東京タワーが借景。港区役所の絶景役所メシ(筆者撮影)

ロスジェネ世代で職歴ほぼなし。29歳で交通事故にあい、晩婚した夫はスキルス性胃がん(ステージ4)で闘病中。でも、私の人生はこんなにも楽しい。なぜなら、小さく暮らすコツを知っているから。

先が見えない時代でも、毎日を機嫌よく、好きなものにだけ囲まれたコンパクトライフを送る筆者の徒然日記。大好評の連載第15回です。

胃がん闘病中の夫が退職、役所メシで息を抜く

東京都港区、高層ビルの狭間にひっそりたたずむ古くて小さなマンションの1部屋、12畳1ルームに夫婦2人と猫と預かり犬で暮らしています。

夫は2022年からスキルス胃がんで闘病中です。1年近く休職ののち復職し、1週間の半分ほどテレワークで働かせてもらうという恵まれた労働環境を用意してもらえたものの、発熱やら入院やらで、その半分も働けなくなってきました。

本人が「もう無理かも」と言いだし、主治医に相談したところ「経済的に大丈夫なら、ゆっくりしたほうがいいかもね(決して辞めろとは言わないが、働くの難しいよねという雰囲気)」だったため、退職を決断。

「ようやくゆっくりできるぞ」と思っていたのですが、それは大間違いでした。公的な支援を受けるべく右往左往して、役所やら病院やらを行ったり来たりして書類を準備していて、以前よりドタバタしております。

そんな慌ただしい日々のお楽しみが区役所で食べるランチ、いわゆる役所メシです。当記事では港区役所職員食堂、東京港建設事務所食堂、気象庁食堂の、職員向け食堂で御相伴にあずかってきました。

【画像17枚】「港区の食堂は700円」「気象庁は400円」と超絶コスパ! ”やや貧乏”な中年夫婦がこっそり楽しむ「お役所ランチ」。メニューの様子を見る

各種証明書の発行や支援の相談など、なにかと港区役所に行く必要に迫られるこの頃。面倒くさいはずなんですが、ちょっと楽しみになっているのは「港区役所職員食堂 レストラン・ポート」のおかげかもしれません。

この食堂は職員用の福利厚生施設なのですが、一般の方も利用OKです。何がすごいって、眺めがすごい。エレベーターで11階に上がると、食堂の窓からは東京タワーが正面にドーン。


150席の大きな食堂は広々としています。窓の外には大きく東京タワー(筆者撮影)

遮るものは何もありません(正面には11階建ての東京プリンスホテルがありますが、気になりません)。個人的には密かに「日本で一番美しく東京タワーが見えるレストランなんじゃないかしら?」って思っています。

700円とあなどるなかれ。内容も豪華で大満足

日替わりランチの種類は3種類で、いずれも税込700円です。ある日のメニューはこちらとなります。


栄養バランスとボリュームも満足な日替わりランチ700円(筆者撮影)

・A定食(ヘルシー系):鶏団子と白菜のごま豆乳煮込み
・B定食(がっつり系):バジルチキンのラタトゥイユソース
・日替わり弁当(おかずの種類が多い):みそカツ

私が注文した日替わり弁当は、メインのおかずにみそカツとさばの塩焼き、ミニおかずが6種類も入っていました。

もはや、冠婚葬祭で食べる仕出し弁当並みの豪華さです。物価高的なこの頃ですので、近隣の飲食店だとランチ価格は1000円以上がザラのなか、このボリュームでこの価格はありがたい限りです。

学生食堂やセルフうどんなどでお馴染みのスタイルで、食券を買ってトレイを持って並び、ごはんやおかずを自分で受け取っていきます。ごはんは、白米と雑穀米のどちらかを選べたり、小鉢も4種類から選べたりと、職員の方が毎日利用しても飽きない心配りがニクい。


日替わりの小鉢は4種類。この日は厚揚げの煮物と貴味メロン、和歌山県産オレンジ、ひじきのレモン風味から選べました(筆者撮影)

外食となると、ついつい栄養バランスよりも出費を抑えることを優先して、ラーメンやパスタなどの単品炭水化物系メニューをオーダーしてしまいがちな筆者にとっては、使用している食品の品目数も多く、野菜もたっぷりで、栄養バランスが考えてある点も嬉しいポイントです。

味も「レストラン並みにおいしい」とかはお世辞にも言えないものの、ごはんもおかずも味噌汁も、お茶も、1つひとつがちゃんとおいしい。

ただし、利用する際に注意点があります。職員用の食堂のため昼休憩になる12時過ぎに、利用者が集中し激烈に混むのです。13時以降になると空いているのですが、日替わり弁当はだいたい売り切れています。おすすめなのは11時台。売り切れの心配もなく、広々とした食堂でのんびり食べられます。

レインボーブリッジを眺めながら食べる贅沢ランチ

東京タワーの次は、東京湾の絶景食堂をご紹介させてください。東京港湾福利厚生協会の福利厚生施設「湾岸食堂 本店」も、一般の方が利用できます。


窓の外には遮るものナシ。レインボーブリッジのループの真正面にある建物です(筆者撮影)

しかも、レインボーブリッジのくるっとループしている部分が真正面にあるんです。そのたもとには東海汽船のジェット船の定係桟橋(船の駐車場的な場所)があるので、船舶好きにとっても垂涎の絶景ポイント。

レインボーブリッジの乗降口からは少し離れた、トラックやダンプカーが往来する海沿いにあるので、キラキラな観光地とはまた違った、ざらりとした働く東京湾の景色が楽しめます。


ある日の日替わりランチ。がっつりおかずでパワーチャージ! これで680円は安い(筆者撮影)

港湾労働者向けの施設のため、休日や祝・祭日はお休みで、平日のランチタイム(11時から14時まで)のみの営業となります。福利厚生施設ということで価格はお手頃ながら、運動強度高めの利用者が多いためか、食べ応え抜群のメニューが揃っています。

メニューは日替わり定食とカレーやとんかつ定食など。日替わり定食は3種類、いずれも税込680円、あと税込780円の特日替わり定食が用意されていました。


気象庁の地下食堂、ランチタイムは混み合いますが、朝ごはんは穴場です(筆者撮影)

あと変わり種だと気象庁の食堂も一般利用できるんです。しかも営業時間は朝8時半から19時までで、なんと朝食メニューも提供しています。気象庁のそばに、夫のかかりつけの病院があるので、朝イチに採血してから診察までの空き時間を利用して朝食メニューを食べに行くことも。

地下エリアにあるので景色は楽しめないのですが、朝食メニューを利用している職員は少ないようで、ホールのような巨大な食堂でほぼ貸切状態で素朴な和朝食を食べています。令和2年に千代田区大手町から虎ノ門に移転したばかりなので、まだ食堂もピカピカです。

ランチタイムメニューは日替わり定食が税込750円。食堂が混み合うため、お弁当も売っています。13時半以降はカフェ営業となり、食事はカレーなどの軽食のみの提供となります。お弁当が残っている時はカフェタイムにも販売していることもあります。

「お役所食堂メシ」の醍醐味とは

一般利用できる、職員向けの食堂は他にもいろいろあるようで、最近では東京法務局などが入る九段第2合同庁舎の「東京チカラめし食堂」がネットニュースに取り上げられるなど話題になっていました。

職員向けの食堂にまぎれこんでご飯を食べるのは、おしゃれなカフェや、老舗のレストランでは味わえない、新鮮な楽しさがあります。


訪問リハビリ中の夫。日常に小さな楽しみがたくさんあれば、リハビリだってがんばれます(筆者撮影)

財布に致命的な打撃を与えないお手軽な価格の外食は、おっくうなお出かけのご褒美として最適です。「わざわざ行くほどじゃないけど、近所に行く際は立ち寄るのが楽しみ」という、ちょうどいい塩梅のワクワク感は、日常に彩りを添えてくれます。自分で自分のご機嫌をとりつつ、普通の日々を充実させることが、豊かな暮らしに繋がるのかもしれません。

「区役所行くの面倒くさいなぁ……」

とお出かけをしぶる夫に、

「区役所でランチ食べない?」

と提案すればあら不思議。

「早めに出ないとお弁当が売り切れるから、11時には出よう!」

と、タイムマネジメントをはじめるのです。

区役所の住民票を請求している待ち時間に、夫婦で向かい合って東京タワーを借景に日替わり定食を食べながら、退職後のお出かけ計画を立てる時間は、私たちにとってはこのうえのない贅沢だと思うのです。

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(大木奈 ハル子 : ブロガー・ライター)