竹俣 紅連載:『紅色の左馬』第15回

スポルティーバとフジテレビの競馬中継番組『みんなのKEIBA』とのコラボ企画、竹俣紅アナウンサーの連載『紅色の左馬』。今回は、注目の3歳クラシックや、この春デビューした新人騎手の話をうかがいつつ、自身の新人時代のエピソードなども語ってもらった――。

 今年も春の3歳クラシックのシーズンとなりました。

『みんなのKEIBA』のMCになったばかりの1年前はまだ、3歳馬だけが出走できるレースであることはわかっていても、一生に一度しか立てないという大舞台の重みを、きちんと理解できていたわけではなかったなと思います。

 昨年とは違い今年は、クラシック本番に至るまでの前哨戦から見てきて、出走馬それぞれの特徴も知ったうえで、桜花賞や皐月賞を見ることができました。やはりその興奮度は、昨年とはまったく異なるものでしたね。

 また、1年前と比べると、我ながら自分の予想も成長したな、と思います。

 今年の皐月賞で、私はメイショウタバルが強いのではないかと思いつつも、最終的には予想から外すことにしました。というのも、メイショウタバルは前走(毎日杯1着)で重馬場のタフなレースを走ったあと、わずか中2週での皐月賞。加えて、初の長距離輸送という不安要素もあったからです。

 昨年の皐月賞を振り返ると、私の本命予想はベラジオオペラでした。4歳になった今年、大阪杯を勝ったことでもわかるようにトップレベルの力を持つ馬ですが、皐月賞では10着に終わりました。

 その理由を考えてみると、ベラジオオペラも、勝った前走のスプリングSが重馬場。それも、外から豪快な末脚を繰り出しての快勝でした。そういったハードなレースをこなしたあと、皐月賞には中3週で参戦。長距離輸送もあり、体力があまり残っていない状態だったのではないでしょうか。

 当時の私は、レース間隔やローテーションのことなどはよくわからず、皐月賞当日が雨予報だったことで、重馬場で勝っていたベラジオオペラを本命に選んだのですが......。今年は、そんな昨年の苦い経験を生かすことができました。

 私は最近予想をするうえで、ローテーションや馬体重の増減にも注目するようにしています。その視点を与えてくださったのは、井崎脩五郎先生です。

 馬のコンディションは常に100%ではない。詰まったレース間隔で連戦してきて疲れていたら、力を発揮しきれない。逆に、休養明けで馬体重をかなり増やして出走した前走で負けていたとしても、叩き2戦目になって、馬体重を減らして100%のコンディションで出走してくることもある――井崎先生の"弟子"として、そんなことにも注目した予想ができるようになったのは、ここ数カ月の成長です(笑)。

 1年前と比べて、違う見方ができるようになったという意味では、新人騎手の方々についても同じです。

 昨年の私は、それほど新人騎手のレースをチェックできていなかったのですが、今ではむしろ注目ポイントのひとつになっています。新人にもかかわらず、みなさんの活躍はすばらしいなと思っています。

 なかでも長浜鴻緒騎手は、人気薄の馬を上位に持ってこられる印象があります。新人ゆえ、斤量の有利はあるにしても、最終コーナーで動き出すタイミングのよさなどを見ていると、肝が据わっているように感じます。

 特に印象に残っているのは、4月7日に行なわれた中山5レースの3歳未勝利戦です。

 キューティクローム騎乗の長浜騎手は、先に抜け出した戸崎圭太騎手騎乗の1番人気サトノルチルをかわすと、後方から猛追してきた勝浦正樹騎手(2着のラルンエベール騎乗)と内田博幸騎手(3着のスターシャワー騎乗)との叩き合いを制して勝利。経験豊かなベテラン騎手と新人騎手による叩き合いは、見応えたっぷりでした。

 現地で観ていたということもあり、もしかすると、これが今年のマイベストレースになるかもしれません!

 新人騎手のみなさんは、なかなか勝てないとメンタル的に追い込まれてしまうことがあるものだと、いろんな方から話を聞きます。細江純子さんの初勝利の時の映像が番組で流れましたが、うれしいというより、ホッとした表情をしていたように思います。

 ただでさえ、勝負のプレッシャーがあるうえに、自分の馬券を買っている人がいるという、また違うプレッシャーもある。そんな厳しい世界に身を置く騎手のみなさんは本当にすごいなと尊敬します。

 私自身のアナウンサーデビューを振り返って思い出すのは、"ニュースでの初鳴き"の時です(アナウンサーの世界では、初めてテレビで喋ることを"初鳴き"と言います)。

 私は3本のニュースを読むことになっており、事前に下読みをして時間ピッタリに読み終わるように準備していたのですが......、スタッフの手違いで、3本目のニュース原稿が丸ごと違っていた、という事実が放送直前に発覚!

 本番2分前に原稿が入れ替わり、準備ができない状態。それでも生放送時間内にニュースを収めなくてはいけません。収まりきらなければ途中できられてしまいますし、時間が余ってもダメ。

 とてつもない不安のなか、私の"初鳴き"が始まりました。

 2本目のニュースを読んでいる時から、頭のなかは3本目のことでいっぱい。心臓バクバクです。なんとか平静を装って、自分の感覚を信じて読み進めた結果......きっちり時間どおりに終了!

 耳につけているキャスターインカムから「きれいに入りました、ありがとう!」というスタッフさんの声が聞こえて、やっと緊張から解き放たれて全身の力が抜けたのを覚えています。

 今でこそ、予定時刻が迫るなかで、急きょ入ってきた原稿を読むということはしばしばありますが、新人の時にきちんと時間内に収められたのは、将棋の"秒読み"を経験してきたなかで、自分でも気づかないうちに、秒感覚が養われていたからかもしれないですね。

 加えて、将棋をやっていた頃から、重要な対局中に何かとハプニングに見舞われることが多かったので、そういったことも生きているのかもしれません。人生、何がどう生きてくるかわからないものですね。

 そんな私も、新年度でフジテレビ入社4年目。今年4月からは担当する番組も変わって、忙しい日々を送っています。

 これまでお天気コーナーを担当していた『Live News イット!』では金曜日の情報キャスターを務めることとなって、月曜から水曜には新たにBSフジの『プライムニュース』のMCを任され、反町理キャスターとコンビを組むことになりました。

『イット!』でのガチャピンから、今度は反町さんとのコンビ。かなり個性が強く、多くの人に親しまれる、そんなパートナーと組むのが、私の担当する仕事の特徴のようです。競馬にたとえるなら、私は"フジテレビのクセ馬担当"といったところでしょうか。

 過去にはオルフェーヴルをはじめ、クセ馬を乗りこなしてきたことで知られる池添謙一騎手のことを思いながら、日々の仕事に取り組んでいます(笑)。

Profile
竹俣 紅(たけまた・べに)
1998年6月27日生まれ。東京都出身。2021年フジテレビ入社。
趣味:おいしいおそば屋さん巡り ウォーキング ガチャピン
モットー:元気に、地道に、前向きに

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