「市民が乗れない京都市バス」と揶揄されるほどの混雑ぶり

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 都市部では今やどこへ行っても外国人観光客だらけ。旅行先に日本を選んでくれるのはうれしいが……トラブルも多数報告されている。受け入れ態勢が整わないなか、各地で起きているパニックを取材した。
◆どこもかしこも外国人観光客だらけの現状

 ゴールデンウイーク真っ只中の東京・渋谷駅。待ち合わせの定番スポット「ハチ公像」には長蛇の列ができていた。記念写真を撮るため外国人観光客が並んでいるのだ。

 修学旅行の定番だった京都や日光、オタクの街・秋葉原も、歩く顔ぶれは外国人のほうが多いほど。どこへ行っても訪日外国人で溢れている。

 日本政府観光局によると3月の訪日外客数は、単月として初めて300万人を突破。’24年は過去最高の3310万人(JTB調べ)に達すると予測されている。空前の円安によって割安感が強まったことが最大の要因だが、治安のよさや観光資源の多さも世界から評価されているからだろう。

◆「敷地内に侵入して撮影したり、ゴミを置いていったり…」

 本来なら喜ばしいことだが、一方でその弊害が社会問題化しつつある。いわゆるオーバーツーリズムの問題だ。インバウンド評論家の中村正人氏は次のように話す。

「世界遺産など有名なところは事前に調べてくるのですが、そのほかは、現地でSNSやグーグルマップで調べます。特に田舎の『こんなところになぜ外国人が?』というのは、グーグルマップが情報源であるケースが多いようです」

 つまり、SNSの映え写真や口コミからの情報によって意外な場所がホットスポットと化しているのだ。最近、“黒幕の設置”でニュースになった「富士山ローソン」は顕著な例だろう。

「コンビニ向かいの歯科クリニックは2年以上前から迷惑を被っています。敷地内に侵入して撮影したり、コンビニで買ったお弁当のゴミを置いていったり。商店街や電線に富士山を入れて撮るのが人気らしく、住宅街にある私の家の前でも撮影する人が増えました」(近隣の住民)

◆オーバーツーリズムで最も大きな被害を受けている京都

 こうしたなか、オーバーツーリズムで最も大きな被害を受けているのは京都だ。

「年中、観光客だらけで大迷惑です。つい先日も知人宅の植木鉢がキャリーケースでなぎ倒されたと嘆いていました。とにかく街中でゴミと渋滞が増えました。市内から郊外に引っ越しを検討し始めた友人もいます」(京都市内の住民)

 舞妓を無断で触ったり、撮影する外国人観光客の存在でトラブルが絶えない祇園地区では、地元協議会が4月に私道の小路を通り抜けた場合、罰金1万円を科すと記した「通り抜け禁止」の高札を設置。ほかにも恒常的なバスの混雑で市民は疲弊している。

「中心部から観光地へと向かう市バスは20〜40分待つことも。もう歩いたほうが早い。通勤電車も、観光客に占領されて座れなくなった。本当つらいですよ」(同住民)

 京都市交通局にコメントを求めると「一部路線と時間帯に観光客が集中し、バスに乗れない方がいるのは事実。キャリーケースと一緒に乗車することで、定員に満たない状態で発車することもあります。現在、路線の見直しなども行っている」とのこと。

 京都市ではバスのダイヤを変更したり、市民と観光客のすみ分けを実施するなど対策を急いでいるが、効果は未知数だ。そのため今も地域住民は不安を抱いている。

◆「カフェを無料休憩スペースだと思っているみたいです」

 こうした事態は全国各地で起きている。担当記者がまず東京駅で見たのは、カフェ店内にスーツケースを持ち込み、くつろぐ4〜5人のアジア系旅行者だ。だが、テーブル上にカップは1つしかない。店員に聞くとこう返した。

「雨の日は特にひどい。一人1杯の注文をお願いする看板を出していますが、あまり効果はないです。カフェを無料休憩スペースだと思っているみたいです」