世界保健機関(WHO)は2023年に、身近な人工甘味料であるアスパルテームに発がん性がある可能性を警告しました。さらに、虫歯予防効果があることからガムなどによく使われる甘味料のキシリトールの摂取量が多いと、心臓発作や脳卒中などの心血管疾患のリスクが増加することが、新しい研究で判明しました。

Xylitol is prothrombotic and associated with cardiovascular risk | European Heart Journal | Oxford Academic

https://academic.oup.com/eurheartj/advance-article-abstract/doi/10.1093/eurheartj/ehae244/7683453

Cleveland clinic-led study links sugar substi | EurekAlert!

https://www.eurekalert.org/news-releases/1046958

Low-calorie sweetener xylitol linked to heart attack and stroke, study says | CNN

https://edition.cnn.com/2024/06/06/health/xylitol-heart-attack-stroke-wellness/index.html

This Extremely Popular Artificial Sweetener Is Linked to Blood Clots, Study Shows

https://www.inverse.com/health/xylitol-artificial-sweetener-blood-clot-risks

キシリトールは、アスパルテームをはじめとする人工甘味料とは異なり、樫の木などから抽出される天然甘味料です。また、砂糖に比べて低カロリーで虫歯の原因にもならないことから、健康的な甘味料として砂糖不使用の菓子や歯磨き粉などに広く使用されています。

クリーブランド・クリニックのラーナー研究所の心臓血管・代謝科学部門長であるスタンリー・ヘイゼン氏らの研究チームは、2024年6月6日にEuropean Heart Journalで発表した研究で、血中キシリトール濃度と心血管イベント(MACE)の関係を調べました。

その結果、キシリトールの摂取量が最も多いグループに属する人は、脳や心臓の血管に関する疾患の発生率がほぼ2倍になることがわかりました。



ヘイゼン氏は「キシリトールが入った一般的な飲料を健康なボランティアに飲んでもらったところ、キシリトールの血中濃度が1000倍に上昇しました。砂糖を摂取すると血糖値が10〜20%上昇することがありますが、1000倍にはなりません。かつて、人類はこれほど高い濃度でキシリトールを摂取していませんでしたが、キシリトールを砂糖の代わりに使った加工食品を食べるようになったここ数十年は例外です」と話しました。

ヘイゼン氏が率いる研究チームは2023年に、キシリトールと同じ糖アルコールであるエリスリトールが、脳卒中のリスクを高めることを突き止めています。

カロリーゼロの人工甘味料「エリスリトール」が血液の粘性を増し脳卒中のリスクを高めることが判明 - GIGAZINE



今回の研究で、ヘイゼン氏らはアメリカとヨーロッパの成人3300人以上を対象に、血液サンプルに含まれるキシリトールの濃度を測定しつつ、3年間追跡して心血管イベントリスクの発生率を調べました。

その結果、血中キシリトール濃度が最も高い参加者の3分の1は、心血管疾患を発症する可能性が高いことが突き止められました。

この発見を検証するため、研究チームが追加の実験を行ったところ、キシリトールが血小板を凝固させて血栓症のリスクを高めることがわかりました。また、キシリトール入り飲料とブドウ糖入り飲料を摂取した人の血小板の機能を調べた結果、キシリトールを摂取した直後に凝固作用が大幅に上昇した一方、ブドウ糖では上昇しないことも確かめられました。



ヘイゼン氏は、キシリトールの安全性を調べるためのさらなる研究が必要とした上で、「キシリトールが入った歯磨き粉を捨てろというわけではありませんが、キシリトールを多く含む製品を摂取すると血栓にまつわる疾患のリスクが高まることは知っておくべきです」と話しました。