今週から6週連続開催となる春のGIシリーズ。その皮切りとして行なわれるのは、古馬の「長距離王決定戦」となるGI天皇賞・春(4月28日/京都・芝3200m)だ。

「長距離戦は実力が出やすい」と言われるだけあって、過去10年の勝ち馬はすべて4番人気以内。1番人気が3勝、2番人気が5勝、3番人気と4番人気が1勝ずつと、上位人気馬がしっかりと結果を残している。

 しかし一方で、2着、3着には伏兵馬が頻繁に突っ込んできており、波乱含みの一戦と言える。現に3連単ではしばしば好配当が生まれていて、日刊スポーツの奥田隼人記者もこう語る。

「昨年は2番人気のジャスティンパレスが勝利しましたが、3連単の配当は6万円超え。単勝1.7倍と断然の1番人気だったタイトルホルダーが、無念の競走中止になったことがその要因に挙げられますが、過去10年の結果を振り返ってみても、1番人気はわずか3勝。絶対的な信頼は置くまでには至りません。翻(ひるがえ)って、5番人気以下の馬が2着に5回、3着に4回も入っており、"ヒモ荒れ"要素の強いレースと言えます」

 また、昨年から本来の京都開催に戻ったことも、ひと筋縄ではいかないレースの一因になっていると、奥田記者は言う。

「新装された京都競馬場に舞台が戻って、"京都名物"となる3コーナーのトリッキーな坂を2度アップダウンするコース形態。以前とは芝の傾向も変わって、穴馬の台頭も十分に考えられるでしょう」

 そこで、奥田記者は今年のレースで大駆けが見込まれる穴馬候補を2頭ピックアップした。1頭目は、ゴールドプリンセス(牝4歳)。伝統のGIで重賞初挑戦を果たす。

「スタミナ豊富な4歳牝馬で、前走の3勝クラス・松籟S(2月25日/阪神・芝3000m)では一気の距離延長にもかかわらず、中団から力強く伸びて快勝。オープン入りを決めました。そのレースぶりから、ステイヤーとしての素質を秘める1頭と言えます。


天皇賞・春での一発が期待されるゴールドプリンセス。photo by Eiichi Yamane/AFLO

 今回、昇級初戦でいきなりGI挑戦というのはハードルが高いように思えますが、そこは長距離適性を見越してのもの。事実、管理する寺島良調教師は以前、『順調なら、菊花賞(京都・芝3000m)出走も考えていたほど』と言って、同馬の心肺機能の高さを評価していました。

 父ゴールドアクターは菊花賞3着馬で、天皇賞・春にも2度出走。GI有馬記念(中山・芝2500m)では8番人気で勝利して波乱を演出しました。そんな血統面も魅力です。

 中間の仕上がりは良好。寺島調教師も『前走は長い距離のレースでいい内容でした。夏場がいい馬で、毛ヅヤがよくなっています』と、体調アップをアピールしていました。まだまだ伸び盛りですし、前走の勢いそのままに、大舞台での一発があっても不思議ではありません」

 奥田記者が注目するもう1頭は、マテンロウレオ(牡5歳)だ。

「こちらも、隠れた長距離適性を持つ1頭。近走は中距離を中心に使われていますが、昨年の天皇賞・春5着という実績が光ります。

 昨年のレースは、連覇を狙うタイトルホルダーを筆頭に、前年の菊花賞を勝ったアスクビクターモア、同2着で有馬記念でも2着に入ったボルドグフーシュ、同3着でこのレースで戴冠を果たすジャスティンパレスら、メンバーがそろっていた一戦でした。

 そういった面々を相手に5着と健闘。前走のGI大阪杯(阪神・芝2000m)から距離が一気に6ハロンも延びたレースで見せた、そのパフォーマンスが大いに評価できます。

 管理する昆貢調教師も、『3200mは昨年経験しているし、今年のメンバーなら出番はあると思う』と静かに闘志を燃やしています。

 前走のGII日経賞(3月23日/中山・芝2500m)では、デビュー以来、初めて逃げの手を打って勝ち馬からコンマ2秒差の4着。ここ最近は結果を出せていませんでしたが、復調気配を見せています。

 そうした状況にあって、昆調教師は『前走は物見をしたり、向正面でハミが抜けたりと競馬になっていなかった』と振り返りながらも、『あの競馬が今回に生きてくれば』と新味に期待を寄せていました。

 続けて、『乗り方はノリさん(横山典弘騎手)に任せる』と昆調教師。鞍上を務める大ベテランの手綱さばきにも注目です」

 下馬評では、昨年の菊花賞を圧勝したドゥレッツァ(牡4歳)と、前哨戦のGII阪神大賞典(3月17日/阪神・芝3000m)で大差の勝利を飾ったテーオーロイヤル(牡6歳)の「2強」の争いとされる一戦。だが、京都競馬場での波乱の歴史を振り返れば、「2強」の間隙を突く伏兵の台頭も十分に考えられる。それが、ここに挙げた2頭であってもおかしくない。