近年ではAIの発展により、人間のアーティストの歌声などを学習して新たな楽曲を作り出す技術が登場しています。パフォーマンス目的でのAI音声の不正使用を防止し、AIによる無断学習からアーティストを保護するための「2024年肖像・画像セキュリティ保護法」、通称「ELVIS法」がアメリカ・テネシー州で可決され、ビル・リー州知事が署名しました。

PHOTOS: Gov. Lee Signs ELVIS Act Into Law

https://www.tn.gov/governor/news/2024/3/21/photos--gov--lee-signs-elvis-act-into-law.html



Tennessee becomes first US state with law protecting musicians from AI | Reuters

https://www.reuters.com/legal/tennessee-becomes-first-us-state-with-law-protecting-musicians-ai-2024-03-21/

Tennessee becomes first state to protect musicians, other artists against AI | AP News

https://apnews.com/article/artificial-intelligence-ai-music-songwriting-tennessee-eb95c850f13fd78f9e65abce2ee45091

Tennessee Adopts ELVIS Act, Protecting Artists' Voices From AI Fakes

https://www.billboard.com/business/legal/tennessee-elvis-act-protecting-artists-voices-ai-impersonation-1235637934/

音楽産業に強いテネシー州では、州全体で約6万人以上の音楽関係者がいるほか、4500以上のライブ会場などが存在します。しかし、従来の州法では、アーティストの名前・画像・肖像権は保護されていたものの、声は保護されておらず、生成AIによって声を再現した偽物の登場を許してしまっていました。

そのため、テネシー州では、既存の名前や画像、肖像権の保護に加えて、アーティストの声も保護の対象に追加する「2024年肖像・画像セキュリティ保護法」または「ELVIS法」と呼ばれる法律の策定が2024年1月から進められてきました。

今回のELVIS法は、1984年に可決された個人の権利保護法に代わるもので、アメリカで初めて明示的に人の声を保護対象と規定しただけでなく、アーティストの名前や画像、声の使用を禁止する範囲を従来よりも広げています。



これまでの個人の権利保護法は、アーティストの名前や写真などを広告目的で使用することのみを禁止しており、パフォーマンス目的でのAI音声の不正使用は含まれていませんでした。今回のELVIS法では、禁止の範囲に関する規定がないため、ドキュメンタリーや楽曲、書籍などでの媒体での無断使用が禁止される場合があるとのこと。

ELVIS法には、リンジー・エル氏やマイケル・W・スミス氏、ナタリー・グラント氏らが支持を表明しているほか、エンターテインメント協会におけるAIへの責任あるアプローチを推進する「Human Artistry Campaign」などの組織からの賛同も得ています。

カントリー歌手のルーク・ブライアン氏は「AIの脅威はすでに私たちのスマートフォンなどに現れています。今回のELVIS法がうまくいけば、AIの乱用を抑制することができるでしょう」と語っています。