唯一無二で在るために、手越祐也の挑戦は続くーーファンと『絆 -KIZUNA-』を深めたツアー演出の真意、「最高の夏の起爆剤」となる対バン企画の意気込みを語る
田邊駿一(BLUE ENCOUNT)、金井政人(BIGMAMA)、眉村ちあき、山田海斗・竹中雄大(Novelbright)、マイキ、井上竜馬(SHE'S)といった、同世代のアーティストたちによる「手越祐也のための楽曲」が詰まったミニアルバム『絆 -KIZUNA-』を引っ提げ行われた『手越祐也 LIVE TOUR 2024 絆 -KIZUNA-』のBlu-ray/DVDが6月19日(水)にリリースされた。2024年2月1日のKT Zepp Yokohamaからスタートし全国5都市をまわりながら挑戦したのは、各都市2公演でそれぞれセットリスト、照明を含む舞台演出、衣装、ヘアメイクをすべて変えるというハードなものだった。その真意と、6月24日(月)から始まる次なる挑戦『スペプラ手越LIVE ~Music Concept~』について話を訊いた。
──2月に行われた『手越祐也 LIVE TOUR 2024 絆 -KIZUNA-』。全国5か所でそれぞれ2日間の公演でしたが、1日目と2日目のセットリストを変えるというハードな選択をされましたね。改めて振り返り、どんなツアーになりましたか?
セットリストだけでなく、照明も衣装もヘアメイクもすべて変えたので、ある意味2つのツアーをやるような感じでした(苦笑)。それって、サポートしてくださる方たちにとっては正直めんどくさいことだと思うんですが、僕が「やりたい」と言ったことに対してバンドメンバーをはじめとしたスタッフ全員が「やろう!」と、嫌な顔ひとつしないで快く受け入れてくださったことに感謝しかありません。
結果的には両日ともに素晴らしい作品として仕上げることができたので、どちらを世に出しても「自信作です」と胸を張って言えますし、「こういうこともできるんだな」と自分自身の可能性や、サポートしてくださっている方たちのすごさを感じました。そうやって僕を支えてくださる方たちや、応援してくださっているファンの方たちとの絆もさらに深まったツアーとなりました。
──Blu-ray/DVDの特典にはバックステージやオフショット映像が収録されています(※Blu-ray特典はリハーサルおよび全公演の映像が収録。DVD特典は2月29日の映像のみ)。そこで語られていた「『絆 -KIZUNA-』を通じて伝えたいのは『アダルトブルー』と『My Own Beat』の歌詞のメッセージだった」という言葉について教えていただけますか。
ツアーを通してセットリストを少し変えた部分があるんですが、終盤は1日目も2日目も「My Own Beat」でアンコールを終えているんです。というのも、やっぱりこの曲って自分の根幹にある思いを歌詞にしていて……「槍の雨を何度でも越えていく」「もう誰にも阻ませないんだ」といった、強さがある主人公というイメージなんですよね。「いろんなことがあったとしても、地に足をつけて前に進んでいこう」ということを僕は伝えたいなと思うんです。
一方で、マイキが作ってくれた「アダルトブルー」は「当たりの出ないあみだくじでも当たりを探すのが人生なんだよね、わかるよ、きみの気持ち」といった感じの寄り添う曲ですよね。僕のSNSにも悩みがたくさん送られてくるんですが……僕はポジティブ人間だけど、みんながみんな僕みたいなメンタルじゃないっていうのはわかっているので、「なんでそんなことで悩んでるの? もっとポジティブにいけばいいじゃん」とかっていうことは絶対に発信しないようにしていて。
みんなに向けて僕の考え方を伝えることはありますが、そのなかに少しでも参考になったり、「それだったら自分もちょっとできるかも」と思ってもらえるものがあったらいいなっていう……そういう意味で、ちゃんと寄り添える人間でありたいんですよね。だからこそ、「アダルトブルー」も僕のメッセージとしてきちんと伝えたいと思いました。
──曲のアレンジや照明など、毎回こだわる箇所が多い手越さんのライブツアーですが、今回に関して特にこだわったところはどこでしょうか?
それぞれのアーティストが僕のために作ってくれた曲が集結した『絆 -KIZUNA-』というアルバムを引っ提げてのツアーだったので、それらの楽曲をセットリストのどこに入れるかということには特にこだわりました。例えば同じ「My Own Beat」でも、最初にやる「My Own Beat」とアンコールの最後にやる「My Own Beat」では聞く側の捉え方がまったく変わると思いますし、ロックナンバーが続くなかでやる「everlasting」と今回みたいに1曲目でどーんと披露する「everlasting」とでは曲の見え方がまったく変わりますから。そうやって置く場所で印象が大きく変わるのがセットリストの面白みだと思うので、核となる『絆 -KIZUNA-』の6曲の置き場所は色々考えましたね。
──1日目と2日目のセットリストが違うというカロリーの高いツアーを完遂したことで、今後のツアーもさらにファンのみなさんの期待が高まるのでは?
ははは!(笑)。もうね、それで言うと6月24日(月)から始まる『スペプラ手越LIVE ~Music Concept~』がやばいことになっちゃってるんですよ~。
──全6公演それぞれにゲストとテーマが異なる「コンセプトライブ」ですね(笑)。
「テーマが異なる」というのは、僕のなかでは当然「セットリストも照明も異なる」という意味ですからね。テーマが違ってもセットリストは変わらないという考え方もあるかもしれませんが、『絆 -KIZUNA-』のツアーをやった僕としてはそれだと納得いきませんから。それに、先日いつものライブチームと打ち合わせをやったときに、バンマスのSinさんや振り付けのTETSUHARUさんが当たり前のように「じゃあ、できれば今日は4つぐらいセットリスト考えたいですね」って言うんですよ。「俺まだ何も言ってないけど? やっぱりみんなも変える気でいるんだね」って大笑いして(笑)。本当にありがたいです。
──公演ごとにテーマを決める利点とは何だと思いますか?
映画やドラマのタイトルと一緒で……「今日は『GAP』DAYだよね。もしかしたら、このあたりがGAPなのかもしれないな」とかって、いろんな捉え方ができると思うんです。どう捉えるかはオーディエンスによってそれぞれですが、テーマがあるからこそ考えながら観ることができる。テーマがあるからこそ、作り手としてもその裏を狙ったり、あえて直球でいったりもできる。それってすごく楽しそうですよね。まあ、単純に6つセットリストができるから僕たちが楽しいっていうのもあるんですけど(笑)。
──順を追ってうかがっていきたいのですが、まずは6月24日(月)はゲストにBIGMAMA、テーマは「GAP」です。
アルバム『絆 -KIZUNA-』に収録されている「face to face」という曲をボーカルの金井くんに書いてもらったんですが……BIGMAMAを初めて見たときに感じたのが、「すごい攻めてるバンドだけど、演奏やヴォーカルは繊細そのものだな」という印象で。そのギャップがBIGMAMAの魅力だと思いますし、BIGMAMA×手越祐也という対バンもギャップを感じていただけるんじゃないかなと思って、テーマは「GAP」にしました。
──6月25日(火)はゲストに SHE'S、テーマは「BEAUTIFUL」です。
SHE'Sには先ほどお話しした「My Own Beat」を書いていただきましたが、そのときにも「メロディラインと紡ぐ歌詞のチョイスがすごく透き通っているな」と感じました。SHE'Sの曲を聞いていると、「なんてキレイなんだろう」と思いますし……彼らの音楽の美しさを、照明も含めたステージ全体の美しさとして表現できるように、SHE'Sは「BEAUTIFUL」でいきたいと思いました。
──7月3日(水)はゲストにホリエアツシ(ストレイテナー)さん、内澤崇仁(androp)さん、サポートアーティストとして寺中友将(KEYTALK)さんを迎えて「TRAVEL」をテーマとしたステージになるとのこと。
7月3日(水)と7月4日(木)については『スペプラ手越 ~Music Connect~』の番組内で「どういうテーマや見せ方にする?」と、みんなで飲食しながら話し合うロケをやったんですが、そのときにホリエさんと内澤くんがよく2人でライブや旅行をしてると聞いて。僕もこれまでいろんな旅をしてきたのでわかるんですが、旅行って人間性を司るうえでとても大事な要素だと思うんです。
「TRAVEL」というのはそういった直接的な旅という意味もあれば、人生の旅路だったり、曲のなかで色々“トリップ”していくという捉え方もできますよね。初めてセッションする僕ら3人に加えて、友将が後ろでサポートしてくれますし、アコースティックなので色んな「TRAVEL」を表現できると思います。
──7月4日(木)は眉村ちあきさん、Novelbrightの竹中雄大さんと山田海斗さんがゲストに、KEYTALKの寺中友将さんと八木優樹さんがサポートアーティストとして登場です。「LOVE」がテーマですね。
『絆 -KIZUNA-』で「Gluttony」を書いてくれた雄大と海斗、「Lover」を書いてくれたちあきちゃんが来てくれて、さらには何度も共演経験があり、ゴルフ仲間でもある友将と八木ちゃんが来てくれるっていうので、もうこれは「愛」そのものですよね(笑)。本当に仲が良いみんなが集まってひとつになるという意味では、絆に近いものもあるんじゃないかなと思います。
──7月16日(火)はKANA-BOONがゲストで、テーマは「NEW FRONTIER」です。
再始動するKANA-BOONに花束を贈るような気持ちで考えたテーマです。ファンの方たちも含めて、もしかすると不安があるかもしれませんが、背中をぐっと押して「また行ってらっしゃい!」と伝えられたらいいなと思い、僕がソロデビューして初めてリリースしたアルバム『NEW FRONTIER』のタイトルを採用しています。
当時の僕はまだ余裕がなかったけれど、「ここからヴォーカリスト・手越祐也として出発するんだ。新しい世界を開拓していくんだ」という思いを抱いていて……それって今のKANA-BOONにも重なるところがあるんじゃないかな? と想像して決めました。僕はもちろんですが、僕のファンにとっても思い入れのある大事なワード「NEW FRONTIER」を彼らの新たな門出に贈りたいなと思いました。
──最終日となる7月17日(水)は氣志團をゲストに迎え、「SEXY&ONE NIGHT CARNIVAL」というテーマに挑みます。
今回のゲスト陣のなかで、氣志團だけが初共演です。世間からどんな目で見られようと、ずっとチャレンジし続けていらっしゃるパイオニアですよね。氣志團万博であれだけのスーパーバンドやアーティストが集結するのは、メンバーの方たちの経験や翔さんのお人柄、人を魅了する色気などもきっと影響しているんじゃないかなと思うんです。みんなが歌って踊って盛り上がる曲が多いので「ONE NIGHT CARNIVAL」としましたが、それに加えてそういった翔さんの色気も表現できたらいいなと思い考えたテーマです。
──全体を通して意気込みのほどは?
番組じゃなくてステージ上でご一緒するのが初めての方たちも多いので、「どんな対バンになるのかな? どんなパフォーマンスが見られるのかな?」と僕自身も今からすごく楽しみです。間近で彼らのパフォーマンスを見ることで僕の経験値もグッと上がりますし、ライバルとしてのぶつかり合いでもあるので負けていられませんよね。対バン相手のファンの方たちに「手越のパフォーマンスのここが印象的だったな」とかって帰り道に言ってもらえるようなパフォーマンスをぶつける自信があるので、ぜひ楽しみにしていてください。
もうすぐリハーサルも始まるので超ワクワクしますし……全部セットリストが違うから大変だとは思いますが(笑)、梅雨から夏の入り口くらいまでの3週間にわたるライブなので、携わってくれるすべての方たちと、見に来てくださる方たちにとって最高の夏を送る起爆剤になるようなステージを目指しています。
手越祐也 LIVE TOUR 2024 「絆 -KIZUNA-」BDジャケット
──6月19日(水)には『手越祐也 LIVE TOUR 2024 絆 -KIZUNA-』Blu-ray/DVDが発売されます。
アーティストそれぞれに武器があると思うんですが、僕にしかない武器って「どんな魅せ方もできるところ」だと思っているんです。それって、僕の曲を知らない・僕のパフォーマンスを見たことがない人でも、何かしらの視点で楽しむことができることでもあって。ステージのビジュアル、照明の使い方、僕のメイクやスタイリング、アコースティックアレンジの楽曲、ジャズの世界観が入った楽曲、じっくり聞かせるバラード、がんがんにスパークしたロックセクション……いわゆる「全部乗せ」ですよね。
──ステージ上で口紅をぐっと引く演出も印象的でした。
ああいった演出も含めて、今まで培ってきたエンターテインメントを全部乗せしているのが僕のステージです。加えて、ソロデビューから鍛えてきたヴォーカルや対バンで鍛えてきたロックミュージックでの振る舞いなど、表現の幅広さがアーティスト・手越祐也のストロングポイントだと思っています。初見の人でも何か刺さるポイントが必ず見つかるライブだというのを胸を張って言えますし、それは手越祐也にしかできないことだと思っています。僕は常に唯一無二で在りたいんです。
取材・文=とみたまい 写真=フォーライフミュージック提