世界の名建築を訪ねて。圧倒的売れっ子建築家ビヤルケ・インゲルス設計の高層集合住宅「イコン集合住宅タワー(Iqon Residential Tower)」/エクアドル・キト
世界中の建築を訪問してきた建築ジャーナリスト淵上正幸が、世界最先端の建築を紹介する連載16回目。今回は、エクアドルの首都・キトにある高層集合住宅「イコン集合住宅タワー(Iqon Residential Tower)」(設計:ビヤルケ・インゲルス)を紹介する。
「ウーブン・シティ」などを手掛ける世界的建築家・ビヤルケ・インゲルス設計「イコン集合住宅タワー」
ビヤルケ・インゲルスといえば、ニューヨークをベースに活躍する建築家で、現今の世界建築分野では圧倒的なパワーでデザイン活動をしているスター・アーキテクトとして知られている。
その話題の建築家ビヤルケ・インゲルスがデザインした「イコン集合住宅タワー」(Iqon Residential Tower)が、南米エクアドルの首都キトに完成し、話題となっている。建物はキトのカロリーナ公園近くにできた高層ビルで、インゲルス初の南米建築となった。
カロリーナ公園とストリートを挟んで向かい合う32階建ての「イコン集合住宅タワー」は、ファサードがカスケード状になったバルコニーが特徴の建築だ。キトでは最高の高さを誇るタワーで、220戸のアパートメントを擁し、コマーシャル・スペースやオフィス群も併設されている。
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“生物多様性”を建築で表現した
高さ133mのスカイスクレーパー(摩天楼)は特異な外観で、キトのスカイラインに君臨している。ファサードは、現地の樹木や草花を植えこんだコンクリート・ボックス群で覆われている。こうしたデザインにより、キトの都市景観や有名なピチンチャ火山を展望することができる。また時間の経過に連れてグリーンが生育し、カロリーナ公園のグリーンと連携することを目指している。
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インゲルスが考えたのは、キトのアイコニックな地理学的な条件、すなわち、地球上で最もバイオ・ダイバーシティ(生物多様性)のある国のひとつであるということ。さらに人間や植物にとっては常にエネルギッシュな状態にある赤道直下の国という特徴を、垂直的な形態にデザインしたという。
インゲルスによれば、キトの全てのアイコニックな性質を引き出すことにより、個人住宅群の垂直的コミュニティである「イコン集合住宅」を生みだした。これはカロリーナ公園を建物の頂上まで伸び上がらせた増築というコンセプトをベースにして完成させた。
「イコン集合住宅」は、キトにあるふたつのランドマーク的集合住宅のひとつとしてデザインされたものである。もう一方は、 やはりアメリカのモシェ・サフディ・アーキテクツのデザインによる、彼らの南米初の集合住宅である「コーナー・ビルディング」(Qorner building)である。
インゲルスによる「イコン集合住宅」と、近隣にあるサフディ・アーキテクツの「コーナー・ビルディング」は、キトにおける現代建築ブームを反映しているようだ。ふたつの建物は、キトという都市が、建築、デザイン、イノベーションなどの試金石となり、変貌していくプロセスを表現しているとも言われている。
最初の住民が入居しはじめて、建物内部でのビジネスがスタートし、両ビル間での相互作用により、近隣界隈の繁栄のドライビング・フォース(推進力)になることが期待されている。
先端的なアーバン・ライフを享受できるぜいたくな集合住宅
「イコン集合住宅」は延床面積が55,000平米もあり、220戸のアパート、5店舗の商業施設、36社のオフィスが入居している巨大ビルディングである。住居は1ベッド・ルームから3ベッド・ルームがあり、その中にはキト市街のパノラミックな景観をエンジョイできる、ゴージャスな9戸のペントハウスが含まれている。
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住戸、オフィス、商業施設に加えて、建物にはパブリック・プラザ、ショップ、野菜ガーデンが併設された大きなグラウンド・フロア・プラザがある。その他のアメニティとしては屋上プール&テラス、スポーツ&スパ施設、ボウリング場、ミュージック・ルームなどがあり、同市における先端的なアーバン・ライフを享受できる施設でもある。
(淵上正幸)