見る(30枚以上)

 このように、マツダは「主流」から外れたジャンルや技術をコツコツと続け、磨きをかけていく傾向があるのですが、同社が諦めることなく継続している3つのことを紹介します。

●ロータリーエンジン

 一般的なエンジン(レシプロエンジン)はシリンダー内で混合気を爆発させた勢いでピストンを上下させ、コンロッドを介して回転運動に変換することでタイヤを回し、推進力としています。

 一方、ロータリーエンジンはまゆ型のハウジング(シリンダーに相当)内におむすび形(三角形)のローター(ピストンに相当)を配し、爆発のパワーでローターを回すため「回転運動に変換」という行程が不要となります。

 そうした効率の良さやコンロッドなどの大きな部品の少なさにより、ロータリーエンジンは滑らかで高出力、低騒音、低振動なうえ軽量でコンパクトという数々のメリットがあります。

 一方で構造上どうしても熱効率が悪くなる傾向があり、低回転域のトルクが小さかったり、燃費が悪かったりといったデメリットも存在しました。

 これまでにさまざまなメーカーがロータリーエンジンにチャレンジしましたが、マツダを除いては、結局はどこも継続的に生産することはありませんでした。

 マツダは1967年に「コスモスポーツ」にロータリーエンジンを搭載すると、その後は「ファミリア」「サバンナ」「カペラ」「ルーチェ」と、次々にロータリー搭載車のラインナップを拡充。

 プレミアがつく中古車となった「RX-7」や、同車の実質的な後継車にあたる「RX-8」が2013年に絶版になり、マツダもロータリーエンジンを諦めたのかと思われました。

 しかし、マツダは諦めるどころか「バックファイア(過早着火)が起きにくい」というロータリーエンジンの特性から水素エンジンへの転用や、コンパクトさを活かしハイブリッドの発電用ユニットとしての採用など、次世代の技術として着目。

 決して投げ出すことなく開発を続け、実際にロータリーエンジンを発電機として搭載するプラグインハイブリッド車の「MX-30ロータリーEV」を2023年に発売しています。

世界的にヒットしたマツダの「ライトウェイトスポーツ」とは?

●ライトウェイトスポーツ

 スポーツカーというとハイパワーエンジンを搭載し、走りに特化したクルマをイメージしがちですが、そこそこのパワーのエンジンに軽量コンパクトなボディを組み合わせ、クルマとの一体感を楽しむ「ライトウェイトスポーツ」と呼ばれるジャンルも存在します。

 そしてマツダは、「人馬一体」をコンセプトに開発した「ユーノスロードスター」を1989年に発売。

 小柄で軽量なボディに1.6リッターDOHCエンジンを搭載し、5速MTを介して後輪を駆動するFRのライトウェイトスポーツとして登場しました。

ライトウェイトスポーツを代表するマツダ「ロードスター」

 ユーノスロードスターは2シーターのオープンカーという非実用的なクルマながら、手の内に収まる性能とオープンエアの爽快感が好評を博し、世界的なヒット作となっています。

 ロードスターの成功を見たライバルメーカーが、こぞってライトウェイトスポーツの開発をしたことはいうまでもありません。

 しかし、2000年代に入るとスポーツカー不遇の時代となり、ライトウェイトもハイパワーも関係なくスポーツカー自体が激減してしまいました。

 現代はSDGsだEVだとスポーツカーに逆風が吹き荒れていますが、それでもマツダは「ロードスター」を作り続けています。

 現行型は2015年に発売された4代目モデル(ND型)。2024年1月にはビッグマイナーチェンジをおこない、内外装デザインの変更や走行性能の向上など、多岐にわたって手が加えられました。

 いつ絶版になってもおかしくないライトウェイトスポーツカーですが、うれしいことに次世代モデル(NE型)の登場もウワサされています。

●ミラーサイクルエンジン

 一般的なエンジン(オットーサイクル)は、ピストンの「下死点(構造上ピストンが一番下にある状態)」から「上死点(構造上もっとも上にある状態)」に向けて混合気を圧縮し、ピストンが上死点にあるときに爆発してその勢いでピストンを下死点まで押し下げます。

 上死点、下死点の位置は決まっているため、当然ながら往路(圧縮)と復路(膨張)の距離は同一ですが、同じように下死点にピストンがあっても「圧縮始め」のときより爆発後の「膨張終わり」のときのほうが圧力・温度ともに高く、エネルギーがまだ残っている状態といえます。

 残ったエネルギーは排ガス・排熱として捨てられるのですが、復路(膨張)の距離を往路(圧縮)より長く取れば、無駄なく効率的にエネルギーを使い切れるはず……というのが「アトキンソンサイクル」の基本的な考え方です。

 一般的にこれを複雑なリンク構造で実現したエンジンを「アトキンソンサイクルエンジン」と呼び、吸排気バルブの開閉のタイミングをズラすことで疑似的に実現しているものを「ミラーサイクルエンジン」と呼んでいます。

 マツダはそんなミラーサイクルエンジンを量産車として世界で初めて搭載する「ユーノス800」を1993年に発売。

 しかし、高効率なダウンサイジングエンジンは高級車のパワーユニットとして受け入れられず、また景気の低迷もあり販売は苦戦。マツダ「ミレーニア」への名称変更やマイナーチェンジを繰り返しながら、2003年に生産終了となりました。

 唯一の搭載車の絶版でミラーサイクルエンジンは途絶えたかのように思われましたが、2007年に発売された3代目「デミオ」で復活。

 以降、高圧縮が技術的なキーとなる新世代のガソリンエンジン「スカイアクティブG」と相性が良いことから、現在のマツダ車のガソリンエンジン(ロータリー車およびOEM車を除く)はすべてミラーサイクルエンジンが採用されています。

※ ※ ※

 粘り強いマツダではありますが、逆に諦めてしまったこともあります。

 例えばマツダ6の国内終売により、ステーションワゴンはラインナップから消滅しました。

 かつて「プレマシー」や「MPV」、「ビアンテ」と人気モデルを取り揃えたミニバンにいたっては2018年に完全撤退。

 5チャンネル時代に代表される複数系列での販売も今は行っていませんし、軽自動車も製造しておらず、スズキからOEM供給を受けています。