クロスワードは子どもが語彙力を高めるのに、効果的です。写真はイメージ(写真:alexeys / PIXTA)

中学受験で勉強しなければならない語句は、1200語以上と膨大です。クロスワードを使うと、楽しく語彙力を伸ばすことができます。『謎解きミステリー 東大クロスワード』を上梓した、東大カルペ・ディエムの西岡壱誠さんが、クロスワードで遊びながら、効率的に勉強するコツをお話しします。

東大生は工夫してクロスワードで遊ぶ

みなさんは、クロスワードで遊んだことはありますか?

多かれ少なかれ、遊んだ経験がある人は多いと思うのですが、実はクロスワードは子どもの勉強におすすめのゲームです。

僕自身、クロスワードは、小さな頃から遊んでいると、その後の勉強においてプラスになる側面が非常に多いと考えています。

現役東大生に話を聞いても、小さいときにクロスワードで遊んでいたという人が多いです。
そして彼ら・彼女たちは、ただクロスワードを解くのではなく、ちょっとした工夫をしながら解いていたようです。今回はクロスワードの解き方について、みなさんにお話ししたいと思います。

まず、ご存じのとおり、クロスワードは、質問の答えを考えていくというものです。

「円形の古墳と方形の古墳を組み合わせた形の古墳のことを何と言う?」と聞かれて、「前方後円墳!」と答えるようなイメージですね。

そのため、クイズの答えを探していくのがクロスワードだと考えている人は多いと思うのですが、実はクロスワードの真価というのはそこではないのです。

例えば、以下のクロスワードを見てください。これは、カタカナ語のみを聞くクロスワードになっています。

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クロスワード(本書より引用)


クロスワード(本書より引用)

質問を見ると、「議論のこと」「精神のこと」となっていて、「え?なんだか、複数個答えが考えられるけど……」と考えてしまうでしょう。

例えば「精神」をカタカナに直すとなると、スピリット、マインド、ソウルなど、いろんな答えが考えられますよね。

クロスワード以外の問題であれば、どれも正解になるでしょう。ですが、クロスワードではそういうわけにはいきません。1つの答えに必ず定まるはずです。

例えば解答欄が4文字だった場合、「精神」を4文字のカタカナに直すとなるとどうなるのか、と考えることになります。

また、今回の場合は「う」の答えが「ジェネレーション」なので、「ジェネレーション」の「ン」が、「カ」の解答欄の左から2番目に入ることになります。

そのため「4文字の言葉で、前から2番目が『ン』であり、『精神』をカタカナに直すとどうなるか?」という問題になります。この場合の正解は「メンタル」になります。ほかのすべての答えは以下の通りです。


クロスワード(本書より引用)

このように、クロスワードにおいて重要なのは、どんどん新しい言葉を埋めていくことで、新しいヒントを探していくことなのです。

賢くなるクロスワードの解き方

新しいヒントを使えば、前の問題に答えられるかもしれない。そして、それまでは複数個の答えが考えられる。それがこのクロスワードの面白いところなのです。逆に、クロスワードの問題というのは、複数の答えが想像できる問題があえて出題されている場合があり、そこがほかにない面白さの源泉になっているのです。

頭がよくなるクロスワードの解き方としておすすめしたいのは、「最初の段階で、どんな言葉が入る可能性があるのか、思い付くものをすべて書く」というものです。

それが答えかどうかはわからないけれど、とにかくたくさん思い付く言葉を書いてみるのです。

例えば「精神のこと」なら、精神を意味するカタカナ語はなんだろう、と考えてみて、「スピリット」「マインド」「ソウル」とたくさん書いていきます。

1つの答えを出す前に、複数の答えを考えてみるのです。そうやって複数個の答えを想像しながら、クロスワードを解いていきます。こうすることで、1つの言葉に対するいろんな解釈を考えることができます。

語彙力は、1対1で対応して覚えていくものではなく、つながっていくものです。「同じ意味の言葉」として頭の中で整理しておく必要があります。

そのほかにも、「何かを考えること」は、「想像」「夢想」「空想」「妄想」というように、たくさんの答えが考えられます。頭の中で、それらの言葉は一緒のカテゴリーとして整理したほうが、覚えやすくなるのです。

だからこそ、「この問題の答えは、これかな? これも考えられるな? どれが正解かな?」というふうに考えていくと、頭がよくなっていくというわけですね。

多くの人は、「語彙力のある人」と聞くと、多くの言葉を覚えている人を想像すると思います。そのため「記憶力が悪いから、語彙力がない」なんて嘆く人もいますよね。

言葉のつながりを理解しているかを問う


しかし、実際はそうではありません。「いかに言葉のつながりを理解しているか」という理解力を問う問題なのです。

例えば、「素晴らしいこと」を指す言葉を、みなさんはいくつ想像できるでしょうか?

「空前絶後」とか「唯一無二」などですね。そして、「唯一無二」は、ほかにないことを指す言葉ですから、「ほかに例がない」→「類い稀」と言い換えたりもできます。

また、「空前絶後」というのは「前がなくて、後に続くものも絶えている」と書きますから、「前代未聞」というのも連想できますよね。そしてこれらすべてが、「素晴らしいこと」を指します。

「語彙力があって頭がいい」というのは、「空前絶後」「唯一無二」「類い稀」「前代未聞」が、つながっていることをしっかりと理解している人のことだと思います。たくさんの言葉が頭の中でしっかりとつながっているからこそ、言葉を上手く扱えるわけです。

クロスワードで遊びながら「これってこの言葉かな? こっちでもいいよな?」と考えることは、複数個の言葉のつながりを意識して、理解することにつながるのです。ぜひ、語彙力を高める教材として、クロスワードを使ってみてもらえればと思います。

(西岡 壱誠 : 現役東大生・ドラゴン桜2編集担当)