ヒョンデの最新「ハイパフォーマンスモデル」6月5日発売! 見た目も中身もスゴい「IONIQ 5N」とは?
これは新たな世界! ヒョンデ「IONIQ 5N」とは
2024年4月25日にヒョンデは新型「IONIQ 5N」を同年6月5日から発売すると発表しました。
なお先行して4月25日からファーストエディションの受付が開始しています。
IONIQ 5Nとは、どのようなクルマなのでしょうか。
2022年に12年ぶりに日本再参入を行なったヒョンデ。「BEV/FCEVのみ」、「オンライン販売のみ」と戦略の中、日本での累計販売台数は1000台弱。
決して台数は多いとは言えませんが、現在はマーケットシェア拡大よりもブランド認知に重きを置いている状況と言えるでしょう。
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そんな中、新たな仲間が加わりました。それが今回紹介するIONIQ 5Nになります。
ちなみに「N」とはヒョンデのスポーツブランドで、ネーミングは開発拠の韓国の「ナムヤン(韓国)」と開発テスト舞台「ニュルブルクリンク(ドイツ)」が由来です。
モータースポーツで培った技術/経験をもとに量産車にフィードバックする姿勢やレーシングカーを頂点にムービングラボ(走れる実験車両)、N、Nライン、ノーマルと言ったピラミッドを設けている点などは、TOYOTA GAZOO Racingと非常によく似ている構成となります。
2015年の発足以来、内燃機関のモデルで展開を行なってきましたが、IONIQ5Nは初の電気自動車ベースとなるNです。
一番の特徴は「ハイパフォーマンスBEV」である事。NのトップであるJoon Park氏は「世の中にはハイパワーBEVはたくさんありますが、ハイパフォーマンスBEVはと言うとどうでしょうか。今回、我々はそこに挑戦を行ないました」と語っています。
その実力は世界のカーアワード受賞が物語っていますが、日本の道ではどうでしょうか。
今回は一般公道に加えとサーキット(袖ヶ浦フォレストレースウェイ)での全開走行を行なってきたので、紹介します。
エクステリアはベースとなるIONIQ5に加えて、専用デザインのバンパー(フロント/リア)、デュフューザー(リア)、サイドスカート、そして275/30R21サイズのピレリP-ZERO+専用鍛造アルミホイールなどをプラス。
個人的には1980年代日本で流行った「ホットハッチ」に通じるデザインで、むしろノーマルよりも万人受けしそうな整った造形に感じます。
インテリアはブラックのモノトーンのコーディネイトに、専用のステアリングやスポーツシート、センターコンソール(ニーパッド付)などをプラス。
専用デザインのメーター表示やモードセレクトスイッチなど、細部まで抜かりなしです。
パワートレインは前後にモーターを搭載したツインモーターAWDで、フロントは95ps/255Nm→238ps/370Nm、リア210ps/350Nm→412ps/400Nmと大幅に出力アップ。
一定時間のみ最大出力を40psアップさせるブーストモード(NGB:ステアリング右上のオレンジのスイッチ)も用意されています。
バッテリーは第3世代から第4世代に進化したリチウムイオンで容量は84kWh。驚きはコンペティションユースも想定した冷却性能で、サーキットで連続走行を行なっても安定したバッテリー温度を保ち、出力ダウンも最小限だと自信を見せます。
シャシ周りはIONIQ5がベースと言いつつもキモとなる部分、車体はスポット溶接+構造用接着剤+補剛パーツの追加で剛性アップ。
専用サスペンションはセットアップ変更やローダウンに加えて、フロントはマクファーソン・デュアル(ノーマルはマクファーソン・シングル)を採用。EPSはギア比変更+出力増大。更に高性能ブレーキシステムや専用制御系など、変更内容は多岐に渡ります。
特に制御系はてんこ盛りで、前後駆動配分を任意に設定可能な「Nトルクディストリビューション」、ドリフト走行をサポートする「Nドリフトオプティマイザー」、0-100km/h加速3.4秒を誰でも可能にする「Nローンチコントロール」、最大0.6Gの減速が可能な回生ブレーキ「Nブレーキリジェン」などを用意。
更にBEVなのにICE車を運転しているかのような走行感覚(3つのサウンドを選択可能)を味わえる「Nアクティブサウンド+」、シフトチェンジをシミュレートした「N eシフト」など、クルマ好きを唸らすような演出もバッチリ。
乗るとさらにその凄さが分かる!? IONIQ5Nの魅力とは
まずは一般公道からです。
パワートレインは応答性の高さは言うまでもありませんが、加速の立ち上がりは意外と緩やかでジェントルで微細なコントロールもしやすい印象。
アクセルを全開にすると、ハイパワーBEV特有の脳天揺さぶる怒涛の加速と思いきや、実際は「加速感は少ないが速い」と言ったイメージです。
と言っても、パワフルなのは間違いなく、日常ではドライブモードはノーマルではなくECOで事足りてしまうでしょう。
通常は僅かなインバーター音が聞こえるだけですが、NアクティブサウンドをONにすると車内外のスピーカーから音が。Ignitionは高出力ターボのような野太いサウンド、Evolutionはより音の粒が揃った洗練されたフォーミュラEのようなサウンド、そしてSupersonicは雑味が無いジェット機のようなサウンド。
どれもワクワク感を高めてくれますが、個人的なお勧めは未来の乗り物を実感できるEvolutionがおススメです。
フットワークも同様の印象で操舵応答は高いがクルマの動きは穏やか、コーナリングはロールは少なめですが一連の流れは滑らかとスポーツモデルというよりスポーティモデルかなと言った印象。
乗り心地は偏平タイヤの影響からノーマルのIONIQ5よりコツコツ感はあるものの、むしろ足の動かし方やショックの吸収のさせ方などは、ノーマルのIONIQ5よりお上品でばね上のフラット感も高いレベルだと感じました。
この辺りはボディ剛性を始めとする基本素性のレベルアップが、過渡な領域の質感アップにも効いているのでしょう。
つまり、普通に乗っている限りは“いい意味”でハイパフォーマンスBEVを感じさせない走行フィールと言えるでしょう。
続いてサーキット走行です。
今回はクローズドと言う事でESPはOFFでの走行です。実は試乗前は「いくらハイパフォーマンスと言っても、車両重量は2.2トンと超重量級。さすがに厳しいのでは?」と心配しましたが、それは単なる取り越し苦労でした。
いきなり結論になりますが、IONIQ5 Nは現時点で「世界で一番走りが楽しいBEV」と言えます。
その中でも最も驚いたのは、「物理の法則を超えた運動性能」です。前後オーバーハングが短く、バッテリーを床下に搭載しているので低重心ですが、重さは2.2トン。
「シッカリ曲がれるのか?」、「限界を超えたら制御できるのか?」と思いましたが、走り始めると「ちょっと重いクルマかな?」と言うくらい身軽な身のこなしに驚きます。感覚的には1.6〜1.7トンくらいのクルマに乗っているような操縦感覚です。
もう少し具体的に説明すると、ターンインでは重さを感じることなくノーズがインをスッと向く回頭性の高さ、旋回時は腰を中心に曲がる感覚と路面に張り付くような安定感を持ちながらも、アクセルのコントロール如何でクルマの向きをコントロールできる自在性の高さ。
そしてトラクションを掛けるとリアタイヤに荷重をグッと乗せながら蹴り出す感覚が実感できました。
この感覚はレクサス「RZ」に乗った時とよく似ていると思いましたが、クルマからの“主張”は段違いです。
今回の袖ヶ浦のコースで言えば、高速の2コーナーやヘアピンの9コーナーなどは「もう少しグリップあったほうが安心だよね」と感じる場面もありましたが、それ以外のコーナーはよほど無茶をしない限りは、ドライバーの操作次第でアンダーもオーバーにもできる自在性が備えられていました。
ただ、流し過ぎてしまうと2.2トンが故にリカバリーが難しいため、注意が必要です。
とは言え、個人的には「より後輪寄りのトルク配分」、「より曲がりたがり」、「より分かりやすい」制御の三菱ランサーエボリューションXのような走りだと思います。
ちなみにサーキットでも足がよく動いている印象でしたが、それがゆえにクルマの動きは全体的に大きめ、個人的にはもう少し空力を効かせてボディの無駄な動きを抑えたほうが安心感はより高まるかなと思う部分も。
パワートレインはアクセル全開時は「はやっ」と感じましたが、それよりも驚いたのは操作に対して緻密なアクセル操作が可能な事です。
パワフルだけどシームレスでコントローラブル、ズバリ制御可能な650psです。更にストレートではNGBを試してみましたが、二段階ロケット噴射のようなドッカンターボのような加速感は、どこか懐かさも。
サーキット走行ではNアクティブサウンドのIgnitionを選択。加えてN eシフトも試してみましたが、パドル操作時のシフト感、アップシフトの際のバブリング、ダウンシフト時のブリッピング制御はお見事の一言。
その制御も本物さながらで、本当にBEVに乗っていることを忘れるくらいでした。
N eシフトは面白さやワクワクと言ったエンターテイメント要素のためのアイテムと思っていましたが、実際に使って走らせてみると運転のリズムが取りやすい事に気づきました。つまり、音と振動は運転する上で大事な要素だったと再確認。
最後に水を巻いた広場を用いてドリフトを体験。
ここではNドリフトオプティマイザーを試します。前後駆動比率と車両制御を最適化することで「誰でもドリフト走行を楽しめる」と言うのがウリです。
確かに普通に試すよりもドリフトのキッカケつくりや定常円旋回時しやすさなどは「なるほど?」と感心しましたが、あくまでもサポートのみなのでそこから先はドライバーの腕次第。
ただ、21インチタイヤを惜しげもなく使える勇気が必要かもしれません。
そろそろ結論に行きましょう。IONIQ5 Nの「ハイパフォーマンスBEV」の名に偽りはありません。
それは実際の性能はもちろんですが、それよりもサーキット走行時にこのクルマがBEVである事を忘れしまうくらい運転に夢中になっていた事こそが重要な部分だと思っています。
つまり「楽しいクルマに乗ったら、パワートレインがBEVだった」と。
値段は900万円台と誰でも買える値段ではありませんが、個人的には内燃機関好きが最も受け入れやすいBEVの代表格かなと思っています。これは食わず嫌いはやめて、是非試してみて欲しい1台です。