日経平均は為替介入の警戒がある中でも4万円を割れずに新年度へ。4月以降も引き続き相場は強そうだ(写真:ブルームバーグ)

2023年度の相場が3月末に終わった。結局、日経平均株価の終値は4万0369円44銭だったが、配当権利落ちの260円分を加えると、実質は4万0629円で引けたことになる。

なぜ日経平均は「1年間」で約44%も上昇したのか

これは2023年度初日の4月3日終値2万8188円に比べると、実に約44%も上げたことになる。昨年は7月3日の高値のあと、いろいろあったが、結果的には良い1年だったと言えよう。

この原因は何だったのかと言えば、まずは好調な企業業績だろう。2023年4月3日の日経平均予想EPS(1株当たり予想利益)は2083円38銭だった。だがこの値は上昇を続け、翌2024年3月4日には過去最高の2387円45銭になったあと、3月29日は2364円93銭で終わっている。ただし、EPSの上昇率は13.5%で、2ケタ増益とはいえ44%の株価上昇に比べるとかなり見劣りがする。

その差を補ったのが「期待値」の上昇だ。期待値を表すのがPER(株価収益率)だが、2023年3月4日の予想PER 13.53倍に対して2024年3月29日は17.07倍と、期待値は大きく高まった。

これこそ「デフレ脱却」への期待値で、「デフレ脱却相場」そのものだと言える。繰り返しのようになるが、業績が凝縮された値であるEPSが2083円から2387円へ上がっても、期待値を示PERが13.5倍のままでは、日経平均は3万2000円台までしか上がらなかっただろう。その期待値は、物価を上回る賃金上昇の定着が確認されればさらに上がり、今後は17倍台にとどまらずアメリカ並みの20倍台もありうる。

もちろん、期待値だけでなく、今後は企業業績そのものの上昇の可能性も十分だ。3月12日発表の2024年1〜3月期法人企業景気予測調査の大企業全産業景況判断指数は前期比−0.02と、2023年1〜3月期以来、4四半期ぶりのマイナスとなった。

だが、2024年4〜6月期見通しは+2.9%に、7〜9月期は+5.9%に急上昇する見通しだ。それを裏付けるように、出そろった証券大手3社が予想する企業の2024年度経常利益見通しは、前年度予想比+5.7%〜+8.5%と、3社とも8割の業種で増益を見込んでいる。

海外投資家も日本株を評価

また、アメリカの資産運用大手であるブラックロックも、日本株に対する見通しを引き上げた。

同社は投資評価を引き続き「オーバーウェート(強気)」とした上で、半年から1年後の見通しを、7段階で上から3番目の「プラス1」から2番目の「プラス2」に上方修正した。

実は、2023年9月に「ニュートラル(中立)」から「オーバーウェート」にしてから僅か半年後の引き上げはかなり異例のことであり、日本企業の予想以上の回復スピートを物語る証左である。以前から兜町では「アナリストも追いつけない業績回復」として話題になっていたことの証明でもある。

なお、2023年9月の見通し引き上げのとき、同社トは「穏やかなインフレ、力強い収益成長、企業統治改革などすべてが好材料」とし、企業の収益成長や自己株買いなどを好感した海外投資家の買いが続く」ことを挙げていた。今回の引き上げは、この状態がパワーアップし、日本経済がさらなる高みを目指すということか。

もちろん、今後の株価を考えるうえで重要な注目ポイントはいくつかある。その1つは為替予想だ。先述の大手証券3社の2024年度の予想の中で、3社ともドル円の予想レートは1ドル=145円になっていることは極めて重要だ。

日本企業の2023年度の業績は、2022年度(1ドル=130円台前半)からは大きな為替メリットを受けとったが、もし2024年度も1ドル=145円前後ならば、企業収益における為替メリットは大きく低減することになる。政府高官の為替介入発言が本気度を増したため、最近は151円台にとどまってはいるが、かなり神経質な動きとなっている。

2つ目は物価上昇を上回る賃金上昇の持続性だ。連合は2024年の春闘の賃上げ率を第1回集計で5.28%と発表し、第2回集計でも5.25%と高水準を維持した。また中小企業の回答も4.50%となっている。

とりあえず2024年度においては物価を上回る賃上げ率が実現しそうだ。さすがに2025年もこの高率が維持されるかはまだわからないが期待は高まっており、結果判明までのこれからの1年間は、株式市場にとっては少なくともネガティブ要因ではない。

また、国土交通省は3月26日に2024年の公示地価を発表したが、全用途の全国平均は前年比2.3%の上昇で、伸び率は平成バブル期以来、約33年ぶりの高さだった。株価や賃金に続き、土地価格にもデフレ脱却相場の波の広がりを見せている。

この間の日銀のマイナス金利解除は利上げ政策に他ならない。だが、解除後も日本の10年債利回りは0.7%台にとどまっている。「デフレ脱却・インフレ相場」の柱が、金利上昇で潤う銀行株だけでなく、金利に弱いイメージがある不動産・建設・鉄鋼株も堅調さを保ち、インフレ相場にそぐわない半導体系ハイテク株人気も持続している現在の相場は、きわめて下がりにくい体質を持っている。

さらにここへ小型グロース株の復調が加われば、もはや「鬼に金棒」だ。日経平均は2023年大発会の「2万5716円+1回目の上げ幅8037円×2倍=4万1790円」を目指し、一時4万1000円台となったが、2倍を達成すれば、次は3倍(約5万円)だ。毎回のセリフとなるが、しっかりと上を見つめてこの4万円台の相場について行こう。

1日からの1週間は波乱もありそうだが慌てずに

そうは言っても、われわれは1日1日の相場の中で暮らしている。今週は月初であり、新しい会計年度のスタートの週でもあり、重要な景気指標が日米でひしめく。

早速1日に発表される日銀短観、5日のアメリカ3月雇用統計を中心として、週を通して目が離せない指標の発表が続く。米欧の代表的株価指数が史上最高値圏にあることで波乱も起きやすいが、慌てずに上昇相場を見据えていれば、多少の波乱は相場の薬になると思っている。

(当記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています)

(平野 憲一 : ケイ・アセット代表、マーケットアナリスト)