日本では6割の夫婦が陥るといわれるセックスレス。「あんなかまってちゃんな男だとは思わなかった」と話すのは主婦の亜希さん(仮名・40代)です。運命を感じた王子様のような夫でしたが、産後にレスになってから、関係性が一気に悪化。DVとモラハラに耐えながらも、子どものためにと我慢を続けた日々を振り返っていただきました。

私が人を頼ることが苦手な理由

ドラマのような運命の出会いを経て、起業家として名を馳せる夫とゴールイン。都心のお庭がある低層マンションでの子育て生活は、周囲の人から憧れのまなざしが向けられる一方で、亜希さんは完全ワンオペ育児に。孤独との闘いのなか、夫婦関係はどんどん悪化。だれか相談できた人はいたのですか? と聞いてみました。

「父には伝えました。あまりに悲しくて泣きながら『殴られた、もう離婚したい』って話した気がします。けれど、そのときに言われたのが、『こっちはご祝儀とかいろいろお金かかってんだからもう少しがんばれよ』って。なんかズレてんですよね。うちの父って、私の幸せより、世間体のほうが大事な人。毒親とまでは言わないけれど、人間性に問題がある。だから子どものころから私はずっと自分でなんでも解決せざるを得ない人生でした。それで今でも人に頼ることが苦手なのかもって思います」

モラハラに拍車がかかっていく夫

子どもが生まれた年のお正月、向こうの実家に帰るかどうかで少しもめたそう。

「私の体も完全に戻っていなかったし、赤ちゃん連れで長時間の移動って不安すぎ。だから、『さすがに今は難しい』っていう結論を出したのが気に入らなかったみたいで、ネチネチ文句を言ってましたね」と亜希さん。

結局その年は、お正月明けに義理のお母さんがひとりで上京し、赤ちゃんの顔を見に来たのだそう。すると、夫がまたしても豹変。

「普段ぜんぜん育児しないくせに、すごい積極的にイクメン面してきたんです。義母の前で、いきなり『子どもの離乳食俺がつくるよ』とかいって、市販のレトルトを器に盛ってチンしただけなんですけれど、なぜかクレソンまで添えられている気合のいれよう。そういうちょっとしたことを普段からやってくれるだけでも違うのにな…と、心の中でモヤモヤしていると、義母に『あらぁ、パパがこれだけ台所仕事でなんでもやってくれると亜希さんはラクでいいわね。今の人たちの子育てって私の時代とぜんぜん違うわ』って言われてしまいました。普段の夫は子どもの食事なんて見向きもしないのに」

「普段はお義母さんの時代と変わらない悲惨な状況ですよ」って言いかけた言葉をグッと飲み込んだという亜希さん。夫の手前、本音や愚痴をこぼせるような状況ではとてもなかったそう。その場では波風を立てないように、亜希さんはずっとニコニコしながら我慢しました。

しかし、義母が帰ると夫は「俺、忙しいのに調子に乗ってこき使ってくるなよな」と吐き捨てるように嫌味をいってきました。

DVとモラハラに耐え、歯を食いしばる妻

モラハラと並行して、暴力も続きました。子どもが2歳を迎えた夏休み、初めて泊まりで近くの海へ旅行へ行くことになったときのこと。

「前日の夜に、トランクに子どものオムツとか着替え、私の分の衣類を詰めていたんですよ。そしたら仕事からとっくに帰ってきていてお風呂から上がってくつろいでいる夫に『俺の分の荷物も頼むね』って言われて『子どもじゃないんだから、自分の分は自分で詰めてよ』って言ったら、また無言でバーンって殴られました」

夫は、亜希さんが実家をあてにできないこと、仕事もやめてお金がないこと、子どももいるしすぐには出ていけないという状況を全部わかっててやっていたと亜希さん。

「悔しかったけれど、私が耐えればなんとかなる。このときもぐっと歯を食いしばって耐えました」

「お前はお金くれないじゃん!俺にタダ働きしろっていうの?」

しかし、旅行先でも夫は一人で温泉へ行ったり、食事も亜希さんが子どもの介助で忙しくしている中で悠々とひとりで食べるなど、まったく協力をしてくれませんでした。それでついに我慢の限界がきて、思いのたけをぶちまけてしまったといいます。

「子どもが寝た後、夫に『あなたはいつも仕事でお客さんのことを思いながら、なんでも先回りして行動するんでしょ? どうして、その行動力をもっと家族にも使ってくれないの?』って言ったんです。そしたら『だってお前は家事育児のお金くれないじゃん。俺に高いギャラ払える? それともタダ働きしろっていうの?』って平然と言ってのけたんです。それで、もうこの人と話しても無理だなって諦めがつきました」

我慢に我慢を重ねて、ついに堪忍袋の緒がきれた瞬間でした。亜希さんは心の中で、離婚の決意ができたといいます。

異性問題とかお金の問題があったわけではないので、用意周到に、子どものために時間をかけて準備しようと心に決めた亜希さんでしたが、離婚までの道のりも、離婚してからの生活も、この不誠実な夫によって、振り回されたというお話はまた次回したいと思います。

 

※パートナーからの暴力のほか、怒鳴る、侮辱する、脅すなどの行為、また性行為を強要する、避妊しないこともDVに相当します。警察のほか、以下の相談窓口も利用できます。
DV相談ナビ #8008(はれれば)
DV相談+(プラス)0120-279-889(つなぐ はやく)