(漫画:©︎三田紀房/コルク)

記憶力や論理的思考力・説明力、抽象的な思考能力など、「頭がいい」といわれる人の特徴になるような能力というのは、先天的に決められている部分があり、後天的に獲得している能力は少ないと考える人が多いのではないでしょうか。

その考えを否定するのが、偏差値35から東大合格を果たした西岡壱誠氏です。漫画『ドラゴン桜2』(講談社)編集担当の西岡氏は、小学校、中学校では成績が振るわず、高校入学時に東大に合格するなんて誰も思っていなかったような人が、一念発起して勉強し、偏差値を一気に上げて合格するという「リアルドラゴン桜」な実例を集めて全国いろんな学校に教育実践を行う「チームドラゴン桜」を作っています。

そこで集まった知見を基に、後天的に身につけられる「東大に合格できるくらい頭をよくするテクニック」を伝授するこの連載(毎週火曜日配信)。第126回は『「数字のセンス」と「地頭力」がいっきに身につく 東大算数』を上梓した西岡氏が、数学や算数嫌いでも、一瞬で好きになるコツについてお話しします。

東大生に聞いて見えた「数学が得意」な人の能力


算数・数学が得意な人は、そうでない人と比べると、どのような能力が優れているのでしょうか?

僕は東大に合格した人たちから話を聞きながら、この問いの答えをずっと探してきました。

東大は文系であっても、数学が得意な人たちが多く学ぶ大学です。文系なのに「数学がいちばん得意だ」と語る人も多いほどです。

そんな東大生たちから話を聞く中で、1つ見えてきたことがあります。それは、東大に合格するほど数学ができる人たちはみんな、「補助線」を考える能力が高い、ということです。

このことについて、『ドラゴン桜』の漫画の中で触れられているワンシーンがあります。まずはその箇所を読んでみましょう。

※外部配信先では漫画を全部閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください





(漫画:©︎三田紀房/コルク)





(漫画:©︎三田紀房/コルク)

いかがでしょうか?

漫画で描かれているとおり、数学は苦手から得意になるまでが「一瞬」な科目です。

例えば、みなさんは、「算数・数学は得意ですか?」と聞かれたら、どう答えるでしょうか? この質問に対する回答は3パターン考えられます。「得意」「苦手」「どちらでもない」ですね。

国語や英語・社会や理科であれば、この質問に対しての回答の大半は「どちらでもない」が多そうですよね。「得意でもないけれど、苦手ってほどではないかな……」という生徒が大半でしょう。

しかし算数・数学の場合は、「どちらでもない」と答える人は少ない。ほかの科目に比べると、圧倒的に「苦手な人」が多い科目なのです。極端に分かれる理由は、苦手な段階から一瞬で得意になるからだと考えられます。理解し始めると、一気に解けるようになる科目なのです。

補助線が見えてくると算数や数学が得意に

それはいったいなぜなのでしょうか。漫画で先生が言っていたように、「補助線が見えてくるから」だと考えられます。

「補助線が見えてくる」とは、「ここに線を引くべきじゃないか……?」「ここには線が書いてない。問題を解くうえで、情報が足りていないのではないか」というのが思い浮かぶ状態のことです。

例えばこの図形を見てください。


(図:筆者作成)

これは算数の問題としてとてもポピュラーなものです。この図のままだと、「?」に入る度数はわかりませんよね。でも、真ん中に線を引いたらどうでしょう……?



(図:筆者作成)

この図になると、答えはわかりますね。45度×2=90度となります。

「なんでここに線を引けば答えがわかるの?」と聞かれても、答えられない場合が多いです。

数学の先生であれば答えられると思いますが、実際に解いている生徒側からすると理屈というよりも、「ここに線を引かないほうが、逆に気持ち悪くない?」という感覚になります。何度も問題を解いてきたからこそ、その経験から「ここには線を引いたほうが、問題が解けるな」という感覚になるのです。

補助線は、図形の問題だけの話ではありません。例えば、みなさんは「1から100までの合計の数字、つまり1+2+3+4+5+……98+99+100の答えは?」という問題を見たときに、すぐ答えられますか? 難しいですよね。


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でも、この問題の答えがすぐに出る人もいます。そういう人は、この計算式のとある部分に補助線が見えてくるのです。どこだかわかりますか?

正解は、「真ん中」です。「1+2+3+4+5+……98+99+100」のうち、「50+51」の間に線が見えるのです。この部分が式の真ん中であり、ここで式を2つに分けるとこうなります。

1 2 3 4 5……‥ 49 50


100 99 98 97 96…… 52 51


さて、この2つの式を縦に並べると、見えてくることがありますね。縦で足して、「1+100」「99+2」「98+3」と考えていくと、その合計が「101」になるのです。

これは、全部そうなっていて、「49+52」も「50+51」もそうですね。そしてそれが50個あるわけですから、101×50=5050、となります。

経験を積み重ねることで得意科目に

なぜ真ん中で切れば答えが出るとわかるのか……と言われても、これは経験則としか言いようがありません。何度もこれと似たような問題を解いているから、「見える」わけです。でも、見えなければ、ずっと解けないままです。

算数・数学は、他の科目に比べて、練習がものを言う科目だと思います。何度も何度も練習して、問題を解く習慣を持つ。訓練を積み重ねて、一定のラインを超えると、「補助線」が見えるようになって、得意科目になる。

でも、その「一定のライン」のちょっと手前で、「自分は苦手なんだ、もうだめだ」と諦めてしまう人が多い科目でもあります。もし苦手意識を持っている場合は、この補助線が見えるように、訓練を積み重ねてみるとよいかもしれません。

受験勉強や、子供への教育など、西岡壱誠さんへの質問を募集しています。こちらの応募フォームからご応募ください。

(西岡 壱誠 : 現役東大生・ドラゴン桜2編集担当)