せっかちな人のための“チームでの仕事術”を解説します(写真:Gaudilab/PIXTA)

せっかちな性格はスピーディーな仕事につながることもありますが、チームのマネジメントを行うときにはそれが仇になる可能性も。せっかちな性格を自認するクリエイティブディレクターのハラヒロシ氏は、「その性質を活かした“早い対応”によって安心感を与えることで、チームにいいパフォーマンスを生み出すことができる」と言います。せっかちな人のための“チームでの仕事術”を解説してもらいます。

※本稿は、ハラヒロシ著『「効率化」と「クオリティ向上」を同時に実現する せっかち式仕事術』(かんき出版)の一部を再編集したものです。

締切はやや早め&細かく設定する

締切があると、つい気になってソワソワしてしまうのがせっかちの性。

それを逆手に取れば、せっかちな人にとって、締切は「戦略的ツール」となりえます。

ひとつは、締切をやや早めに設定すること。これにより、時間に追われることなく目標を達成するペースを確保できます。

もうひとつは、大きなプロジェクトを小さなセクションに分割し、それぞれに締切を設定することです。全体の進捗状況を把握しやすくなって、タイムマネジメントが向上します。

これは、自分自身のタスクに余裕を持たせるだけでなく、チームのスケジュール管理にも力を発揮します。

せっかちな人がチームで仕事する場合、自分だけでなく他者の進捗が気になり、予定通りに進んでいない場合に過剰なストレスを感じてしまいます。

この場合、たとえば全体の締切が10日間のところを、やや早めの8日間で一度報告をしてもらうようお願いしたり、細分化されたタスクにもそれぞれ期限を設けるなど、「締切をやや早めに、細かく設定」することをおすすめします。

全体のコントロールがしやすくなるので、マネジメントの観点からもとても有効です。

私は長らくディレクターとしてチームをまとめる立場にいますが、この「締切をやや早めに、細かく設定する」はかなり意識的に取り入れています。

長期にわたるプロジェクトが、想定よりも早く終わる効果も期待できますし、自分自身の安心材料にもなっています。

せっかちスキルをチームの共有財産にする

私はチームで仕事をする場合、誰かの持っているアイデアや知識がほかの誰かに伝わっていない状態をなるべくなくすようにしています。

チームとして共有されていない情報があるということは、意思の疎通に余分な時間がかる、ムダな作業が発生するかもしれないなど、効率的でないと思ってしまうからです。

たくさんの情報で溢れ、新しい技術やトレンドが毎日のように流れていく中での「学習」は欠かせませんが、当然一人ひとりの職能や取り組み方によって習得に差がでます。

全員で足並みをそろえないと業界の流れに乗り遅れるような場合は、どうしてもやきもきして悩みのタネになります。

であれば、足りないところを仲間の力を借りて補い合い、みんなで能力を高めていける仕組みづくりをするのも手です。

私の会社では、毎朝各メンバーの進捗状況を確認するミーティングを行っていて、その後「一日一力」という、1人1ネタを持ち寄って共有する時間を設けています。メンバーが10人程度の場合、時間にすると10〜15分程度です。

やり方は、各メンバーがそれぞれ興味があるWebサイトや情報源などのネタを、社内の情報共有用ブログに投稿してからミーティングに臨む、たったそれだけです。

仕事柄、毎日ネットに触れて情報をキャッチしているので、ネタが尽きるということはまずありません。気になった記事、あるいはX やInstagramなどSNSの投稿のリンクを貼るだけなので、投稿にかける時間はわずかです(事前に投稿しておいて、共有の時間に口頭で説明してもらう)。

朝の数分で毎日人数分のネタを享受できるという、1人当たりの労力からするとかなり省エネ&ハイパワーな仕組みと言えます。

いろいろな職種の人が集まっているので、投稿内容もバリエーション豊か。なかにはまったく理解できないような技術ネタなど、ちんぷんかんぷんなのもあります。

しかし、それはそれで新鮮な刺激ですし、自分にはわからないというちょっとした焦りと知的好奇心を刺激されて、とてもいいことだと思っています。

情報の中には、「普段使っているアプリにこんなプラグインを追加するとスピード化が図れる」とか、「同業他社ではWeb制作のワークフローにこんなガイドを使って効率化を実現している」といった、「時短ハック」も多く含まれます。

せっかちな人は仕事を早く進める技を豊富に持っています。

せっかちノウハウを共有財産にして、チームでその時短ハックを実行すれば、それだけチーム全体の効率化が進みます。

できないことはきっぱり諦める 

せっかちな人は、素早い行動力によって「できる」を自覚するのと同時に、「できない」ことを認識するのも早いです。

仕事において、自分の限界や弱点を早く見極め、できないことはさっさと手放して、できることに切り替える割り切りのよさは強みになります。

「諦める」ことができれば、たとえばほかの人に頼ることで空いた時間をほかの作業に使うことができたり、別のスキルを学ぶ時間に充てることができます。

できないことを認めたうえで、なぜできないのかという問題点を特定するほうに気持ちを切り替えれば、修正スピードも速くなるでしょう。

クリエイティブな世界では、とくに属人性に頼る場面が多いです。

私はもともとWeb 制作における営業〜企画〜デザイン〜プログラミング〜保守等すべての工程を一人で行うことが多かったのですが、技術の進歩、業界の成熟とともにいくつかの職能で「自分では無理」と思うことが出てきました。

それ以降、自分一人でなんとかすることよりも、チーム作りを強化するようになりました。

チームのメンバーに、自分にない技術・専門知識を持った人材を入れることで、チーム全体の成果を最大化させることができます。以前は自分一人でこなしていた仕事も、今ではディレクター、ライター、デザイナー、エンジニアと、分業で仕事に取り組んでいます。

「できない」を早めに受け入れることが大事だなと思った、大きなシフトチェンジでした。

一人でこなせる仕事・キャパシティには限界があります。

年齢とともにパフォーマンスは落ちるもの。自分でやることにこだわりすぎていると、いつまでたってもその業務から抜け出せないという弊害もあります。

長期的に見たら、「自分でやったほうが早い」「教える時間がもったいない」という考えは自分の成長を止めてしまいます。

たしかに教えるのはすごく時間がかかり、面倒なことですが、部下・後輩が成長してできる人が増えたら、チームとしてのキャパもパフォーマンスも何倍にも膨らみます。リーダー・先輩としての自分自身も評価されるのです。

これは人や時間だけではなく、ノウハウについても同様です。

自分で学ぶことも大事ですが、お金を出してセミナーに参加してノウハウを買ったり、専門家へ依頼したりすることで、目的達成までのスピードが加速します。

「自分でやる」以外の方法を選ぶことが「最短ルート」になることもあるので、頼る、教える、お金を出すといった手段があることも、忘れないようにしたいものです。

自分のことは後回しにしてみる 

「自分のことは後回し」だなんて、他人のペースに合わせるのが苦手なせっかちさんにとってかなりの自己犠牲で、矛盾していて、勇気のいる行動だと思います。

でも、これも仕事の進捗を重視するための戦略です。


あなたがもしチームリーダーの立場だったら、先にメンバーに対してできることをやって、そのあと自分の作業に取りかかるという順番をおすすめします。

結果的に、このほうが効率よく仕事を進められるからです。

「判断待ち」の時間が減れば、メンバー全員が早く着手できるので、結果的に仕事全体が早く回ることになりますし、「リーダーは常に自分たちのことを真っ先に気にしてくれる」という信頼感も得られるでしょう。

後回しにすることで自分の作業の着手は遅れてしまいますが、どうせ自分はそのあとせっかちに行動して、なんとか間に合わせるだけのスピード感を持ち合わせているのです。

私も立場上、仕事の合間に頻繁にメンバーからの報告、壁打ち、相談ごとなどでチャットに声がかかりますが、よほど急用でなければ自分の作業は手を止め、対応するように心がけています。

せっかちな自分にとって何が一番望ましい状態なのかを考えると、「自分の仕事だけが最速で進んでいる」状態よりも、「プロジェクト全体が効率的に回っている」状態をつくることのほうが、ストレスが少ないのです。

一時的に自己のニーズを後回しにしても、短い時間で仕事を終わらせようとするモードになることで逆に仕事に集中でき、生産性が上がることも期待できます。

(ハラヒロシ : クリエイティブディレクター・デザイナー)