『先生の白い嘘』公開初日舞台あいさつに登壇した奈緒

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 奈緒が5日、都内で行われた映画『先生の白い嘘』の公開初日舞台あいさつに登壇した。公開日前に、性的描写シーンにおいて制作側の意図を理解したうえで演者をサポートする“インティマシーコーディネーター”の起用を奈緒側から求められたものの、三木康一郎監督が「入れない方法論を考えました」と語ったインタビュー記事に批判の声が集まったことに、奈緒は胸中を吐露。三木監督とプロデューサーから謝罪の言葉があった。この日は、猪狩蒼弥、三吉彩花、風間俊介も来場した。

 本作は、ひとりの女性が抱える「自らの性に対する矛盾した感情」や、男女間に存在する「性の格差」に向き合う姿を描くことで、人の根底にある醜さと美しさを映し出したヒューマンドラマ。

 舞台あいさつの冒頭には、稲垣竜一郎プロデューサーが登壇。撮影当時、日本ではインティマシーコーディネーターを起用した事例が少なく、出演者、事務所、三木監督との話し合いの結果、起用を見送ったこと、“インティマシーシーン”撮影時のカメラマンは女性が担当し、男性スタッフは退出、不安があれば女性スタッフが話を聞くと提案していたことから「配慮ができていると判断しておりました」と釈明した。しかし、寄せられた批判や意見から「私どもの認識が誤っていたことをここにご報告を申し上げるとともに、制作陣一同、配慮が十分ではなかったことに対し、深く反省をしております。本作を楽しみにお待ちいただいているお客様、原作の鳥飼茜先生、出演者、スタッフの皆様に不快な思いをさせてしまったことを心よりお詫び申し上げます」と謝罪した。

 三木監督も「わたくしの不用意な発言により皆様に多大なるご迷惑とご心配をおかけしたことを謝罪したいと思います。本当に申し訳ありませんでした。関係者、スタッフ、キャストにも大きな大きな苦しみを与えてしまったことを謝罪したいと思います。本当に申し訳ありませんでした。原作の鳥飼茜先生、この作品に尽力していただいたにもかかわらず、裏切るような形になってしまい本当に申し訳ありませんでした」と深く一礼。「襟をただして、この作品で感じたことを教訓にして、しっかり顔を上げて前に進んでいきたいと思います」と決意も明かした。

 男女の性差に翻弄され葛藤する主人公・原美鈴を演じた奈緒は「皆さん、観終わった後ということで、お気持ち大丈夫でしょうか? 登壇しているみんなも大丈夫? 三木さんも」と周囲を気遣いつつ、「ここにいる誰も心を痛めることなく一緒にいたいと切に願っております。なので、一言。わたしは大丈夫です」と笑顔を見せた。

 一方で、「原作にほれ込み、出演することを自分で決めました。その中で、いろいろなやり取りがあり、すれ違いがあったことも事実です。でも、わたしは権力に屈することはなく、対等な関係で監督ともお話ししました。(でも)現場に対して不十分だと思う部分が正直ありました」と当時の心境を告白し、公開するにあたって自分たちの真意をインタビューなどできちんと伝えられていなかったことを「深く反省しています」とも話す奈緒。

 また、「撮影中は原作に支えられていた部分が大きかった」こともあり、独断で鳥飼に直接会って謝罪したことも打ち明ける。その鳥飼からも、センシティブなシーンにおいて確認作業はあったものの甘かったことを振り返りながら「原作者として丸投げしてしまった責任を強く感じるに至り反省した」「この作品で誰かに嫌な気持ちを起こすようなことがあれば、わたしにもその責任がある」「わたしも出版社も含め、制作した者たちがあらゆる忖度に負けない信念を一貫して強く持たなかったことを反省すべきだったんじゃないか」などの思いがつづられた手紙が寄せられた。

 そのうえで奈緒は「力強い映画になっていると感じました。現場でみんなで乗り越えたいろんな大変なシーンを思い出しながら、それらが形になったんだ……とすごくすごくうれしかったです」と胸中を明かし「わたしは大丈夫だろうか? 人を傷つけることをしていないだろうか? と胸を当て続けなければ、この作品は作れませんでしたし、それは社会で人同士が共存していくうえで大切なことなんじゃないかと学びました」と本作が自身の糧になったことも語っていた。(錦怜那)