高松宮記念を制した唯一の海外からの刺客 スプリント大国の強さ示した偉業
今年の高松宮記念で注目したいのは「香港の刺客」ビクターザウィナー(Victor the Winner、セ6、香港・C.シャム厩舎)の参戦だ。外国馬のエントリーは18年のブリザード(Blizzard、5着)以来、実に6年ぶりとなる。では、これまでに高松宮記念を制した外国馬は何頭か? 答えは1頭。今から9年前、15年の覇者で最後に日本の重賞を勝った外国馬でもあるエアロヴェロシティ(Aerovelocity)のみが歓喜の瞬間を味わった。
エアロヴェロシティは父Pins、母Exodus、母の父Kaapstadの血統。下級条件で低迷していた時期もあったが、古馬になって地力強化。14年の香港スプリントでは1番人気のペニアフォビア、日本から遠征したストレイトガールなどを抑え、G1初制覇を果たした。
年が明けるとチェアマンズスプリントプライズ(2着)をひと叩きして、高松宮記念へ参戦する。大混戦が予想された一戦。当然、オッズも割れた。1番人気は5.1倍でストレイトガール。2番人気は同じく5.1倍でダイワマッジョーレ。さらに僅差の5.2倍でミッキーアイルが3番人気。エアロヴェロシティは6.5倍の4番人気だった。
レースでは好発を決めたが無理はせず、アンバルブライベンを行かせて好位の内へ。3~4角もそのままインコースを走り、直線で徐々に馬場のいい外へ。ミッキーアイルと併せ馬の形で脚を伸ばすと、先に抜け出したハクサンムーンを捕らえて、先頭でゴールした。鞍上のZ.パートン騎手は馬上で立ち上がり、大きなガッツポーズでアピール。日本馬17頭を向こうに回し、外国調教馬として初の高松宮記念覇者となった。
その後もシンガポールのクリスフライヤー国際スプリント、香港のセンテナリースプリントC、香港スプリントと、ビッグレースをつぎつぎに制覇。ハイレベルといわれる香港のスプリント界において、一時代を築いた。連覇を狙った翌16年の高松宮記念こそ疝痛で回避することとなったが、その功績が色褪せることはない。
あれから早くも9年が経った。今週末、ビクターザウィナーが偉大な先輩に負けず劣らずの走りを見せてくれることを期待しよう。