現地時間の2024年5月21日、Microsoftが教育分野におけるAIの可能性を現実のものとしてイノベーションへのアクセスを拡大するために、非営利の教育団体であるカーンアカデミーと新しいパートナーシップを締結したことを発表しました。このパートナーシップの一環として、Microsoftはアメリカのすべての教育者に「Khanmigo for Teachers」を無料で提供すると説明しています。

Khanmigo For Teachers Now 100% Free for All U.S. Teachers, Thanks to Microsoft Support - Khan Academy Blog

https://blog.khanacademy.org/khanmigo-for-teachers-is-free-for-all-us-teachers-thanks-to-support-from-microsoft/



Khan Academy and Microsoft partner to expand access to AI tools that personalize teaching and help make learning fun - Source

https://news.microsoft.com/source/features/ai/khan-academy-and-microsoft-partner-to-expand-access-to-ai-tools/

Enhancing the future of education with Khan Academy | Microsoft EDU

https://educationblog.microsoft.com/en-us/2024/05/enhancing-the-future-of-education-with-khan-academy

Microsoft and Khan Academy partner to show how AI can transform education | VentureBeat

https://venturebeat.com/ai/microsoft-to-enhance-khan-academys-ai-bot-with-azure-openai-service-develop-phi-3-math-model/

Microsoft teams up with Khan Academy to make the Khanmigo AI teaching assistant free

https://www.engadget.com/microsoft-teams-up-with-khan-academy-to-make-the-khanmigo-ai-teaching-assistant-free-153008848.html

これまでに6万5000人以上の学生が利用してきた実績のあるAI家庭教師が「Khanmigo」です。Khanmigoは学生や保護者、教育者が使用できる学習向けのAIで、保護者が子どもの宿題を手伝うために使用したり、教師が生徒向けの学習計画を組み立てたりするために使用することができるというものです。ただし、使用するには月額4ドル(約630円)が必要でした。

このKhanmigoの教師向けバージョンとなる「Khanmigo for Teachers」を、2024年5月21日からアメリカのすべての教育者に無料で提供するとMicrosoftとカーンアカデミーが発表しました。「Khanmigo for Teachers」は無料のオンライン授業などを多数取り扱うカーンアカデミーのコンテンツを活用することで、教師の授業計画構築を手助けしたり、指導の助けを行ったりすることができるというもの。生徒が授業に興味関心を示すようになるためのフック、生徒のパフォーマンスに関する洞察、推奨される課題などを作成するためのサポートを提供してくれるそうです。

「Khanmigo for Teachers」を利用することで、教師は授業の準備作業に費やす時間を大幅に削減することが可能となります。過去の研究では「Khanmigo for Teachers」を使うことで、「授業の準備作業」の負荷を50%以上削減できることが示されています。そのため、Microsoftおよびカーンアカデミーは「我々の新しいパートナーシップの目標は、教師に『生徒の指導』という本当に重要なことに集中するための時間を提供することにあります」と述べました。

なお、「Khanmigo for Teachers」はMicrosoftのAzure OpenAI Serviceを利用するため、OpenAIのGPT-4o、GPT-4、Whisper、DALL・E 3といったAIモデルにアクセスすることができるということを意味します。これだけでなく他の分野においても大幅なコスト節約が可能となる模様。

カーンアカデミーの創設者であるサル・カーン氏は、「教師という職業は超過重労働です」と述べ、教師は低賃金でありながら過剰な仕事量を抱えていると指摘。教師がAIを使用するようになれば、「教育をより持続可能なものにすることができる」とカーン氏は主張しています。

Meet Khanmigo: Khan Academy's AI-powered teaching assistant & tutor



これに加えて、Microsoftは小規模言語モデルの「Phi-3」を用い、カーンアカデミーの数学指導用コンテンツを改善することを支援すると発表しました。Phi-3を利用することで、チャットボットのMicrosoft Copilotや教育機関・学生向けの実践的な学習ツールを提供するMicrosoft Teams for Educationで使えるレッスンを増やしながら、より高品質な学習コンテンツを生み出すことに協力していくそうです。

小規模言語モデルのPhi-3を用いる理由について、テクノロジーメディアのVentureBeatは「数学を教えるという1点だけに特化しているため、小規模言語モデルのPhi-3を利用することは理にかなっています。トレーニングデータに主題以外の事柄が混ざっている場合、学習プロセスを妨げる幻覚や誤った情報が発生しやすくなりますが、今回の使用事例はこれには相当しません」と記しています。

さらに、Microsoftは複雑な計算用のPythonコードを呼び出すためにPhi-3のバージョンを微調整し、Accelerate LearningとUpchieveからのデータに基づいてAIモデルをトレーニングするというユースケースに最適化しています。ガイド付きチュートリアルを使って学生ユーザーの学習を支援したり、カスタマイズされた概要を提供しながら特定のレベルや数学のトピック向けの問題を生成したりすることができるAIが誕生したそうです。

Microsoftの教育製品担当ヴァイスプレジデントであるDeidre Quarnstrom氏は、「カーンアカデミーと共に、これらの重要な課題に取り組むことができて大変うれしく思っています。このモデルは、Khanmigoのような製品におけるAIを活用した数学の個別指導のアクセシビリティ、信頼性、エクスペリエンスを向上させる可能性を秘めています」と語りました。