掲載:リスアニ! - アニソン・アニメ音楽のポータルサイト

写真拡大 (全8枚)

今年8月にアーティストデビュー10周年を迎える雨宮天が、通算4枚目のオリジナルアルバム『Ten to Bluer』をリリースした。青をこよなく愛し、自身のファンのことを“青き民”と呼ぶ彼女が今作に込めたのは、10年の活動を支えてきてくれたファンへの感謝の気持ちと、今後も青と共に歩んでいく決意。「Love-Evidence」や「衝天」といったシングル曲に加え、自ら作詞・作曲した楽曲を含む6曲もの新曲を収録し、“雨宮天”という美しい青の色味をさらに濃くした本作について、存分に語ってもらった。

INTERVIEW BY北野 創
TEXT BY 河瀬タツヤ

10年の活動で感じる変化と成長、アルバムタイトルに込めた想い

――まずはアーティストデビュー10周年を迎えることに対しての今の率直なお気持ちをお聞かせください。

雨宮天 今まで自分の活動年数を意識することがあまりなかったので、突然10周年がやって来た感覚がありますし、「もうそんなになるんだ」という感じで、今もあまり実感が沸いていないです。でも、10年ぶんのことをやってきた自負はありますし、充実感みたいなものは感じますね。

――その10年のなかで、アーティスト活動において様々な変化もあったと思います。ご自身としてはどんな実感がありますか?

雨宮 新人の頃はまだ自分は何が好きで何が出来るかもわかっていなかったので、漠然と「かっこいい感じでいきたい!」みたいに思っていたのですが、10年活動していくなかで、自分の好きなものや得手不得手がわかってきて、自分が何をやりたいか、例えば「かっこいい曲を歌う」にしてもそのイメージをより細分化できるようになりました。それと私は新人の頃、「大きい会場でライブをしたい」という目標があったのですが、今は華やかなステージに立つよりも、意外と家で作詞作曲をしたり地道な作業をするほうが好きなんだなということに気づいて。ライブも今は会場の大きさというよりも自分が歌いやすい場所でやりたいと思うようになりましたし、より自分の心地良い環境を求めるようになりました。

――実際、雨宮さんはこの10年で自ら作詞・作曲する機会がとても増えました。なんでもCubase(音楽制作用のソフト)を使って自分でデモを作るというお話しですよね。

雨宮 まだまだではありますけど、一応そういった勉強もしています。2020年に開催した“The Clearest SKY”というライブのタイミングで新しい音楽チームになって、今のサウンドプロデューサーの角田(崇徳)さんとご一緒するようになったのですが、角田さんはご自身で編曲もされる方なので音楽理論にも精通されていて、その頃はちょうどコロナ禍で時間があったので、リモートで教わりながら本格的に音楽制作の勉強をするようになったんです。それまでは音楽は目に見えないしフワッとしたものだと思っていたのが、ちゃんと色んな理論の上にあるものだし、最終的にはセンスや直感も大事だということがわかって、「なんて面白い世界なんだろう!」と感じたんですよね。学べば学ぶほど楽しいです。

――もう1つ、10周年に絡めて聞きたかったのが、今回のアルバムにも収録されている最新のシングル曲「衝天」についてです。この楽曲はデビュー曲「Skyreach」(2014年)と同じ座組み(作詞:古屋 真、作曲・編曲:伊藤 翼)で制作されていて、ある種、デビュー1年目の自分と10年を経た自分を見つめ直す機会にもなったと思うのですが、ご自身の中で表現において成長を感じる部分はありましたか?

雨宮 「衝天」でまず思ったのは、この10年がなければ歌えなかっただろうなということで、転調もたくさん入っていますし、とにかく場面転換が激しい楽曲なので、新人の頃であれば自分の気持ちが追い付かなかったと思うんですね。でも、今の私は場面転換する方法をたくさん知っていて、例えばAメロとBメロでテンポの取り方を切り替えたり、息の量や声の使い方の細かな調節で場面が変わったことを表現したり、この10年でたくさんの武器を手に入れたんです。気づけば武器がたくさんあることに「衝天」を歌って気付きましたし、「Skyreach」と「衝天」は大きな視点で見ればどちらも“アニソンチックなロック”という括りで捉えられるなかで、10年前の自分との表現力の違いは見せつけられたと思います。

――そんな10年の経験の成果を詰め込んだのが今回のニューアルバムだと思います。どんな作品にしようと思って制作されたのか、タイトルの『Ten to Bluer』に込めた想いを含めて教えてください。

雨宮 『Ten to Bluer』はダブルミーニングになっていて、まず「Ten」は「私(=天)」で、「Bluer」は造語で私のファンの「青き民」のことを指しています。私から青き民に向けて、この10年間の感謝の気持ちを届けたい、という意味ですね。それと「10年間」の「Ten」から、この先さらに青くなって私らしさを追求していくぞ!という気持ち、「ここからまだ行きますよ」という未来への野心も込めました。

――雨宮さんの青好きは有名で、これまでのオリジナルアルバムのタイトルにも必ず「Blue」という単語が入っていました。今回もやはり青に関わるタイトルにしたかったのでしょうか。

雨宮 それが、ベストアルバム(『雨宮天 BEST ALBUM - BLUE -』『雨宮天 BEST ALBUM - RED -』)も出しましたし、ここから10年の先が始まるタイミングでもあるので、一度ブルー縛りをやめてみないか、という話になったんです。それでチームのみんなでブルーなしの案を出し合ったのですが、結局、私が『Ten to Bluer』というタイトルを閃いてしまって、我ながらいいなと思ったので、このタイトルにしました。でも、やっぱり「Blue」という言葉を入れるだけで、グッと私らしさが出るんですよね。じゃあこれからも私は青と共に歩もうと思って(笑)。

常に全力で生き、ギラつくほど派手に!10年目だからこそ歌える曲

――ここからはアルバムの収録曲のうち新曲について詳しく聞いていきます。1曲目の「Fireheart」はアルバムの幕開けに相応しい力強いデジタルロックチューン。

雨宮 この楽曲は、他のアルバム楽曲がある程度固まってきたなかで、わかりやすくライブの光景が想像できるような、ある意味ファンライクな楽曲を入れたいという話になって制作しました。メロディを聴かせていただいたときに、サビでUO(ウルトラオレンジのペンライト)が炊かれるイメージが浮かんで。10周年を節目に終わったりしぼんでいくのではなくて、「まだまだここからエンジンに火をつけて加速するぞ!」みたいな意気込みも感じられますし、「Fireheart」だけに高火力なアルバムのスタートになりました(笑)。

――歌詞は「火の鳥」がモチーフになっていますよね。

雨宮 そうなんですけど、どちらかと言うと「アンチ火の鳥」な内容なんですよね。「不老不死なんてクソ食らえ!」みたいな感じというか、短命である我々人間の意地みたいなものが感じられて、今のこの人生を“生き尽くせ”っていう感じがめっちゃロックだなって思いました。実は最初の仮タイトルが「Firebird」だったんですけど、歌詞が「アンチ火の鳥」だったので、それをもじって「Fireheart」にしたという経緯もあります。

――そういった一回限りの命を全力で生きる精神は、雨宮さんの人生観にハモる部分はある?

雨宮 めちゃくちゃあります。私は常に全力で生きていて、だらだらと長く生きるくらいなら、燃え尽きるように生きて短命なほうがいい!って思っているくらいなので(笑)。

――ということは歌うときも気持ちが入れやすかったのでは?

雨宮 サビのパワー感は「今のこの一瞬を生きるんだ」っていう、自分も元々持っている価値観をイメージして歌いました。でも、AメロやBメロは怠け者に対して「そんなのでいいの?」って言っているような、ちょっと毒を孕んだ歌い方にしていて。全力で生きるのは難しいことで、常に誘惑があるし、サボろうと思えばいくらでもサボれるわけじゃないですか。だからこそ、自分の中に沸き起こる怠け者な気持ちに対して喝を入れる、というイメージもありました。

――そこから「BLUE BLUES」「衝天」「Love-Evidence」といった楽曲を挿んで、5曲目の「mellow moment」は開放感のある爽やかなポップナンバー。でも歌詞には少しほろ苦い雰囲気もあって。どんなイメージで作られたのでしょうか。

雨宮 今回のアルバムでは洋楽っぽい雰囲気も取り入れたくて、その中で「等身大で寄り添ってくれる系の洋楽枠」として制作しました。実は最初にいただいた歌詞は恋愛のほろ苦さを描いたものだったのですが、私としては、ライブでは柔らかい光のなかでお客さんとみんなでクラップしながら楽しめる曲、というイメージが音から浮かんでいたので、みんなが自分ごとに思えるような、もう少し広い人間愛や人間関係を描いた歌詞に変えていただきました。今回のアルバムは全体的にライブの光景を想像して歌詞の方向性を調整してもらった部分が多くて、この曲もその1つです。

――みんなで気持ちを共有し合えるような楽曲にしたかったんですね。

雨宮 はい。私は放っておくと世界観の強い曲を歌いがちで(笑)、みんなを巻き込むというよりかは、「孤高の存在」とか何かの役になり切って歌うことが多いので、それとはまた違った曲にしたくて。人間関係の悩みというのは誰もが持っているものだと思いますし、私も人間関係が苦手だったんですけど、この10年の活動の中で青き民や身の回りの人との繋がりがすごく好きになれたので、人間関係を題材にしていきました。

――この曲では、昔の苦い思い出も受け止められるようになった心情の変化が描かれているようにも感じて、その意味では10年経って大人になった今だからこそ歌える楽曲だと思います。

雨宮 確かに!20歳の頃の私がこの曲を歌っても、きっとあんまり説得力ないですよね。そう思うと大人の歌かも。

――歌声からも柔らかさというか、笑顔が浮かぶ印象がありました。

雨宮 この曲では声の出し方を普段とは少し変えていて、より丸く、角がなくなるような響きで歌いました。私が隣で歌っていても不快にならないような歌声と言いますか、時間がゆっくり流れているイメージ、柔らかい時間を演出できたらいいなと思いました。

――そして6曲目「JACKPOT JOKER」はアルバムのリード曲。雨宮さんの作品ではお馴染みの塩野 海さんが提供されていて、同じく塩野さんが手がけた「VIPER」「irodori」などに連なるジャジーかつゴージャスな楽曲です。

雨宮 私は今まで塩野さんに作っていただいた楽曲はどれも大好きなので、10周年を記念するアルバムのリード曲となったときに、「塩野さんにお願いするしかないでしょ!」と思ってお願いしました(笑)。最初にリモートで打ち合わせをさせていただいたときに、「私はとにかく塩野さんが作るデラデラギラギラで派手な世界観が大好きなので、そういう曲を歌いたいです!」とお伝えして。歌詞も含めて塩野さんにお任せしたので、結構フワッとしたお願いになったんですけど、その結果、塩野さんはめちゃくちゃ悩まれたみたいで。

――その塩野さんが悩んだ末に出来上がった楽曲を聴いていかがでしたか?

雨宮 「これこれ!」って思いました(笑)。私の好きな派手さがたくさん詰まっているのと同時に、これは絶対に私のための楽曲だという確信があって、私に宛てた私信のようにも感じたんです。例えばサビのメロディが、普通はそうはならないと思うような独特のメロディラインで、これは私と塩野さんの今まで築き上げてきたものがあって、私の好みを知ってくださっているからこそだと感じましたし、「雨宮さんなら歌えるだろう」というものを託された気がして、すごく嬉しかったです。

――タイトルの“JOKER”もそうですが、歌詞に目を向けるとトランプにまつわる言葉がたくさん散りばめられていて。以前に塩野さんがアレンジを手がけた「TRIGGER」(『雨宮天作品集1-導火線-』収録)にも繋がるイメージがありました。

雨宮 そうなんです。カジノをイメージして書いてくださったみたいで。でも、だからこそ私はレコーディングのときにどう歌うかを悩みました。最初は大人の女性のイメージでかっこつけて歌おうと思ったんです。だけど、もしそう歌ったら悪い意味で「TRIGGER」の続編みたいになってしまうのではないかと思って、そんな塩野さんが作ってくださった楽曲を殺すようなことはダメだ!って思ったんです。それでレコーディングの1時間くらい前に閃いて、かわいい寄りの歌い方にしました。

――歌声からは奔放な女性像が浮かぶようで、色んな表情で誘惑してきますよね。

雨宮 ありがとうございます!そこを目指していたの嬉しいです。楽曲の情報量だけでなく私の情報量も多くしたくて、10年分の技術をつぎ込みました(笑)。結構細かい技術をたくさん入れ込んだので、まさに10年分の自分の集大成が詰まっていると思います。

――声優としてのキャリアも活かせた感覚はありますか?

雨宮 それは絶対的にあります。声優業では色んな人物を演じますし、その人物ごとにしゃべり方や言葉のクセが違うので、息の使い方やどうしゃべったらどういう風に聞こえるかを常に研究していて。声優としての10年ちょっとの経験もこの楽曲には込められたと思いますし、正直自信があります。

――そんな雨宮さんが自信をもってオススメしたいポイントを教えてください。

雨宮 サビの最後の“ねぇ?”という言葉や、途中の“Whoo Whoo Yeah〜”っていうフェイクは2回ずつ出てくるのですが、その同じフレーズに対してそれぞれ違うアプローチをしていて。声優さんは同じセリフが出てきたら表情を変えて演じるという病気にかかっているので(笑)、ここは自分が獲得してきたものが詰まっていると思います。ぜひ聴き比べてもらって、どんな違いがあるのかを確かめてほしいです。

――個人的には、落ちサビの“赤と黒のダンスフロアで”のところ、歌い出しはバックの音が全部止まって、雨宮さんの声だけで表現されているところの声の入り方の表現が素晴らしいなと思いました。

雨宮 ありがとうございます!実はその部分、元々はスクラッチ音が入っていたのですが、TD(トラックダウン)のときに塩野さんが「ここは雨宮さんの声から入ったほうが良くないですか?」と言ってくださって、音を削っていただいた部分なんです。なのでそこを褒めてくださると塩野さんも嬉しいと思います(笑)。

――「JACKPOT JOKER」のMVの撮影エピソードについてもお聞かせください。雨宮さん自身がメインで出演されていますが、これは奔放な女性のイメージで撮影されたのでしょうか。

雨宮 そうですね。館の女主人の私と、奔放に歌って踊っているショートパンツの私がいるのですが、どちらも「奔放ないたずらっ子」を意識して撮影しました。そもそも私がいたずらっ子なので撮影も楽しかったです(笑)。

――いたずらっ子なんですね(笑)。

雨宮 私は人にいたずらするのが大好きなので。私のMVでは珍しく他のキャストさんもいらっしゃって、執事のヒツジと、1人称視点を手で演じてくださっている方のお二人がいたのですが、1人称視点の方はいたずらされている演技をしてくれるので、私も楽しくなってしまって「よしよし、もっとこちょこちょしてやるぞ」って気持ちが乗ったところもありました(笑)。

――オチもいいですよね。そのいたずらされていた一人称視点の人が実は……。

雨宮 3人目の私だったっていう。あそこまでストーリーがあるMVも私の作品では珍しくて新鮮でしたし、あの最後のシーンは実際に最後に撮影して、そのときから「このオチはみんなびっくりするだろうな」と思って早く観てほしいなと思っていました。MVの「another ending ver.」(アルバムの完全生産限定盤/初回生産限定盤に収録)にはもう1つびっくりがあるので、青き民には絶対に観てほしいです!

情念渦巻く和ロック、洋楽調のダンス曲――雨宮天の新たな表情

――8曲目「風燭のイデア」は雨宮さんご自身が作詞・作曲した、和の要素がふんだんに盛り込まれた情熱的なロックナンバー。

雨宮 この曲は「和ロック」のイメージで作りました。コロナ以降にオンラインイベントを行うことが増えて、私が画面でお話しするのに対して皆さんがチャットでリアルタイムでお話ししてくれる機会が増えたのですが、そこで過去に何度か「今後どういう曲を作ってほしい?」と聞いたときに、毎回「和ロック」という声があったんです。「じゃあ作る!」と思って取り掛かったのですが、いわゆる和の音階、ヨナ抜き音階で作っていくうちに、気持ちがだんだん演歌になってきて。

――『雨宮天作品集1-導火線-』でもモロ演歌調の「初紅葉」を自作されていましたものね。

雨宮 そうなんです。で、演歌と言えば悲恋じゃないですか。“あなたを 殺していいですか”(石川さゆり「天城越え」の歌詞)じゃないですけど、そういう気持ちになって、こういう歌詞になりました。

――恨み節が全開の歌詞で、演歌というよりも「怨歌」みたいな曲ですよね。

雨宮 気づけばだいぶ恨みの強い恋愛の歌詞になっていました(笑)。でも私はそれも面白いなと思って。歌詞は古風で古文的な雰囲気を入れたいと思って、作詞では百人一首を研究して書きました。百人一首の時代の皆さんは、恋で悲しいことがあると涙で袖を濡らすことから、悲恋を「袖が濡れる」とか「袖が乾かない」という言葉で表していたらしいんですよ。それを2番のAメロに取り入れてみたりして(“袖を濡らす涙も”)。ただ、1番はさらさら書けたんですけど、2番で詰まってしまって。それでチーム雨宮の皆さんに悲しい恋の経験や友人の体験談を色々聞いて、この歌詞が完成しました。

――1番はまだいじらしいところがありますけど、2番で裏切りに気付いて以降の展開がちょっと怖いくらいなんですよね。

雨宮 あまり詳しく説明するのもアレですけど、この曲は妻がいる男性を好きになった浮気相手側の視点の歌詞で、この“裏切り告げる春の報せ”のところは、「奥さんと離婚していると言っていたのに、妊娠してるじゃないの!」のゾーンなんです(笑)。

――だいぶドロドロしてきました(笑)。歌もコブシを取り入れていますよね。

雨宮 私がカラオケでよく演歌を歌うなかで身に付けた歌い方を入れました。結果、メロディが小難しくなった部分はあるんですけど、産みの苦しみがすごく大きかったぶん、満足感の大きい楽曲になりました。

――そして9曲目の「the Game of Life」は、これまた今までとは趣きの異なるスタイリッシュなダンスポップチューン。

雨宮 この曲は、さっきお話しした洋楽のエッセンスを取り入れた楽曲のうち、「ガンガンアゲて行くぜ!」枠の曲になります。新たな私を見せたいなと思って。歌詞にも英語の気持ち良いフレーズを散りばめていただいて、歌うときも皆さんが歌詞の内容を聞き取れないような、崩す歌い方をあえてしています。この歌詞の世界観は、歌詞カードを見ていただいて初めてわかるくらいでいいかなと思って。ノリやニュアンスを大切にしているので、多分1番のサビの最後の“笑ってりゃ大どんでん返しも 甚だあり得るGo On!!”のところは、歌詞を見なかったら本当に何て歌っているのかわからないと思います(笑)。この楽曲の主人公も、言葉で語るというよりも、「私を見て!これが私の生き方だから」っていうタイプだと思うので。

――人生をゲームとして捉えて楽しむような、これまでの楽曲とはまた別の意味で強い女性像が描かれていますものね。ダンサブルな楽曲なので、ライブでどういった演出になるのかも楽しみです。

雨宮 ……私はちょっと戦々恐々としています(苦笑)。

――雨宮さんはダンスが苦手ということを常々お話しされていますものね。

雨宮 そうなんです。この曲はもう踊らせるかのような曲なので、「私、どうなっちゃうの……?」って思っていて。

――でも、この間開催されたイベント“⾬宮天 お遊戯会2024”で、苦手なダンスにもあえて挑戦して克服されたという話でしたが。

雨宮 よくご存じで(笑)。確かに挑戦はしましたけど……という感じなので、ダンスはいまだにドキドキです。

青き民に向けた感謝の手紙、さらに青く輝く未来に向けて

――そしてアルバムのラストを飾る「Dear Blue」は雨宮さんが作詞・作曲された、ファン=青き民に宛てたバラード。こんなにもストレートに想いを伝える楽曲は初めてではないでしょうか。

雨宮 そうですね。作詞・作曲をするようになった今だからこそ、そして作詞・作曲を続けてこられたのも、青き民が私の作ったものに対して「いい」と言ってくれたからなので、青き民が築いてくれた私の力である作詞・作曲を、青き民への感謝を伝えることに使いたいと思ってこの曲を作りました。色々考えたんですけど、比喩表現とかお洒落な言い回しにするよりも、やっぱりストレートな言葉がいいなと思ったんですよね。なので「Dear Blue」というタイトルにも表れていますけど、青き民にお手紙を書く気持ちで歌詞を書きました。作詞の前段階として、私はみんなに何を感謝しているのか、今までのありがたかった具体的なエピソードを書き出していって。声帯炎になったときとか、「あのとき救われたな」っていうことがたくさんあるんですけど、それを思い出してメモしながらもう涙が止まらなくて(笑)。歌詞にすると言っても、本当に音符に合わせて言葉数を選ぶくらいで、本当に真っ直ぐな想いを書きました。

――その想いに関しては、この楽曲を聴けばすぐに伝わる内容になっていますが、あえて聞きたいのは“無理しないでね”や“いつも元気でいて”など、優しく語り掛けるような言葉が多いことで。

雨宮 私は今、青き民に何を伝えたいのかを考えたときに、やっぱり元気でいてほしいんだなっていうことに、自分でも気づいたんですよね。よくイベントの終わりに「ちゃんと布団をかけて寝るんだよ」みたいなことを言うんですけど(笑)、そういう気持ちがそのまま歌詞に出たんだと思います。

――その意味ではちょっと「おかん」っぽいですね。

雨宮 ああー。でもどちらかと言うと、私自身がみんなからこの言葉をすごくたくさんかけてもらってきたのが大きいんだと思います。自分で言うのもアレですけど、私は結構頑張りすぎてしまうところがあるので、それを察して「こんな雨宮さんが好き!でも頑張りすぎないでね」という言葉をたくさんもらってきて。でも、そのおかげで逆に頑張ろうと思えたし、自分の中の「頑張らなきゃ」を「頑張りたい」にしてくれたのが、みんなからの「頑張りすぎないでね」や「無理しないでね」という言葉だったんです。だからこそ、私もこの言葉を返したいと思いました。

――レコーディングのときも、ファンのことを思い浮かべて歌われたのでしょうか。

雨宮 ……そこなんですよね。さっきもお話しした通り、この歌詞の裏には結構具体的なエピソードがあるので、レコーディングなのに泣きそうになってしまって(苦笑)。でも、泣いていたら歌にならないので、想いは込めるけど「冷静になれ……!」って考えながら歌いました。その意味でも今までにない難しさがありましたね。

――それだけ想いを込められた楽曲でもあると。でも、そうなると、ライブで青き民たちを前にして歌うことができるのでしょうか。

雨宮 だからセトリに入れたくないんです、この曲。多分、前奏で泣き出してしまうので(笑)。正直、もう歌になっているかもわからない感じになると思うので、そういう意味で青き民の前ではちゃんと歌えないかもなって思っています。

――それでも青き民は受け入れてくれるでしょうし、きっと受け止めてくれると思います。そういう信頼関係が築けているからこそ、ここまで心のこもった楽曲が出来たんだろうなと思いますし。

雨宮 これはきっと青き民自身も感じていることだと思うんですけど、最初と今とでは青き民との関係性も全然変わったんです。“お遊戯会”もそうで、私がただただ色んな苦手なことにチャレンジしていくのをみんなに見守ってもらうだけのイベントだったので、それって私のことを知ってくれているファンじゃないと本当に意味がわからないと思うんですよ(笑)。それを大成功で終えられたというのは、青き民と関係性を築き上げてきたことの1つの証明だったなって思いますね。

――雨宮さんは青き民の前だと素直になれているんじゃないかなと思って。

雨宮 ああ、確かにそうかも。キャリアを重ねるほど、青き民に甘えがちになっているところがあります(笑)。色んなことを聞いてもらうんですよね。愚痴に近いようなこととか、悩みとか、「こんなことがあったんだけど、どう思う?」とか。「ライブが怖い」とか「人前に立つのが苦手」っていう弱点もどんどん打ち明けてしまっているので、どんどんみんなに寄りかからせてもらっている配分が増えている気がします(笑)。

――それはファンとの関係性としては理想的なのではないでしょうか。

雨宮 そうですね。昔のほうが「自分で作らなくちゃ」という気持ちがあったけど、今は「一緒に作ってもらえばいいんだ」と思えているのは大きいなと思います。

――その10年の積み重ねが反映されたのが今回のアルバムだと思いますが、ご自身としてはどんなアルバムになったと感じますか?

雨宮 青き民への想いもいっぱい込められたし、より青く、というのは新しい自分を模索してくこともそうですし、自分が育て上げてきた私らしさをより濃く表現するという意味でも、本当にタイトル通りのアルバムができたと思います。

――5月からは本作を携えてのツアーがスタートして、8月には10周年イヤーを迎えるわけですが、どんな1年にしたいでしょうか。

雨宮 正直、「10周年イヤーだから気張って頑張るぞ!」という気持ちは全然なくて、「10周年やってこられた私たち、すごくない?お祭りしようぜ!」みたいな感じにできたらなと思っています。その中でみんなに喜んでもらえるようなことを色々やっていけたらと思いますね。ツアーももちろん私なりに精一杯作り上げていく気持ちではありますけど、本番はみんなと一緒に作ってもらって、最終的に「10周年イヤー楽しかったね」って笑い合えるような年にしたいなと思います。

●リリース情報
『Ten to Bluer』
3月27日発売

【完全生産限定盤(CD+BD+グッズ)】

品番:SMCL 880〜882
価格:¥9,500(税込)
・3段重スペシャルBOX仕様
・大判マルチクロス
・目標達成カレンダー(充実シール付き)
・超豪華ポスター型ブックレット
・アルバムジャケットスペシャル写真集

【初回生産限定盤(CD+BD)】

品番:SMCL 883〜884
価格:¥4,400(税込)

【通常盤(CD)】

品番:SMCL 885
価格:¥3,100(税込)

<CD>
01. Fireheart
作詞:上坂梨紗 作曲:石鄢 剛, 小久保祐希 編曲:石鄢 剛
02. BLUE BLUES
作詞・作曲:雨宮 天 編曲:宮永治郎
03. 衝天
作詞:古屋 真 作曲・編曲:伊藤 翼
04. Love-Evidence
作詞:上坂梨紗,西野蒟蒻 作曲・編曲:Saku
05. mellow moment
作詞:西野蒟蒻 作曲・編曲:涼木シンジ
06. JACKPOT JOKER
作詞・作曲・編曲:塩野 海
07. 情熱のテ・アモ
作詞・作曲:雨宮 天 編曲:宮永治郎
08. 風燭のイデア
作詞・作曲:雨宮 天 編曲:宮永治郎
09. the Game of Life
作詞:上坂梨紗 作曲:石鄢 剛, Giz’Mo(from Jam9) 編曲:石鄢 剛, ArmySlick
10. SOS
作詞:上坂梨紗 作曲・編曲:下野 隼
11. Dear Blue
作詞・作曲:雨宮 天 編曲:荒幡亮平

<Blu-ray>
・JACKPOT JOKER MusicVideo(another ending ver.)
・Making of 衝天(long ver.)
・Making of Ten to Bluer Jacket
・Making of JACKPOT JOKER

●ライブ情報
LAWSON presents 雨宮天 Live Tour 2024 “Ten to Bluer Sky”

詳細はこちら
https://trysail.jp/contents/712658

大阪・オリックス劇場
2024年5月11日(土)17:30開場 /18:30開演
2024年5月12日(日)16:00開場 /17:00開演

埼玉・大宮ソニックシティ 大ホール
2024年5月26日(日)17:30開場 /18:30開演

愛知・Niterra日本特殊陶業市民会館 フォレストホール
2024年6月9日(日) 17:30開場 /18:30開演

東京・立川ステージガーデン
2024年6月22日(土)17:30開場 /18:30開演
2024年6月23日(日)16:00開場 /17:00開演

関連リンク

雨宮天 オフィシャルサイト
http://www.amamiyasora.jp/

雨宮天 オフィシャルX
https://twitter.com/Amamiyastaff

雨宮天 オフィシャルYouTube
https://www.youtube.com/channel/UCc4xpujLxnUBSI1XX-SdldQ