『50婚 影木、おひとり様やめるってよ』(著:影木栄貴/KADOKAWA)より

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国勢調査によると、日本人の生涯未婚率は2020年で男性約28%、女性で約18%。この「生涯未婚率」の基準とされているのが《50歳時の未婚率》です。そんな境界線の50歳で結婚を決めたのが、タレントDAIGOさんの姉で、内閣総理大臣の故竹下登氏の孫として知られる人気漫画家・影木栄貴さん。結婚は本当に必要なのか?全力で日々頑張り楽しんでいる女性が一度ならず何度も考える疑問に、影木さんが出した答えとは。50歳にして結婚、おひとり様をやめるまでの道のりを赤裸々に書いた初エッセイ本『50婚 影木、おひとり様やめるってよ』から、お互いの親の介護問題、結婚してよかったことについて紹介します。

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迫る介護問題

50歳での結婚は、出産・育児を考えなくていいので、夫婦共にわりと自由な生活ができるのが魅力の一つだと思っています。逆に、親の介護は遠くない未来にやってくることになります。そしてお互いの老化による不調も。

これを書いている時点で、私の父は85歳、母は76歳。今のところ、二人ともまだまだ元気です。順序的に、おそらく父の介護は母がやることになるでしょう。父もそれを望んでいると思いますし。あまり子どもに弱いところを見られたくない人なので。

残された母の介護は、私がやるしかないと思っていますし、やる気満々です。せめてそこで恩返ししたい所存。母は嫌がってますけどね(笑)。まあきょうだいもいるので実際はどうなるかわかりませんが、それぞれ仕事があって子どもがいることを考えると私の可能性が高いよね。

ただ、父は毎日足腰が弱らないように歩いていますが、母はあまり家から出ようとしないので、足が悪くならないか心配しています。歩けなくなると介護のレベルは一気に上がるので。でも、夫に助けてもらう気満々なので大丈夫かな?

一方、夫の両親は愛知県にいてお二人とも健在ですが、遠方ということもあり、何かあれば夫が頻繁に帰ることにもなるだろうなとはうっすらと考えています。

実は、夫の両親とは結婚の食事会で一度会っただけで……。まだ一回もご実家に伺ったこともありません。大変不躾な嫁であります。

でも、義両親はこの結婚に関して「自分たちがいなくなった後、息子が一人になるのが気がかりだったから、いい人を見つけてくれてよかった」と喜んでくれていて、しかも私が多忙なことも理解してくれているとてもいい方たちです。時間ができたら絶対愛知県行きます!

義両親の介護に関して、夫は私になんの要求もしてきませんが、私はやれることはやりたいと思っています。そのとき仕事が暇になっていたら私自身が動くとか、まだ仕事が大変だったらお金を出すとか。

そのときどきの状況で方法は違うとは思いますが、全部夫一人に背負わせたくはありません。家族になるってそういうことですよね。同年代で結婚して、同年代の両親を抱えている。どちらも似たような状況なので、そこは助け合ってやっていきたいと思っています。

私たちは「体調不調のときに一人でいるのが不安だから、誰かそばにいてほしい」という価値観が一致して結婚しました。そして近い将来どちらかが病気になったりすることもあるでしょう。

一度、夫がギックリ腰(持病。癖になっている)で動けなくなったときに、私は夫の家に食料を運びました。ちょうど私も忙しい最中だったので、正直大変だったのですが、いずれそういう負担(=配偶者の介護)もやってくるんだろうなという覚悟はしています。まあぶっちゃけ私が介護される可能性のほうが高いと思いますけど。

でも、それが家族になるということ。将来、自分が面倒を見る側か見られる側か、どちらになるかわかりませんが、いずれにせよお互いさま。年とったもの同士、助け合うのみ。

今できることは、一緒にジムに行って健康で長生きを目指すことだけです。最近ほとんど行けてませんが(←)。


『50婚 影木、おひとり様やめるってよ』(著:影木栄貴/KADOKAWA)

家族孝行がバージョンアップ

結婚食事会のあいさつで、私は「これでみなさんの肩の荷が少しはおりたんじゃないかと思います。そしてこれからは二馬力になるので、みなさんをより支えられるんじゃないかと思います」と言いました。

その言葉どおり、結婚してからというもの、私が一人でいたときより家族を支えたり癒やしたりする能力が格段に上がりました! やっぱり単純に二馬力になるのは大きいです。

私が仕事しかできなくて、仕事以外の時間は倒れているという状態ですから、夫がフットワーク軽く手伝ってくれるのはありがたいですね。

夫は、私のことはもちろん、家族のマッサージもしてくれるし、率先して家の頼まれごともしてくれます。甥っ子姪っ子たちの相手もよくしてくれます。

実家で家族全員が集まって食事をするときに、夫が空いた皿を下げたり、姪っ子が散らかしたおもちゃを片付けてくれたりしていて、「すごくよく動くなあ」と私は感心して眺めていました(二馬力の片方動いてねえ)。

夫曰く、「えいこちゃんが先に死んだ場合にも仲良くしてもらいたいから、みんなの役に立ちたい」そうです。先を見据えていてえらい。実際、夫は既に家族みんなからの信頼を勝ち得ています。

そもそも、父に「栄子を託せて安心できた」と思わせることができたことが一番の親孝行だった気がする。

入籍する日の朝、花を持って私を迎えに来た夫は、父に「50年間、栄子さんを育ててくれてありがとうございました」とあいさつしたそうです。そしてその言葉を聞いた父は安心して肩の荷がおりたそうです。つか「50年間育ててくれて」ってギャグかな?と思ってしまいましたが(笑)。

とりあえず、私がいつまでも両親を心配させる存在だったとしたら、思いがけず親孝行ができたので、私自身も嬉しい限りです。まあ実際は、今現在も面倒をかけ続けているわけですが。

相手によるとは思いますけど、私は結婚したことが一番の家族孝行になったと思っています。家族の喜ぶ顔を見ると、私も嬉しくなる。人生の喜びがまた一つ増えたのは、それこそ結婚のおかげです。

結婚してよかった

昨今、生涯未婚を通す人は年々増加しています。「一人でいるほうが好き」「結婚に魅力を感じない」「仕事が忙しい」「収入が足りない」などなど、結婚を選択しない(もしくは選択できない)理由はさまざまあると思います。

私もつい数年前までは、結婚を諦めていた一人です。でも今、婚活を頑張ってよかったと心から思っているので、少しでも多くの《結婚したい人》には結婚してもらいたいし、結婚を考えていない人にも興味を持ってもらいたい。

将来は同性の友達と一緒に暮らすから大丈夫、と思っているそこのアナタ!その友達は、結婚相手を探すのと同じぐらい難しいです。ルームシェアした経験から言わせてもらえば、むしろ友達と暮らすほうが難しいかもしれない。

いきなり結婚相手や彼氏を見つけていなくなる可能性もあります。どちらかが病気になったとき、家賃を払えなくなったとき、年老いたとき、お互いの人生を背負うのに、友達という絆は思いのほか脆いものです。不動産屋さんがルームシェアを嫌がるのは、ちゃんと理由があるわけです。

それなら、将来結婚する相手を探してみるのもいいんじゃないでしょうか。ちなみに、同性でも恋人同士なら話は変わってきます。むしろ早く法的にも結婚できるようになるといいですよね。

結婚のよさは、前にも少し書きましたが、やはり二馬力になることです。すべてを二人で分かち合える。夫の世話になってばかりの私ですが、「私がいるからもう無茶な働き方はやめなよ」って言える。

そしてもう一つ、家族が増えることです。ご両親がいなくなったら一人ぼっちになるはずだった夫に、たくさんの家族を増やしてあげられたことは、私の最大の夫孝行だと思っています。

たとえ将来、この結婚がダメになったとしても、私は一回でも結婚できてよかったと思ってます。ウエディングドレスも着られたし、指輪ももらった。『ゼクシィ』も買えたし、新婚旅行も行けた。夢もいっぱい叶っています。

人間は、経験することで価値観が変わります。だから、いろいろな経験をしといて損はないと思うんです。離婚したとしても経験だし、結婚できていなかったとしても、婚活の経験は無駄じゃなかったと思います。

私は漫画家だから余計にそう思うのかもしれません。結婚したからこそ《サレ妻》《スピード婚》など「妻」「婚」のつく漫画を読むのが楽しくなりました。それまではあまり読まなかったジャンルなのに、いきなり興味を持つようになったのは、登場人物の気持ちがわかるようになったからですかね?

誰でも、経験が増えると人生は豊かになります。どんな形だっていい。ちょっとでも興味があるならぜひ、婚活や結婚にトライしてみてください。

とりあえず、私は結婚してよかったよ(今のところ)!

※本稿は、『50婚 影木、おひとり様やめるってよ』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。