J開幕戦のチケット。当選倍率は約14倍だった。画像:サッカーダイジェスト

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 実家のどこかに保管しているはずだけど、どうしても見つからない。5月15日になる度に、「どこにあるのだろう」と思うことが多かった。

 1993年5月15日のJリーグ開幕戦のチケットのことである。それを、今年に入ってとうとう見つけた。実家の荷物整理を強いられ、学生時代に過ごした自分の部屋を掃除していたらある本の間に挟まっていたのだ。劣化しないようそのような形で箪笥の隅っこのほうにしまっていたのだから、そう簡単に見つからないわけである(自分でしまったのだが)。

 とにかく、郵送での当選倍率が14倍だったプラチナチケットを久しぶりにじっくりと見る。ヴェルディ川崎時代の三浦知良選手、横浜マリノス時代の井原正巳選手の写真がプリントされており、チケットの左上には「1993 J.LEAGUE INAUGURAL MATCH」と記されていた。

 「INAUGURAL」とは「開会の」という意味で、その文字の下には「93 サントリーシリーズ開幕戦 ヴェルディ川崎vs横浜マリノス」とある。

 当時、大学生だった自分は非常にワクワクした気持ちで国立競技場にいた。日本サッカー界の新たな夜明けとなるゲームを生観戦できるわけだから、興奮して当然である。大観衆に囲まれる形でプレーする選手たちのことを羨ましいと、そんな想いも抱きながら観戦していた。
 
 試合は横浜が2-1で勝利。19分にV川崎のマイヤーに先制点を決められながらも、48分にエバートン、59分にはラモン・ディアスがゴールを挙げて逆転したのだ。5万9626人の観衆のひとりが自分だった事実を今は奇跡のように感じる。それほど貴重な体験で、あの場にいたことは生涯忘れないだろう。

 空前のサッカーブームを肌で感じたあの時から31年の時を経て、自分は仕事としてサッカーに携わっている。今や伝説と言われる開幕戦でJリーグに魅せられたからこそ、今の自分があるのかもしれない。

文●白鳥和洋(サッカーダイジェストTV編集長)

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