Image: Kyle Barr - Gizmodo US

VRのプラットフォームを他社にも開放。

去年10月に発売され、最近アップデートもされたMeta Quest 3ですが、正直あまり注目されてません。でもよく見てると、Questのエコシステムには新しいことも起きているんです。

Questのソフトウェアを開発する人たちに話を聞いたところ、彼らの希望はVRの世界でオープンで多様な何かを作ること、言わばVRにおけるAndroidみたいなものを作ること、なんです。

ユーザーが選択肢を持つVRを目指す

Metaのメタバース・エンターテインメント・コンテンツ担当ディレクターのSarah Malkin氏に短時間のインタビューをしたところ、Questの現在の計画を端的に言うと「More(もっと)」だそうです。

つまり、アプリをもっと、体験をもっと、そしてサードパーティ製ヘッドセットももっと。今年4月、MetaはHorizon OSをVRエコシステムとして開放すると発表、LenovoやAsusといったメーカーがHorizon OSをサポートするヘッドセットをすでに開発中です。

Malkin氏:(VR市場に)参入する会社が増えてうれしいです(Appleとか)。ただ私たちは、我々こそが皆さんが開発したくなるメインの場であると自信を持っています。私たちがもっとも多くの人にリーチしていて、もっとも多様だからです。

米Gizmodo:それはユーザーが選択肢を持てるということですね。複数の違う会社が同じOSを使っている場合、選択肢がたくさんあるから、Androidモデルが有効なんですよね。

Malkin:その通りです。

Metaの「メタバース」の野望は、今までそんなに強固じゃありませんでした。VR空間というアイデアは、MetaがFacebookから社名を変更した時点ですでに、中身があやふやでした。

でも今、テック大手各社がAI方面に注力する一方で、MetaのQuestは以前よりずっとオープンになっています。Game PassやSteamVRにも簡単にアクセスでき、ゲームライブラリは順調に増え、基本的なUIも定まってきました。

Malkin氏の言う「もっと」とは何かというと、要するにサードパーティアプリメーカーです。といってもそもそもOculusやQuestは時期的に先行していたし、価格も(とくにApple Vision Proと比べれば)相対的に安かったので、MetaはVRのサードパーティアプリ数ではトップに位置していてきました。ただこれからはQuestでできることをもっと増やしたい、それもなるべく早く、ということなんです。

Meta Quest 3、何がアプデされた?

Image: Kyle Barr - Gizmodo US

MetaのHorizon OSの最新アップデートは、そんなに劇的じゃありませんでした。たとえばNetflixをブラウザ内で見られるようになったとか、飛行機のWi-Fiにつなぎやすくて揺れにも強いトラベルモードができたとか、そんな感じです。

あとは、既存アプリに新たなモードができたとか。『The Angry Birds VR: Isle of Pigs』には、ミックスト・リアリティのスリングショットモードができました。『Beat Saber』のOST 7には新たなアーティストの曲が加わりました。ダフト・パンクにインスパイアされたネオンに光る「Collider」環境もあります。フィットネスアプリの『Supernatural』にもミックスト・リアリティモードができて、コーチが雲みたいな空間じゃなく、リアルなリビングルームの中に出てくるようになりました。

米Gizmodoではこうした新機能にハンズオンできました。Meta Quest 3は、AR機能もある強力なワイヤレスVRとしてスタートし、リリースから数カ月の今までに多少は問題もありましたが、ちゃんと改善したのがわかります。「まったく新次元」というほどよくはないですが、全体的に上手くサポートされた、クリーンな体験になっています。

『Supernatural』のVRエクササイズは、普通のBeat Saberよりもずっとよい運動になります。体と手のトラッキング精度は高いし、エクササイズはただ手先を動かすだけじゃなく、全身を使うようにできています。ちょっとボクシングをしただけですが、軽く汗をかき、ヘッドセットに触れる部分で汗の輪ができました。とはいえ、楽しいデモではあるものの、目新しいものではありませんでした。

Gif: Meta

同時に、Metaはv66のアップデートもロールアウトし始め、パススルーの歪みを修正し、ハンドトラッキング性能も改善しようとしています。また手首の動きでメニューにアクセスする「リストボタン」もあります。これはゲームやアプリ内でも使えます。

Metaのデモで使ったQuestはどれもv66は搭載しておらず、米Gizmodo編集部にあるQuest 3もまだアップデートされていません。ハンズオンで使ったQuestには、メインメニューに変な部分もありましたが、それ以外はきちんと動きました。

3,500ドル(日本価格59万8000円)のApple Vision Proと500ドル(同7万4800円)のQuest 3を比べると、たしかに前者はアイトラッキング・ハンドトラッキングともにより正確で見栄えも良いですが、7倍もの価格差の理由になるほどではないです。

次に来るべきもの

Gif: Meta

とはいえ、VRエクササイズはみんなが使うものじゃないし、NetflixをVRヘッドセットで見たい人も全員じゃないでしょう。Quest 3のデモには新鮮味はなく、どちらかというと、「今も成長、投資を続けてます」というリマインダーのように感じられました。

ただHorizon OSの存在は、Metaから他社へのパートナーシップの呼びかけでもあります。Microsoft(マイクロソフト)とMetaが協力し合っていることは、黒と緑のXboxブランドのQuest 3の存在からもわかっています。

Apple(アップル)はWWDC 2024でVision ProのvisionOS 2を発表しました。が、アナリストのMing Chi Quo氏によれば、Apple Vision Proの需要はリリース当初だけで、その後急速にしぼんでいます。Metaのマーク・ザッカーバーグCEOは、Appleに対する彼らのVR技術の優位性を訴えますが、市場活性化という意味で、MetaにとってはAppleのVRも重要なんです。

モバイルではGoogle(グーグル)のAndroidがAppleのiOSへのアンチテーゼとなり、よりオープンであることをセールスポイントとして成長しました。MetaがVR界のGoogleになるには、Appleという敵が必要なんです。

Appleは箱庭のエコシステムと盤石のファンベースを土台にしてVision Proの普及を図ってるんでしょうけど、それでも次期Vision Proを早くリリースしてもっとテコ入れすべきです。

一方Metaは、Horizon OSをよりよいものにし続ける必要があります。Quest 3からGame PassやSteamVRへのアクセスが可能になった一方で、PlayStation VR2ではPCへのアクセス機能が追加されました。OSがオープンであること、デバイスの選択肢が豊富であることは、短期的には敵に塩を送るように見えても、長期的にはベターなはずです。

VRに多額の資金を注ぎ込み、直近の四半期ではReality Labs関連で38.5億ドル≒6000億円の赤字を出してるMetaですが、長い目で見てがんばってほしいものです。

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Quest 3のパススルーが大幅改善でVision Proクオリティに。そしてQuest 3S…?