ダルビッシュの“姿勢”に感銘「すごいな」 WBCで侍Jのお世話役…内側から見た強さ
WBCで侍Jのコーディネーターを務めたルーク篠田さんに鈴木優氏がインタビュー
オリックスと巨人で投手としてプレーし、2022年限りで現役を退いた鈴木優氏は現在、「パ・リーグ インサイト」のスタッフを務め、米国に留学中。今回は、鈴木氏の中学時代からの親友で、昨年のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で野球日本代表「侍ジャパン」のコーディネーターを務めたルーク篠田さんに、改めて大会を振り返ってもらった。
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鈴木優(以下、鈴木):早いものでWBCから丸1年経ったね。まずはあらためてルークのWBCでの役割を教えてください。
ルーク篠田(以下、ルーク):この1年でいろいろな人と話してきたけど、やっぱり「ヌートバー選手の通訳」というイメージを強く持たれていて。実際の役職は「代表チームコーディネーター」だけど、そのメインの仕事はカメラに映らないので、円陣とかで通訳している場面がテレビに映っている分、通訳だと勘違いされがちですね。
鈴木:確かに、ヒーローインタビューとかニュースに取り上げられる場面でルークがたくさん映っていたよ。代表チームコーディネーターとしてはどんな仕事をしていたの?
ルーク:例えば、選手のバスがしっかり来ているかの確認をしたり、ホテルとの連携をチェックしたり。同時にグラウンドの方も確認するといったことの繰り返しだったね。NPB球団にいるマネジャーが一番近いかなと思う。選手の移動と宿泊の手配、メディアとの調整は表に映らないからね。今回はヌートバー選手がいたから、日本メディアに対しては通訳も必要で。その場に応じて、帯同していたスタッフのうちの誰かが通訳を担当していた。
鈴木:代表チームコーディネーターとヌートバー選手の通訳をするうえで、秋山(翔吾)選手の通訳をしていたキャリアが役に立った場面はある?
ルーク:もちろんあったね。メジャーでの選手の1日のルーティンを大まかには把握できていたから、球場入りしたらこれをするとか、食事はこのタイミングでとるとか、このタイミングだったら自分も他の仕事ができるなとか。
ヌートバーの通訳としても活躍「自分が円陣をやると思ってなかった」
鈴木:なるほど。MLBの中身も知っていて、通訳の業務もできるルークは適任だったし、だからこそルークにも注目が集まったんだね。
ルーク:ヌートバー選手があんなに注目されたからだよ。自分が円陣をやると思ってなかった(笑)。
鈴木:言葉のチョイスが絶妙で、いい円陣だったよね。例えば、ヌートバー選手の言葉をミーティングで訳す時に、試合前の気持ちが高まるような言葉を選ぶとか、そのあたり意識していたことは?
ルーク:言葉によって、直訳したらニュアンスが変わってしまう時があるから、もちろん本当の意味を踏まえた上で、ひとつの言葉にまとめるより3つの言葉で表現することもある。その都度、1〜2文くらい聞いて「こういう意味だな」とまとめるイメージ。
鈴木:大会前にインタビューした時は、注目選手として伊藤大海投手と戸郷翔征投手を挙げていたけど、実際の2人の印象は?
ルーク:戸郷投手はアメリカ戦で投げて、やっぱりアメリカの選手に対してフォークは効いていたし、何よりあんなに淡々と投げられるんだと。
鈴木:今回のWBCで見えたのは、日本人選手のメンタルの強さというか、ここ一番で発揮する能力だったよね。
ルーク:もしかしたら心臓バクバクしていたかもしれないけど、淡々と投げて抑えて、涼しい顔をしていたのが本当にすごいなと思った。その反面、伊藤大海投手は感情を表に出して思いきり投げていた。タイプがそれぞれ違う分、アメリカ代表としても嫌だったと思う。
侍Jにあった「チームの勝利を最優先する姿勢」って
鈴木:伊藤投手は普段先発だけど、WBCではイニング途中で投げてもしっかり抑えていて、近くで見ていてどうだった?
ルーク:自分の投げやすさよりチームの勝利を最優先する姿勢は日本チーム全体的にあって、それが強さだったなと思う。ダルさん(ダルビッシュ有投手)も普段は先発なのに、当然のように試合中にブルペンに行っていたのがすごいなって。
鈴木:みんな良かったから選ぶのは難しいと思うけど、他に印象的だった選手は?
ルーク:阪神・湯浅(京己)投手。真っすぐの成分ではメジャーの選手以上のデータが出ていたり、ほかにもアメリカで通用するような数字が出ていたり。年齢的には若手だからこれからも楽しみだし、先発でもおもしろいと思うな。
鈴木:昨年オフの今永(昇太)さんのポスティングもそうだけど、メジャーのスカウトがWBCを見たことで日本のピッチャーの評価も上がっていそうだよね。
ルーク:NPB全体のレベルも上がって、どの球団にもアメリカで通用するようなピッチャーがいる可能性が大いにあるから、各球団網羅しなくてはいけなくなったと思う。ある球団の特定のピッチャーひとりを見るためだけに日本に来るのではなくてね。
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後編では、山本由伸投手(ドジャース)と佐々木朗希投手(ロッテ)による村上宗隆内野手(ヤクルト)へのウォーターシャワーの裏話や、現在のルークさんの仕事について伝える。(「パ・リーグ インサイト」鈴木優)
(記事提供:パ・リーグ インサイト)