この記事をまとめると

東京都では区によってガードパイプのデザインが異なっている

■デザインがそうなった理由や種類についても紹介

■区によって全く違うデザインになっているのは面白いところ

区章をイメージしたものも多い

 普段から何気なく目にしている、歩道と車道の境界に置かれている「ガードパイプ」だが、そのデザインは国道や都道府県道、市区町村道など、「管轄の違い」によって異なっていることは、すでに多くの人がご承知だろう。

 だが東京23区内の区道に設置されているガードパイプは、区によってさまざま異なるデザインが採用されていることをご存じだっただろうか? ……って、たぶんご存じの人もけっこう多いですよね。テレビなどでも紹介されたことがある話なので。

 ということでここでは、東京23区内にある多種多様なガードパイプのデザインをご紹介するとともに、それらをなんとなく分類整理してみることにしよう。

 まずは「汎用型」から。これら特定の区だけで使われているデザインではなく、区をまたがって幅広く採用されているデザインのことを指す。直線基調のどうということもないデザインである場合が多いが、なかには、おそらくは「著名デザイナーが筆を取ったに違いない!」と確信できるステキな造形のモノもある。また、目黒区に多い「目」のような形をしたガードパイプはあくまでも汎用型で、他の区でも使われているものだが、目黒区は意識的に「目タイプの汎用型」を数多く設置しているとのことだ。

 次にわかりやすいのは「区章型」だろうか。区章すなわち「区のシンボルマーク」をそのまま、あるいは抽象化し、ガードパイプのデザインとしたタイプである。

 たとえば江戸川区の区章は、同区公式サイトによれば「エドガワの頭文字(エ)を躍進上昇する『ハト』に図案化し、かぎりない発展と平和を象徴したもの」であるそうだが、江戸川区内の一部のガードパイプには、この区章がほぼそのままの形状で埋め込まれている。ちなみにそのガードパイプの正式名称は「江戸川型ガードパイプ(B-1タイプ・ハト型)」というらしい。

 ただし、ここまでわかりやすいというか「そのまんま」なのは江戸川型ガードパイプ(B-1タイプ・ハト型)ぐらいのものだ。例えば中央区で見られるガードパイプは、区のシンボルマーク(東西南北へCを描きながら、調和のとれた未来都市へと発展する姿)をベースにしているように見えるが、そうではないようにも見える。まぁ複雑なシンボルマークをそのままガードパイプ化するのは困難であり、コストや強度の問題なども絡んでくるので、いわゆる抽象化したということなのだろう。

 また、渋谷区の区道で多く使われているガードパイプも、おそらくは同区の区章(渋という字をデザイン化したもの。昭和31年制定)がデザインのベースだと思われるが、きわめて高度な抽象化がなされている。そのため「ははーん、これは区章がベースだな」と気づくのはごく一部の渋谷区民か、あるいはガードパイプマニアだけだろう。

北区はまんま「北」の文字!

 もうひとつのデザインタイプとしては「文字型」というのがある。区名を表す文字(漢字)に若干のデザイン処理を加え、それを区道ガードパイプのオリジナルデザインとしているカテゴリーである。もっともわかりやすいのは北区のガードパイプだろうか。これはもうほぼ漢字の「北」そのままだ。このガードパイプを見かければ、北区民の愛国心ならぬ「愛区心」はいやがおうにも盛り上がるのだろう。

 一方、杉並区でも「杉」と「並」という漢字をデザインモチーフにした2種類のガードパイプが発見できるが、こちらは漢字そのまんま系ではなく抽象化系である。そのため、一見する限りではややわかりにくい。しかしわかりにくいだけに、「わかる人にはわかる暗号」を共有するようなニュアンスで、杉並区民たちの心をつないでいるのかもしれない。

 また、前述した江戸川区のガードパイプには「江戸川型ガードパイプ(B-1タイプ・川型)」というのもあって、これは文字通り江戸川区の「川」という漢字をモチーフとした文字型である。しかしそれは、「川の流れのイメージ」を的確にデザイン化したものでもあるため、後述する「名物型」でもあるといえるはずだ。

 そしてその「名物型」に移ろう。これは、その区の名物的な何かをガードパイプのデザインとしているタイプである。洒落たところでは葛飾区が、区の花である「花菖蒲」の形状をガードパイプに用いている。

 もちろん「複雑な花菖蒲のカタチをそのまんまガードパイプにはできない」というのが主たる理由だろうが、葛飾区の花菖蒲型ガードパイプは高度な抽象化がなされていて、「よくよく見ると……これは花菖蒲か?」というニュアンスの仕上がり。その微妙な塩梅がオツであり、おしゃれであるようにも思うのだ。

 また、江東区は川と海に囲まれた区だけあって、荒川あるいは隅田川の流れ、もしくは東京湾のおだやかな海面を想起させる「波型ガードパイプ」の設置が目立つ。

 ただ、同じく荒川と隅田川に囲まれている墨田区は、せっかくの地理的要因を有効に生かしたガードパイプデザインが見当たらないのが残念なところである。とはいえ墨田区には東京スカイツリーという飛び道具があるため、そのうち満を持して「スカイツリー型ガードパイプ」がお目見えするのかもしれないが。

 このほかにも名物型としては、墨田区の錦糸町駅前に「錦糸=錦の糸っぽいタイプ」があり、千代田区の御茶ノ水駅近くには、有名な「聖橋」の形状をそのまま取り入れたガードパイプがある。

 こういった局所的に現れるナイスなガードパイプにも目を配りつつ散策すれば、街歩きはよりいっそう楽しいものとなるだろう。とはいえクルマの運転中は、ガードパイプのデザインをあまり凝視しないほうがいいように思う。危ないですから。