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●東京で一度は味わいたい「カツ丼」の名店とは? 珠玉の3軒をご紹介!

 全国津々浦々、どこに行っても美味しいカツ丼のお店が一軒はあるもの。もちろん、東京にも唯一無二の絶品カツ丼が味わえる名店が綺羅星のごとく存在しています。

 この記事では、卵でとじる一般的なカツ丼ではなく、独自の道を歩む「変わりカツ丼」のお店に注目。筆者が実際に食べて感動した3軒のお店をご紹介しましょう。

目黒“とんかつ御三家”の一角『かつ壱』のソースカツ丼

『かつ壱』の「カツ丼ソース味」

 まずご紹介するのは東京・目黒の『かつ壱』。JR目黒駅西口の目の前にあるビルの地下1階に店を構える『かつ壱』は、目黒のとんかつ御三家(他は「とんき」・「とんかつ大宝」)の一つに数えられる、都内でも指折りの名店です。

 ヒレやロースなどのとんかつ定食も人気ですが、ぜひ食べて欲しいのが「かつ丼 ソース味」です。名称どおり、卵とじではないソースタイプ。ロースかヒレで部位を選ぶことができますが、筆者はヒレカツ推しです。

 着席すると、すぐにお新香とカラシがのった小皿が登場します。ここのかつ丼は、ヒレかつとキャベツがてんこもりで、下のご飯が見えません。まずは小皿にヒレかつを移しましょう。食べやすくなります。

ご飯には海苔もはさまっている

 そのヒレカツ、衣はソースによるしっとり部分と、揚げ立てのサクサク感が共存。さらに、ソースが甘すぎずスッキリしていて、なんとなくダシ感もある。だから、卵や出汁に頼らずとも、このソースに浸ったカツだけで非常に翼ご飯になじむのです。

 そして、ヒレかつの断面は薄いピンク色で、ふんわり柔らか。口にすると豚の脂の旨味がパッと広がりますが、油っこさは微塵もなく、ただひたすら旨味が広がっていきます。

 丼のご飯も超優秀です。つやつやとしていて、口に入れるとふっくら。さらに山盛り千切りのキャベツも、ふわっとエアリーな見事な千切りです。

 ヒレかつをかじり、ご飯を食べ、キャベツでさっぱり。ヒレかつをかじり、ご飯を食べて、キャベツでさっぱり……。食べながら、「この時間が永遠に続けばいいのに」と思わず願ってしまう至極の旨さです。

●DATA

店名:かつ壱

住:東京都品川区上大崎2-25-5 久米ビル B1F

>>『かつ壱』のもっと詳しい記事はこちら
https://www.syokuraku-web.com/bar-restaurant/52602/

厚みの違う2種類のハーモニーを楽しむ「ワセカツ丼」

『奏す庵』の「ワセカツ丼」

 2016年、東京・早稲田の鶴巻町に誕生した『奏す庵』。現在は、日本橋に移転していますが、ここのソースカツ丼、一風変わっています。日本のカツ丼発祥当時のソースカツ丼をオマージュし、独自の工夫を凝らして作り上げた「ワセカツ丼」が味わえるのです。

 カツ丼のルーツは大正時代。早稲田鶴巻町にあった洋食屋『ヨーロッパ軒』のシェフが、ドイツ修業を終えて帰国後、「シュニッツェル」(カツレツ)をヒントにカツ丼を作ったのが始まりと言われています。今のような卵でとじたものではなく、シュニッツェル同様に極薄なタイプ。そしてソース味。

 その洋食屋さんは関東大震災をきっかけに福井県に移転し、ソースカツ丼として定着。つまり、実は日本のカツ丼のルーツは福井にあるわけで、その“早稲田生まれ・福井育ち”の「かつ丼」を、再び発祥の地・早稲田で復活させたのが『奏す庵』の「ワセカツ丼」というわけなのです。

「ワセカツ丼」(味噌汁・お新香付き)

「ワセカツ丼」は、揚げたてのカツがご飯を覆い隠すように積み上げられています。その数5枚。内訳は、薄いカツの中でも極薄の「うす」3枚と、ちょい厚めの「あつ」が2枚。どれも特製のソースに浸されて、しっとりしています。

こちらは「うす」のソースかつ

「うす」はびっくりするほど薄いです。まさにシュニッツェルのよう。目測で4~5mm程度。極めて細かなパン粉の衣をまとっています。

「あつ」のほうは1cm弱。こちらも同様の繊細なパン衣ですが、「うす」よりはややどっしりとした貫禄を感じます。

こちらは「あつ」のソースかつ

 この「うす」と「あつ」、たった数ミリの違いなのに、食感も味わいもまったく異なっているのが不思議。どちらも衣とお肉がピタッと一体化しています。だからフルーティなウスターソースがまんべんなく染みていて、どこから食べても美味しいのです。

 さらに、丼の下のご飯の表面にはその極上のソースダレが適度に染みており、お米だけでも極ウマ!

「ワセカツ丼」を食べ終わっても胃もたれ感はなし。意外とあっさりしていて、だからまたすぐに食べたくなってしまう。そんなカツ丼です。

●DATA

店名:奏す庵

住:東京都中央区日本橋室町2-1-1日本橋三井タワーB1タワーダイニング

>>『奏す庵』のもっと詳しい記事はこちら
https://www.syokuraku-web.com/bar-restaurant/14122/

死ぬまでに一度は食べたい新宿『王ろじ』の「とん丼」

『王ろじ』の「とん丼」

 最後にご紹介するのは、1921(大正10)年創業の老舗洋食屋『王ろじ』(新宿)の「とん丼」です。これは正確に言うと、カツ丼ではなく“とんかつカレー丼”です。

「とん丼」は、丼よりも少し小ぶりの丸いボウル風の器に入っていて、カレーライスの上に真ん丸いトンカツ半身が3切れ。さらにそのカツにソースがかかっています。

丸いカツは半分にカットされています

 衣は厚めで、ザクザクとした食感。こんがり香ばしい。中の肉は豚ロースを丸めたような感じになっていて、柔らかくてふわふわしています。自家製ソースは玉ネギやフルーツの優しい甘さにスパイスが効いています。卓上の辛子をつけて食べると、ピリリと刺激的で、甘さと辛さのバランスが最高です。

優しい味わいのカレールー[食楽web]

 続いてカレーライス。とろみがあって、昔懐かしい感じのカレールー。でもきちんとスパイスが効いています。辛すぎず、甘すぎず、実に優しい味わい。とんかつと一緒に食べるとさらに美味しくなります。

『王ろじ』では、付け合せにお新香を出してくれるのですが、これがまたとんかつカレー丼と相性抜群でしみじみ美味しい。ありそうでない、唯一無二の「とん丼」です。

●DATA

店名:王ろじ

住:東京都新宿区新宿3-17-21

>>『王ろじ』のもっと詳しい記事はこちら
https://www.syokuraku-web.com/column/22353/

(撮影・文◎土原亜子)