塚本さんは体を壊すまで毎日のように飲んでいたのだそう(出所:『イラスト日記 ゆるして!糖尿病』)※外部配信先では記事中のイラストを全部閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください

仕事の忙しさにかまけて暴飲暴食を繰り返していた絵本作家の塚本やすしさん。倒れて救急車で運ばれたことがあるのにもかかわらず、大好きなラーメンとお酒はやめられず、次第に体は悲鳴を上げていきます。塚本さんの著書『イラスト日記 ゆるして!糖尿病』から一部を抜粋、再編集し、当時の食生活を振り返るとともに、同書監修の白澤卓二医師からの見解やアドバイスをご紹介します。

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「3食ラーメンでもOK」

子どもの頃からラーメンが好きだ。正直、3食ラーメンでもまったく問題ない。むしろ幸せだ。

暴飲暴食している時期は、1日に2回ラーメン屋に行くこともあった。連続してラーメン屋をハシゴすることもあったくらいだ。

ダイエットをしていて、太ったりやせたりしていた頃も、ダイエット中も頭の中は大好きなラーメンのことばかりである。奥さんのことを考える時間より、ラーメンのことを考えている時間のほうが断然、多い。

結果、体重はどんどん増えていき、ブクブクと太る。自分がぶざまな体形になっているのは知っていたが、鏡やショーウインドウに映る自分の姿は見ないようにしていた。


(出所:『イラスト日記 ゆるして!糖尿病』)

【画像】ラーメンとお酒がやめられなかった様子をイラストで(5枚)

見るときはおなかを引っ込めたり、ほほをすぼめたり、眉間にしわをよせて歌舞伎役者のような顔をしてごまかしたりしていた。


(出所:『イラスト日記 ゆるして!糖尿病』)

外出先でトイレに行くと、鏡が目に入るのだが、自分の姿を見たくなくて薄目になって手を洗っていた。

白澤卓二医師からのアドバイス(1)

ラーメンの小麦には依存性がある

塚本さんのラーメンに関するイラスト日記を読んで、最初に感じたのが「典型的な小麦中毒だな」ということです。驚かれるかもしれませんが、近年の小麦は麻薬と同じような中毒をもたらすことが、最近になって明らかになったのです。

中毒をもたらすのは小麦に含まれている「グルテン」というタンパク質です。

グルテンは胃で小麦ポリペプチドという物質(エクソルフィンとも呼ばれる)に分解されるのですが、この物質は血液脳関門(脳に有害な物質が入らないよう、脳と脳以外を流れる血液を隔てるフィルターのようなもの)を突破し、脳のモルヒネ受容体(アヘンやモルヒネ、ヘロインなどを摂取したときに快感を感じるセンサー)と結びつき、快感を感じさせるのです。 

エクソルフィンによる快感は非常に強く、麻薬に匹敵します。

その結果、何が起こるかというと、「食べているときが幸せ」「食べていないと落ち着かない」「どうしても食べたい」と、食べ続けてしまう中毒に陥ります。これは、麻薬中毒者が麻薬をやめられない行動原理と同じです。

私は、なにげなく口に入れている食べ物のなかに、依存性をもたらすものがあることを知り、それらを「マイルドドラッグ」と呼んで注意喚起しています。

最初にマイルドドラッグに注目したときは、砂糖や塩、油、スナック菓子などに注目していましたが、今では小麦以上のマイルドドラッグはないと思っています。 

もう一つ気になったのが、ストレスと食欲との関係です。ストレスを感じているとき、脳はそれを打ち消すために強い幸福感を求めます。ヒトが幸せを感じるのは、欲が満たされるときです。

私たちはさまざまな欲を抱きますが、そのなかでも原始的で強烈なものが食欲・性欲・睡眠欲の三大欲です。

これらは動物が生きるための本能として持っている欲求になります。とてもシンプルで強い欲なので、それらが満たされたときには強烈な快感を味わいます。

三大欲のなかで、最も手っとり早くできるのが「食べること」です。

セックスは一人ではできませんし、睡眠もそういつでも眠ることはできません。食べることは脳にとって一番手軽な幸せのスイッチといえます。

食欲をコントロールしているのは脳です。「食べたい」と思う心は、脳が幸福感を求めてそう思わせている、そう考えると、食べたいという欲求を抑えられるのではないでしょうか。

(白澤卓二)

お酒も大好きで毎日浴びるように飲んでいた

ラーメンだけではない。お酒も大好きだ。コロナ禍の前は、毎日のように飲んでいた。これは仕事を始めた頃からずっとそうだ。

毎夜、六本木や新宿の酒場で飲んで、仕事の憂さを晴らす。昼ごはんを食べながら、ビールを飲んだこともしばしばある。もちろん仕事中である。

酔ってイタズラもやった。若い頃には、新橋駅の噴水に飛び込んだことがある。そういえば、山手線の電車に、同僚と2人で3mほどの材木を担いで乗ったこともあったな。今ならすぐさまSNSで叩かれるだろう。


(出所:『イラスト日記 ゆるして!糖尿病』)

絵本作家として生活ができるようになっても、お酒を飲む量は減らない。忙しくなったのでむしろ増えた。そして、ありがたいことに取引先からの接待なんかもある。打ち合わせをしながら飲むこともあるので、ほとんど毎日飲んでいた。

子どもの頃から通っている浅草の「神谷バー」は、ミックスサンド、チョコレートパフェが食べられるのだがアルコールも有名だ。


(出所:『イラスト日記 ゆるして!糖尿病』)

大ジョッキのビールと名物であるデンキブランを5杯飲むと倒れる。これで失敗したこともよくあった。

白澤卓二医師からのアドバイス(2)

お酒にも依存性、過度な飲酒はとても危険

アルコールにも依存性があります。その弊害が認知されたのは、マイルドドラッグよりもずっと前のことで、アルコール依存症という病気として認められています。

診断基準を満たした場合は、病院で依存症から抜け出すための治療を受けられます。アルコール依存症に陥ると、お酒を飲んでいないと手が震えたり、イライラしたり、暴れたりといった禁断症状が現れます。

こうなると、自分の意志でアルコールを断つことは難しくなります。専門の施設でリハビリ治療を受けても、アルコール依存症から離脱するのはかなり時間がかかるといわれています。

アルコールは、長期間、多量に摂っているとがんのリスクが高まり、肝機能が低下して深刻な健康被害を招きます。人間関係を悪化させることもあります。それでもやめられない、わかっていてもやめられない、というのが依存症です。

「酒は飲んでも呑(の)まれるな」という言葉がありますが、まさしくそうですね。

(白澤卓二)

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(塚本 やすし : 絵本作家)
(白澤 卓二 : 医学博士、白澤抗加齢医学研究所所長、お茶の水健康長寿クリニック院長)