pachae ボカロもロックもジャズも歌謡曲も一飲みにする、新人離れした超実力派バンドはどこから来てどこへ行くのか
形容詞をたくさん並べるよりも、映像を見て音を聴いて驚いてもらうほうが手っ取り早い。大阪出身、ハイブリッドシティポップバンド、pachae(パチェ)のことだ。この春にユニバーサルシグマからメジャーデビューしたばかりの3人組は、ボカロもロックもジャズも歌謡曲も一飲みにする広大な音楽性を身に着けた、音山大亮(Vo&Gt)が作り上げたキャッチーなファンキーダンスロック+超エモメロディの黄金律を、さなえ(Key)、バンバ(Gt)という腕利きのメンバーが最上級のバンドアンサンブルで表現する、新人離れした超実力派だ。哲学とユーモアが錯綜する歌詞の世界観も魅力的なpachaeとは一体誰で、どこから来てどこへ行くのか。音山とバンバの二人に聞いてみた。
――はじめまして。とにかく聴ける限りの音を聴いて、見られる限りのMVを見てきました。素晴らしい。いい曲ばっかり。
音山:ありがとうございます。
――それも、最初に世に出た曲からいい曲なんですよ。だんだんうまくなるとかじゃなくて、いきなり完成度が高い。
音山:それを言ってくれるのはとても嬉しいですね。俺はけっこう、それを怖がっていたので。バンドも何個か組んだこともあったけど、30点みたいな状態で世の中に出したくなくて、pachaeとして出すタイミングでは、K点越えしてる状態で“俺らです”って言いたかったから。組むまでにだいぶ時間をかけて、そういう曲ができたからメンバーを誘ったという感じです。
――プロフィールを見ると、2020年のmurffin discsのオーディションで準グランプリを取ったときに“結成3か月”と書いてあったから、そんなバンドがこんな凄い音?って思ったんですけど、そういう理由でしたか。
音山:結成した日ぐらいにオーディションに応募したので。みんなで弾いた音源って嘘ついて(笑)。嘘というか、何も言わずに。俺が全部録ったやつで、メンバーに“こんなのをやるから”って、1曲目に渡したのと同時にmurffinにも送って、気づいたら進んでて焦りました。忘れてたもんな。
バンバ:オーディションの存在を忘れてた(笑)。
音山:気づいたら一次審査が終わってて、“え、進んでる?”って。だから、結成してもうちょっとで4年ですね。7月ぐらいに初めて集まったので。初ライブは12月でした。
――やりたいことが最初からあった人ですね、音山さんは。音楽性だったり、活動のやり方だったり。
音山:何でも好きなんですけど、そこで“pachaeはこう”って決めて、それをやるのが楽しいっていう感じですね。“売れたい”というわけでもないけど、売れるために必要なことをやるのが楽しいっていう、ちょっと変わってると思います。“アーティスティックで”みたいな感じで曲を書いてきたわけじゃないですね。やっぱりボカロとかDTMが好きな人って、ちょっとそっちがあるかなと思いますけど。
――わかります。
音山:作るのが好きなので、元々ライブは全然好きじゃなくて。ライブが楽しいって、この4年でやっと思うようになってきました。今は楽しいです。人が多いと楽しいです(笑)。少なくても楽しいですけど。
音山大亮(Vo&Gt)
――過去の音源を全部聴かせてもらって思ったのは、pachaeにはある種の王道パターンみたいなものがあるのかな?と。イントロから最初のところはファンキーなカッティングとか、クールでソリッドでかっこいい感じなのが、サビが来たら突然めちゃくちゃエモくなる。超キャッチーなメロディでぐっとつかむ。その展開が黄金パターンだなって勝手に思ったんですけど、どうですか。
音山:いやもう、その通りです。
――合わせなくていいですよ(笑)。勝手に思っただけなんで。
音山:いや、でも最初はほんまにそれを考えてました。メンバーを誘ってる段階ぐらいから、“何が必要なんだ?”と思ったときに、サビだけ歌謡曲であればまだ行ける時代かな?と思っていて、俺はやっぱりただの歌謡曲が好きなので。でも入りは今っぽくないと聴いてくれへんから、ボカロっぽくしたりするけど、サビはシンプルな歌謡曲でやったら、(他に)意外といないかな?って。難しいバンドって、(曲の)最後まで難しいし、歌謡曲の人はAメロから歌謡曲なので。唯一無二というか、それがいつかpachaeっぽさになればなっていうので、“難しい”から“サビだけ単純”は、もう昔からやってます。でも、こだわってもないです。そうじゃない曲も全然あるし。
――必殺パターンが一個あると、強いなと思います。
音山:あと、転調すると、何かかっこよくなるんですよ。しすぎなんですけど。
――しすぎですね(笑)。相当にトリッキーな曲もいっぱいあって。
音山:俺の中で、黄金の転調方法を見つけたんですよ。おんなじ転調をしてる人もいるんですけど、一番曲数をやったのは俺やと思ってて。いつか有名になったらもっと偉そうに言えると思うんでけど、もう“音山転調”ぐらいの感じで(笑)。「エゴイスティック・レスキュー」とか、「タイムマシン独奏曲」も「ダロウ」もそうやし、ここからこう行くという転調で、俺が一番“うわ、かっこいい”ってなると思うやつがあったんですよ。それにハマりすぎてて、一時期そればっかりやってました。でもYOASOBIの「アイドル」がその転調をしてるんですよ。
バンバ:パクられた(笑)。
音山:まあまあ、目の付けどころがええなと(笑)。でも、俺らが売れる前にやられると、俺らがパクリになるからやめてよって(笑)。
――たぶん聞いても絶対わからないと思うけれど。具体的にどういう転調なんですか。
音山:えっと、そのキーにおけるドミナントのコードを、その後転調した仮のキーにおける三度セブンのノンダイアトニックコードと仮定して、次のキーに入るんですけど。それが一番、ちょっと変わってるけど“うん?”ってなるのが、個人的に鳥肌が一番多かったので、じゃあこれを濫用しようということで。「アイドル」にパクられたけど(笑)。いや「アイドル」はもしかしたら違うかもしれないけど、同じ雰囲気やったんで、たぶんそうで。
――すごい。発明家ですね。この人。
バンバ:うん。面白いですよ。
――何を言ってるかわからないけど(笑)。その、発見した喜びはすごいわかる。
音山:喜びましたね。それはだから、今どきですよね。パソコンで曲作りしてると、何か思いつく瞬間があって。
――それはたぶん、ギターをジャランと鳴らして作る人からは出て来ない作法でしょうね。
音山:まあでも、結局元はこれ(ギターをジャラン)ですよね。これでやりながら理論を勉強してるときに、どういう転調がいいか?を考えてる時期が長かったんで。スティーヴィー・ワンダーの「Overjoyed」という曲が、世界で一番転調がきれいなんですよ、俺の中で。自信満々で、もう覆らないぐらいあれはヤバくて、あれを真似しようとして研究して、一回も真似できてないですけど。そこから転調にハマりました。
――すごい。発明家で研究家の体質ですね。そんなバンドがいよいよ今年の春から、メジャーレーベルへと活動の場を移しました。どうですか、環境が変わっても、やりたいことはそれ以前と変わらないですか。
音山:基本、変わらないですけど、メジャーっていうシーンでやっていくために必要なものは、今までと絶対ちゃうから。そこで“こういうものが必要だ”と言われたら全部やりたいですね。そこで“嫌や”とか、歌詞とか曲に訂正が入って落ち込んだりとか、そういうことは1回もないです。この間もメジャーの友達と話してて、“歌詞とかいろいろ言われたら、書く気も失せるよね。音山さんもそうでしょ?”とか言われて、“ほんとにね”みたいに流したけど、俺、そう思ったことはないから。でもたぶん、そのタイプのほうが多いと思うんですね。
――それはアーティストは、多かれ少なかれそうだと思いますね。
音山:(言われて)嬉しいまではいかないですけど、それだけ力のある人が周りにいて、その人に“こっちのほうが売れるかも”って言われたら、そっちを出してみるほうが面白いじゃないですか。そこらへんのメンタルは、俺はたぶん強いんで。だから、変わってないっちゃあ変わってないし、なんぼでも変わりたいって感じですね。
――そのメジャーレーベルからのリリース第一弾、「チョウチンカップル」。あれはどんなふうに作った曲ですか。
音山:元々“メジャーのためにこれを”っていう感じで書いたわけでもなくて、いろいろ書いてる中で“これかな”ってなって。テーマもどんどん変わっていって、元々は女の子と男の子の話で、どうしようもないぐらいの陰キャで、ダメダメで人見知りの二人を想像してたんすよ。そこから一人はイケイケで想像して、よくあるヤンキー恋愛ドラマみたいな、真面目とヤンキーが惹かれ合ってお互いにないものを探すみたいな、恋愛の曲にしたろかって。お互いに深い、暗いとこにいる感じだったんで、それを深海にたとえたときに、今まで見たことない光をネクラな真面目ちゃんが発見するってなったときに、深海の光と言えばチョウチンアンコウ一択やったんで。
――ああそうか。そのチョウチンか。なるほど。
音山:で、ヤンキー側がチョウチンアンコウで、って進んでたけど、恋愛の曲って(pachaeには)そもそも少ないんで、メジャー一発目のテーマが恋愛って言ったら、それこそ意識してる感じが俺の中でも出るから。間口を広くするっていうので、親友との話とか、まだ知らない世界に飛び込む、みたいな歌詞を入れて、聴き手がどんな捉え方をしてくれてもいいような曲にしました。だからタイトルはなごりしか残ってないっていう。
――確かに(笑)。歌詞には出てこないですね。
音山:まぁでも、外国で“カップル”と言えば、アベック的な意味以外でもあるから。カップルは残して、チョウチンもやっぱり響きがいいなと思って、「チョウチンカップル」にしました。だから、意味わかんないチョウチンがついてます。ジャケットでしか回収できてない(笑)。でもそういう、恋愛の曲としてもし聴こえる人がいたら、それはそれで最高なんで。深い伏線を回収できる可能性を秘めてる人がいるかもしれない。もっと売れていけば。
「チョウチンカップル」ジャケット
――謎かけですね。面白い。プレイヤーとしてはどうなんですか。楽しい曲ですか。
バンバ:フレーズが面白いですよね。バコーン!と始まって、そこであのギターのイントロが来るのは、“もう絶対売れるやん”って感じますよね。デモで上がってきたときから良かったです。
――ということは、フレーズは全部、音山さんが作っている。
バンバ:そうなんです。
音山:今の基本はそうですね。須藤(優/サポートベース)さん、よっち(河村吉宏/サポートドラム)さん、GOTO(サポートドラム)さんたちとやり始めて、さすがに凄すぎるんで、俺が作ったものを弾いてもらうのはちょっともったいないから、ベースとドラムはお任せするところを作ったりしてますけど。メンバーにも“ここを作って”とか、そういう部分を増やしていこうとはしつつ、今の基本は100%俺が作ってるって感じです。
――そして、第二弾として次に配信リリースされるのが「非友達」。これがまた、イントロからサビまで一秒残らず全部かっこいい曲。
音山:ザ・pachaeという感じです。「チョウチンカップル」は今までよりシンプルやったし、変わったかも?って、すでに友達とかに言われたりもあったから。やっぱりメジャー一発目だから色々意識するよねって思われてるときに、次に出すのがこれやったら黙らせるなって。“これがpachaeですよ”っていう、クソムズ曲を出しておけばそう思われるかな?っていうので、このタイミングでかなり難しく作りました。めっちゃ難しいです、これ。
――そんなに難しいですか。ギターも。
バンバ:ほんまに難しいっす。休むべきタイミングがないし、集中力マックスな曲ですよね。
音山:(ギターの)バッキング史上、一番ムズいかもしれない。歌いながらは無理だろって。実際、無理ですしね。ギリギリ無理(笑)。
――ギリギリ無理(笑)。ライブ、どうしますか。
音山:もう気合でいくしかないですよね。この後ほんまに鬼のように練習しますけど、でもまあまあ大丈夫やと思います。他の曲も、初めてやるタイミングで同じこと思ってるんで。すべての曲で。
バンバ:ほんまにそう。
音山:最初から“これはいける”と思える曲もたまにあるけど、大体初めて合わせるときには、“いけるかな…”って。
――自分で作ってるから、楽にしようと思えばできそうだけど、チャレンジしちゃう。記録更新に挑むアスリートっぽい気質もあるんですかね。
音山:今後は考えた方がいいかもしれないですけどね。アピールし終わった瞬間に、俺のパートがどんどんなくなっていく(笑)。歌に集中できるように、最近は引き算も兼ねてやったりはしています。
――この歌詞は、ざっくり言うと、友達のままでいるかいないか?という、片思い恋愛を歌った歌詞ですか。
音山:まぁ、そうですね。曲が難しすぎるんで歌詞は単純に、友達のままでいるべきなのか、何がベストやったか?っていう、みんな悩んでるテーマですね。特に学生とか。
――永遠のテーマじゃないですかね。
音山:何事もそうやと思うんで。“メジャーかインディーズか”もそうですし、その一線ってあると思うんです、すべてにおいて。やっぱり、超えないと経験できないことはあるけど、超えんかったほうがよかった、ということもすべてにおいてあるという気持ちが僕にはあるんですけど。この曲は、人間関係にフィーチャーはしてるけど、若干そういうことを考えながら書いた歌詞です。
――そこまで気づかなかった。なるほど。深い。
音山:いや、全然本意は入れられてないと思うんで、気づかないと思いますけど。そういうことを、ちょっと思ってはいました。超えるか超えないか、そのラインに立ってるときが結局一番楽しいですし。すべてにおいてそうだと思う、そういう気持ちで書きました。歌詞は。
――歌詞は大事ですよね。日本でJ-POPをやっている以上、とてつもなく大事。
音山:その意識は、最近かなり上がってきました。ボカロとかやってると、ボカロの人たちを否定してるわけじゃないですけど、あの界隈は歌詞が難しすぎたり、深すぎてわからんとか、意味を持たせない遊びとか、そういうものが多すぎるから。そっち出身やとやっぱり語呂とかの遊びになってくるんで、意味を持たせるってなったらしっかり書かなと思って、最近はそうしてますね。
――音山さんの言葉のチョイスは凄いですよ。文学的な表現も多いし、歌詞であり、哲学と言うと大袈裟だけど、思想的なことであり、詩であり、しかも基本ユーモアがありますよね。どこかに必ずニヤッとさせたり、おやっと思わせるところを入れるのがすごくキャッチーで。作家的な感性の人だなとは思います。
音山:ありがとうございます。でもまだまだですね、歌詞は。俺の思うもっとすごい歌詞の像が、歌詞に関してはけっこうあるので。
――誰かいます? 具体的な人として。
音山:俺がやっぱすげぇと思うのは、野田洋次郎さん。哲学的に文学的に、じゃない歌詞でもいいんですよ。ウェーイ!みたいな書き方も含めて、やっぱり天才やなと思ってて、未だに歌詞だけ読んだりするんですけど。“そこでその一行入れる?”みたいな、そのユーモアというかシャレ感というか。その感覚を人に与えられる鳥肌感を勉強させてもらってるかなと思います。他にも素晴らしい方はいっぱいいますし、歌詞は全然、自分の中でもっとK点はあるなって思います。
――話の流れで聞いちゃいますけど、音山さんの音楽的ルーツってどのへんですか。どんなものに影響を受けてきたのか。
音山:最初は、テツandトモなんですけど。
――おお(笑)。そうきたか。
音山:最初に買ったCDが「なんでだろう」で、カップリングに入ってるインストゥルメンタルも聴いてたんで。ただのアコギなんですけど(笑)。そこから、1回どっぷりハマったのがミスチルですね。自分が音楽やる側になってからは、いろいろ聴いて、ボカロとミッシェル・ガン・エレファントに同時にハマって、混沌としている時代がありましたね。そして(大阪)芸大に入ってジャズとかをやったけど、日本で売れないと思っちゃったんですよ。フュージョンとかジャズで売れるのは一握りやし、俺はそこまでうまくはないと思って、それからロンドンに1年半行きました。オアシスとか大好きでしたけど、それはとりあえず外国に行きたかっただけで、帰ってきて、どういうバンドを組むか?を考えて。その何年かのどこかのタイミングで、フジファブリックとヒトリエに心を突き動かされて、それを足して二で割るぐらいのバンドやと話題になりやすいかな?と思って。今でも新しい感じがあるし。で、その裏にはテツandトモがいます。主にトモかもしれんけど。
――素晴らしいですね(笑)。素敵な音楽の地層ですよ。
音山:テツandトモは素晴らしいデュオですよ。ゆずに並ぶ。
バンバ:昆布が海の中で出汁が出ないの、なんでだろう。確かになんでだろう?って思いますよね(笑)。
バンバ(Gt)
――再評価しないと。バンバさんは何がルーツなんですか。
バンバ:僕はもう、明確にandymoriです。あとは、明確に好きなジャンルがあるわけじゃないので、時代をさかのぼったり、同じ時代の人だったり、そういう聴き方ですね。andymoriが和製リバティーンズと言われてたから、リバティーンズを聴いたりとか、そのままブリットポップを聴いたりとか、全部そんな感じです。
音山:ちゃんとしたディグり方してんな。
バンバ:そういう意味じゃブリットポップとか、ドリームポップとかが好きなんで。
――彼の作る曲にも接点がありますよね。
バンバ:そうですね。結局どこかで交わるんで。
音山:俺も、言ってないだけで、洋楽にハマってる時期がはさまりまくってるんで。聴きすぎて“これにハマった”と言えないというか。でも結局日本でやっていくから、日本で売れてる人を最初に自分の像として浮かべるから、フジファブリックとかヒトリエの名前を出すんですけど、形成はいろんな音楽ですね。UKはいいよなってなるのもあるし、テツandトモはいいよなっていうのもあるし。
――ほんの何十分かの話であれですけど、いろいろ見えてきた気がします。思うのは、さっきの「非友達」の話じゃないけれど、友達と恋人とか、メジャーとインディーズとか、あとミッシェルとボカロとか。ライブと制作もそうですけど、常に選択肢の狭間で揺れ動いていて。“こえるかこえないか、そのラインに立ってるときが結局一番楽しい”という、それが音山さんのクリエイターとしての哲学なのかなという気がしております。
音山:そうですね。“いろいろ聴いて、今これをやってる”が大事っていうのは本当にそうで、俺の中の哲学というか思想というか、“これしかできない人がこれをやってる”とはやっぱり違くて。二つできる中から一個を選ぶんやったら、10個できて一個選べるほうがかっこいいと思うし。ロックしかできへんって、イカレきってる奴はめっちゃかっこいいですけど、まぁまぁジャズもやったしフュージョンもやったし、いろいろやった結果“pachaeっぽいのを今はやってる”が自由というか、選択肢があることこそが自由やと思うので。
――間違いないです。
音山:“これを選んでるぞ”っていうのが、楽しさとして人に伝わるんかな?って思うんで。曲で熱い思いを伝えるタイプじゃないんで、こうやって活動してるpachaeを見て、“自由に生きてもいいんだな”って思ってもらえたら。僕はフジファブリックでそれを感じてたんですよ。それはけっこう真理やなと思って、理想としてあります。
さなえ(Key)
――素晴らしい。最後はライブの話で締めましょう。今年からスタートしたpachaeの主催イベント『Trick or Trick』の第二弾が、6月14日に大阪ルイード(W/SAKANAMON、POP ART TOWN)、22日に東京のeggman(W/SAKANAMON、EOW)で開催されます。そもそもこのイベント始めた趣旨というと?
音山:まず、同じようなバンドばっかりが集まりすぎんほうがいいと思ってて、自由な感じを見せるのがいいなと思ったのと、俺らが憧れてたバンドとやるみたいな意識もありました。(Vol.1に出演した)アルカラとか、普通に聴いてたので。
バンバ:レジェンド。
音山:中高から普通に聴いてたバンドと“今一緒にやってるんか”みたいな、その楽しささえ伝わればと思ってますね。まだ具体的に“こういうイベントで”って決めきれてない部分もあるんですけど、とにかく刺激的でありたいなと。pachaeメンバーが対バン相手のことでテンション上がってんのがいいなって思います。“まず俺らが楽しんでるから、今日は”っていうのが、伝わったらいいなと思います。
バンバ:トリトリ(「Trick or Trick」)はpachaeの栄養やと思ってて。このまま次のステップというか、もっとでっかいイベントになって、そのときに自分たちが戦えるように、対バンのみなさんを取り込んでやろうぐらいの気持ちでもありますね。そんなん言うのはおそれ多いですけど、絶対いいイベントにするし、マジで来てほしいです。
――そのあと、7月20日には『ジャイガ(「OSAKA GIGANTIC MUSIC FESTIVAL」)』にも出ますし。いい夏になりそうじゃないですか。
音山:いい夏にしたいですね。夏、大っ嫌いなんですけど、初めて好きになれるかなと思ってます(笑)。俺、『ジャイガ』で熱中症で倒れたんで。
――あらら。それはお客さんで行ったときに?
音山:そうです。だから、偉そうに冗談で“出る側以外では行かない”とか言ってたら、2年後に出れることになって、じゃあ出てあげようかなと(笑)。もうこれからはフェスは出るもので、残念やけど観に行けないですっていうぐらいでいきたいっすね。
――頼もしい。あと、近未来の夢。目標ってありますか。pachaeとしての。
バンバ:まずはワンマンやりたいですね。
音山:そして、大きいイベント(出演)を増やしていきたいな。
バンバ:みんながpachaeを知ってる状態でフェスに出たい。
音山:そうやな。当たり前なんですけど、今はアウェーのみなんで。今は、プロデューサーみたいなお客さんが絶対いるんですよ。(腕を組んで)こうやって見てる人がけっこういて、“そんなまじまじと観るなよ”みたいな。それでも観てもらえるという環境はありがたいし、”知ってるけど興味ない”じゃなくて、興味あるから観てくれてるわけで。
――まぁでも、分析したい気持ちはわかる気がしますけどね。
音山:それやったら嬉しいんですけどね。今、“なんだ?”みたいな顔で観てる人が、アンチになるぐらいのとこまでいきたいですね。それがアンチだって認識されるぐらい、他はみんなウワーッてなっていてほしい。
――今日はありがとうございました。ライブ、楽しみにしてます。
バンバ:みなさん、ライブに来てください。待ってます。
音山:思ってるより待ってます。たぶんいつも、そんなに伝わってないんですけど、みんなが思ってるより待ってるんで。そろそろ、わかってあげてほしいです。
取材・文=宮本英夫