「毎日楽しくない」、中年期に直面する「ミッドライフ・クライシス」 40〜60代アンケートで浮かんだ実態
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仕事や私生活が落ち着いた中年期に「毎日楽しくない」「自分の人生、このままでいいのか」などと思い悩む「ミッドライフ・クライシス(中年の危機)」。「第二の思春期」とも言われる40〜50代に、人が成熟していく過程で起こる自然な心の変化によって虚無感や焦燥感を抱くという、多くの人が直面する課題です。
中年期の皆さん、日常生活で「仕事も私生活も順調なのに、毎日楽しくない…」「自分の人生、このままでいいのか」と思い悩むことはありませんか? もしかしたらそれは、「中年の危機(ミッドライフ・クライシス)」かもしれません。
「テレ東プラス」は、中年期の男女を対象に、ミッドライフ・クライシスの実態をアンケート調査。乗り越えるためにはどうすればいいのか、専門家に聞きました。
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全国の40〜60代以上のYahoo! JAPANユーザー男女2000人にアンケートを実施(2024年3月19日)。「『自分は無価値だ』と思うなど、日々の生活の中で虚無感に襲われることはありますか?」との質問に、約半数である49.5%の人が「ある」と回答。
「ある」と答えた方を対象に「それはどんな時ですか?」と聞くと、「これから先の人生を考えた時」「仕事がうまくいかない時」などの声がある一方で、「常日頃思っている」「なんとなくいつも」など、きっかけがなくても虚無感に襲われるという声も多く寄せられました。
さらに「残りの人生を考えた時、『今の自分のままでいいのか』と焦燥感に駆られることはありますか?」との問いに、「ある」と答えた人は41.6%。「ある」と答えた人に「その気持ちをどうやって解決していますか?」と聞くと、「どうにもできないので、諦めた気持ちで過ごしている」など、解決できないという声が多くみられました。
「今楽しみにしていることや、行きたい場所はありますか?」という質問には、29.9%の人が「ない」と回答。「ない」と答えた人を対象に、「積極的に、楽しみや行きたい場所を探そうと思えますか?」と聞くと、「楽しみを見つける気力がない」「気力も体力も衰え、日々を平穏に生きるので精一杯」などの声が。
ミッドライフ・クライシスを乗り越え、生き生きとした人生を手に入れるためには、どうすればいいのでしょうか。アンケート結果を踏まえ、心理カウンセラーの下地まいこさんに話を伺いました。
――まずは、「ミッドライフ・クライシス」の定義について教えてください。
「ミッドライフ・クライシスを"人生の迷子状態"と表現する方もいます。人生の折り返し地点である中年期に、『自分の人生はこのままでいいのだろうか』と悩んだり、心理的危機感に襲われたりする状態のことを指し、多くの人が陥ると言われています。人生の残り時間が少なくなっていくことに焦燥感を覚え、睡眠や食事が不規則になるなど、うつ病や不安障害に発展する場合もあります。
早期に対応することが重要ですが、世間にミッドライフ・クライシスという言葉が浸透していないこともあり、自覚することは困難です。まずはミッドライフ・クライシスの概念を知ることが大切だと思います」
――ミッドライフ・クライシスに陥ってしまう原因は何でしょうか。
「さまざまな原因が複雑に絡み合っていますが、その一つが健康問題です。中年期は若い頃と比べて体力が落ち、病気を患う可能性も高くなってきます。他にも、ホルモンバランスが乱れたり、睡眠の質や食欲が低下したり、さまざまな変化が起こります。心と身体は繋がっているので、身体の変化に影響されて心が沈んでしまうのは、ある意味自然なことです。
また、キャリアの問題も。長年同じ仕事を続けてきた人は、定年までその仕事を続けていくのか、他の仕事に挑戦しないまま人生を終えても良いのかなど、葛藤する方もいます。
私生活では、子どもが自立したことで『自分の役割がなくなった』と感じ、空虚感や喪失感に襲われる"空の巣(からのす)症候群"に陥る方が多くいらっしゃいます。子育て中心の生活を送ってきた方が、親としての役割を卒業し、ふと自分自身を見つめた時に、この先の人生をどう生きていけばいいのか分からなくなってしまうのです。
他にも、親の介護問題に直面したり、パートナーとの関係性に悩んだり、未婚の方は独身を貫くか葛藤するなど、原因となる悩みはさまざまです。身近な人が亡くなることも増え、"人生は有限である"という事実を突きつけられ愕然としますが、若い頃のような気力がないため、絶望感に苛まれることも。こういった悩みを相談できる相手が周囲におらず、孤独感を感じている方も多いです」
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――若い頃はいろんなことにワクワクしていたのに、年齢を重ねるにつれて楽しみが見つけられなくなってしまう方も多いそうです。
「中年期は人生の停滞感を感じ、以前楽しかったことが楽しめない、何をしてもワクワクしないという方は多いと思います。
それを払拭したいという焦りから、ギャンブルやお酒、不倫、突然の退職やリスクのある起業など、突発的な行動をとってしまう方も少なくありません。そのような行動は、これまで築いてきた人生を崩壊させ、取り返しのつかない事態になりかねません。
しかしながら、停滞感を払拭するためには、何かしらの変化を起すことが必要です。そこで、リスクのある行動ではなく、日常生活の中で無理なくできることから始めてみてはいかがでしょうか。例えば、自分の人生を深く振り返ったり、未完成な目標にチャレンジしたり、少しでも興味のあることの情報収集や、リスクを抑えた副業など…そういった行動を起こしてみて、新しい自分と出会った時、ワクワク感や充実感に繋がるかもしれません。
――リスクのない新しいアクションを起こすことが大切なのですね。逆に、ミッドライフ・クライシスに陥りづらい人の特徴は?
「自分の人生を自分で選択している自覚を持っている人や、納得感を持って人生を歩んでいる方は、中年期以降も比較的楽しく、自然体の自分で歳を重ねることができると思います。
大切なのは、自分のことをしっかり理解し、いい意味で"諦める"こと。実は、元々"諦める"というのはポジティブな言葉で、その語源は、明らむ、"つまびらかにする、明らかにする"こと。
生きていると、執着心などを手放せずに苦しむこともありますが、諦めて手放すことで、新しい何かを得ることもできます。諦めることは、悪いことばかりではないのです。
難しいことかもしれませんが、弱さも含めて自分であると認め、自分自身と上手に付き合うこと。ありのままの自分を受け入れ、心の声に耳を傾ける習慣を持つことが、充実した人生を送る鍵になるでしょう」
――ミッドライフ・クライシスを乗り越えるための、身近な解決方法を教えてください。
「大前提として、ミッドライフ・クライシス世代にとって最重要なのは健康問題です。不安や悩みは目に見えないので、自分の心をコントロールすることは難しいですが、身体はコントロールできます。
運動をすると、"幸せホルモン"と呼ばれるセロトニンやエンドルフィンが分泌し、自然と活力が湧いてきます。まずは身体を動かし、食事内容に気をつけて、体重や血圧、血糖値のコントロールなどを意識しましょう。
健康問題がクリアになったら、自分の人生を再定義しましょう。自分にとって大切なことは何か、優先順位はどうなっているのか、紙に書くなどして自分の言葉で言語化すると良いです。
ミッドライフ・クライシスはネガティブなことではなく、自分と深く向き合うための転換期だと捉え、人生の後半戦を有意義にするためのきっかけだと考えましょう」
【下地まいこ (しもじ まいこ)】
「カウンセリング那覇オフィス」代表。
約15年間、養護教諭(保健室の先生)として学校現場で勤務する。仕事と育児の傍ら、高校時代から興味を持っていた心理学の勉強を開始し、国家資格である公認心理師資格を得る。養護教諭を退職したのち、県立高校でのスクールカウンセラー業務と並行し、個人事業(カウンセリング那覇オフィス)を立ち上げる。活動の1つである「KOKORO保健室」では、ミッドライフ・クライシス(中年期に訪れる心理的危機)に悩む女性向けにオンラインカウンセリングを行っている。沖縄県公認心理師協会所属。
(取材・文 / みやざわあさみ)
※この記事は、「テレ東プラス」とYahoo!ニュースによる共同連携企画です。
仕事や私生活が落ち着いた中年期に「毎日楽しくない」「自分の人生、このままでいいのか」などと思い悩む「ミッドライフ・クライシス(中年の危機)」。「第二の思春期」とも言われる40〜50代に、人が成熟していく過程で起こる自然な心の変化によって虚無感や焦燥感を抱くという、多くの人が直面する課題です。
中年期の皆さん、日常生活で「仕事も私生活も順調なのに、毎日楽しくない…」「自分の人生、このままでいいのか」と思い悩むことはありませんか? もしかしたらそれは、「中年の危機(ミッドライフ・クライシス)」かもしれません。
【動画】“ソロ活”を通して本当の自分を見つめ直す
約半数の人が日常生活の中で虚無感に襲われている
全国の40〜60代以上のYahoo! JAPANユーザー男女2000人にアンケートを実施(2024年3月19日)。「『自分は無価値だ』と思うなど、日々の生活の中で虚無感に襲われることはありますか?」との質問に、約半数である49.5%の人が「ある」と回答。
「ある」と答えた方を対象に「それはどんな時ですか?」と聞くと、「これから先の人生を考えた時」「仕事がうまくいかない時」などの声がある一方で、「常日頃思っている」「なんとなくいつも」など、きっかけがなくても虚無感に襲われるという声も多く寄せられました。
さらに「残りの人生を考えた時、『今の自分のままでいいのか』と焦燥感に駆られることはありますか?」との問いに、「ある」と答えた人は41.6%。「ある」と答えた人に「その気持ちをどうやって解決していますか?」と聞くと、「どうにもできないので、諦めた気持ちで過ごしている」など、解決できないという声が多くみられました。
「今楽しみにしていることや、行きたい場所はありますか?」という質問には、29.9%の人が「ない」と回答。「ない」と答えた人を対象に、「積極的に、楽しみや行きたい場所を探そうと思えますか?」と聞くと、「楽しみを見つける気力がない」「気力も体力も衰え、日々を平穏に生きるので精一杯」などの声が。
ミッドライフ・クライシスを乗り越え、生き生きとした人生を手に入れるためには、どうすればいいのでしょうか。アンケート結果を踏まえ、心理カウンセラーの下地まいこさんに話を伺いました。
ミッドライフ・クライシス=人生の迷子状態
――まずは、「ミッドライフ・クライシス」の定義について教えてください。
「ミッドライフ・クライシスを"人生の迷子状態"と表現する方もいます。人生の折り返し地点である中年期に、『自分の人生はこのままでいいのだろうか』と悩んだり、心理的危機感に襲われたりする状態のことを指し、多くの人が陥ると言われています。人生の残り時間が少なくなっていくことに焦燥感を覚え、睡眠や食事が不規則になるなど、うつ病や不安障害に発展する場合もあります。
早期に対応することが重要ですが、世間にミッドライフ・クライシスという言葉が浸透していないこともあり、自覚することは困難です。まずはミッドライフ・クライシスの概念を知ることが大切だと思います」
――ミッドライフ・クライシスに陥ってしまう原因は何でしょうか。
「さまざまな原因が複雑に絡み合っていますが、その一つが健康問題です。中年期は若い頃と比べて体力が落ち、病気を患う可能性も高くなってきます。他にも、ホルモンバランスが乱れたり、睡眠の質や食欲が低下したり、さまざまな変化が起こります。心と身体は繋がっているので、身体の変化に影響されて心が沈んでしまうのは、ある意味自然なことです。
また、キャリアの問題も。長年同じ仕事を続けてきた人は、定年までその仕事を続けていくのか、他の仕事に挑戦しないまま人生を終えても良いのかなど、葛藤する方もいます。
私生活では、子どもが自立したことで『自分の役割がなくなった』と感じ、空虚感や喪失感に襲われる"空の巣(からのす)症候群"に陥る方が多くいらっしゃいます。子育て中心の生活を送ってきた方が、親としての役割を卒業し、ふと自分自身を見つめた時に、この先の人生をどう生きていけばいいのか分からなくなってしまうのです。
他にも、親の介護問題に直面したり、パートナーとの関係性に悩んだり、未婚の方は独身を貫くか葛藤するなど、原因となる悩みはさまざまです。身近な人が亡くなることも増え、"人生は有限である"という事実を突きつけられ愕然としますが、若い頃のような気力がないため、絶望感に苛まれることも。こういった悩みを相談できる相手が周囲におらず、孤独感を感じている方も多いです」
画像PIXTA
突発的な行動は人生を崩壊させる可能性も
――若い頃はいろんなことにワクワクしていたのに、年齢を重ねるにつれて楽しみが見つけられなくなってしまう方も多いそうです。
「中年期は人生の停滞感を感じ、以前楽しかったことが楽しめない、何をしてもワクワクしないという方は多いと思います。
それを払拭したいという焦りから、ギャンブルやお酒、不倫、突然の退職やリスクのある起業など、突発的な行動をとってしまう方も少なくありません。そのような行動は、これまで築いてきた人生を崩壊させ、取り返しのつかない事態になりかねません。
しかしながら、停滞感を払拭するためには、何かしらの変化を起すことが必要です。そこで、リスクのある行動ではなく、日常生活の中で無理なくできることから始めてみてはいかがでしょうか。例えば、自分の人生を深く振り返ったり、未完成な目標にチャレンジしたり、少しでも興味のあることの情報収集や、リスクを抑えた副業など…そういった行動を起こしてみて、新しい自分と出会った時、ワクワク感や充実感に繋がるかもしれません。
いい意味で「諦める」 ミッドライフ・クライシスに陥らないために
――リスクのない新しいアクションを起こすことが大切なのですね。逆に、ミッドライフ・クライシスに陥りづらい人の特徴は?
「自分の人生を自分で選択している自覚を持っている人や、納得感を持って人生を歩んでいる方は、中年期以降も比較的楽しく、自然体の自分で歳を重ねることができると思います。
大切なのは、自分のことをしっかり理解し、いい意味で"諦める"こと。実は、元々"諦める"というのはポジティブな言葉で、その語源は、明らむ、"つまびらかにする、明らかにする"こと。
生きていると、執着心などを手放せずに苦しむこともありますが、諦めて手放すことで、新しい何かを得ることもできます。諦めることは、悪いことばかりではないのです。
難しいことかもしれませんが、弱さも含めて自分であると認め、自分自身と上手に付き合うこと。ありのままの自分を受け入れ、心の声に耳を傾ける習慣を持つことが、充実した人生を送る鍵になるでしょう」
――ミッドライフ・クライシスを乗り越えるための、身近な解決方法を教えてください。
「大前提として、ミッドライフ・クライシス世代にとって最重要なのは健康問題です。不安や悩みは目に見えないので、自分の心をコントロールすることは難しいですが、身体はコントロールできます。
運動をすると、"幸せホルモン"と呼ばれるセロトニンやエンドルフィンが分泌し、自然と活力が湧いてきます。まずは身体を動かし、食事内容に気をつけて、体重や血圧、血糖値のコントロールなどを意識しましょう。
健康問題がクリアになったら、自分の人生を再定義しましょう。自分にとって大切なことは何か、優先順位はどうなっているのか、紙に書くなどして自分の言葉で言語化すると良いです。
ミッドライフ・クライシスはネガティブなことではなく、自分と深く向き合うための転換期だと捉え、人生の後半戦を有意義にするためのきっかけだと考えましょう」
【下地まいこ (しもじ まいこ)】
「カウンセリング那覇オフィス」代表。
約15年間、養護教諭(保健室の先生)として学校現場で勤務する。仕事と育児の傍ら、高校時代から興味を持っていた心理学の勉強を開始し、国家資格である公認心理師資格を得る。養護教諭を退職したのち、県立高校でのスクールカウンセラー業務と並行し、個人事業(カウンセリング那覇オフィス)を立ち上げる。活動の1つである「KOKORO保健室」では、ミッドライフ・クライシス(中年期に訪れる心理的危機)に悩む女性向けにオンラインカウンセリングを行っている。沖縄県公認心理師協会所属。
(取材・文 / みやざわあさみ)
※この記事は、「テレ東プラス」とYahoo!ニュースによる共同連携企画です。