今さら聞けない「アメリカが超大国である」理由
そもそも「アメリカが超大国である理由」は何なのでしょうか?(イラスト:松浦まどか)
「超大国アメリカ」。疑いようもない事実ですが、そもそもなぜアメリカがそのような立場にいるのか知っていますか? 4月3日に発売された『まんがでわかる13歳からの地政学』から一部抜粋のうえ、再編集してお届けします。
世界中の貿易の9割以上が船を使っている
世界にはまだ貧しい地域もありますが、全体でみると第2次世界大戦後、圧倒的に豊かになりました。
世界全体の国内総生産(GDP)は1960年に比べて現在は60倍以上にふくらみました。それを支えてきたのは、貿易の増加です。世界全体の貿易額は1960年と比べると200倍以上に増えました。
その大半は船による貿易ですが、昔から世界を行き交う船は海賊におびやかされてきました。ある国が勝手に海上ルートを封鎖したりすることも多く起こってきました。海で物を運ぶには安全さが欠かせません。
(出所:『まんがでわかる13歳からの地政学』、イラスト:松浦まどか)
圧倒的な軍事力で海の仕切り役を担い、みんなが安定した貿易ができるようにする。それこそが超大国と呼ばれる国の役割で、戦後はアメリカが担ってきました。だからアメリカのドルが最も信頼のある通貨になりました。
アメリカが超大国でなくなる可能性もある?
イギリスもそういう役割を果たしてきた19世紀には超大国として敬われ、ポンドが最も強い通貨になっていました。言い換えれば、アメリカが将来、軍隊を国内に引きあげて世界での役割を放棄すれば、ドルの価値は下がり、国が貧しくなることにつながります。
アメリカの世論では「海外に軍隊を置くよりも、そのお金で国民の生活を良くしてほしい」という声が強まっています。2017〜2021年に大統領を務めたトランプ氏はそういう「アメリカ・ファースト」をとなえて支持を集めました。
生活が苦しくなっている人々が政府に国内の経済を優先して欲しいと思うのはある意味自然で、とてもわかりやすい主張でもあります。
ただ、世界の海の仕切り役としての責任を果たさなければ超大国の座を失い、今の豊かさを保つのは難しくなります。「アメリカ・ファースト」を進めた結果、かえってトップでなくなるという皮肉な結果になりかねないのです。
(田中 孝幸 : 国際政治記者)