「時期尚早の声もある」 わずか8戦目で世界挑戦・武居由樹、八重樫トレーナーが信頼する理由
武居由樹が「5.6」世界挑戦
ボクシングのWBC世界バンタム級10位・武居由樹(大橋)が8日、5月6日に東京Dで行われるWBO世界同級王者ジェイソン・マロニー(オーストラリア)への世界初挑戦に向け、神奈川・横浜市内の所属ジムで会見した。同門の世界スーパーバンタム級4団体統一王者・井上尚弥と元世界2階級制覇王者ルイス・ネリ(メキシコ)の歴史的一戦の興行に参戦。担当する元世界3階級制覇王者・八重樫東トレーナーは信頼を寄せた。戦績は27歳の武居が8勝(8KO)、33歳のマロニーが27勝(19KO)2敗。
格闘技歴の長い武居も表情が硬かった。グレーのスーツで臨んだ会見開始直前。「緊張するな〜」と呟いた。だが、隣りには頼りになる参謀がいる。現役時代に「激闘王」の異名で愛された八重樫トレーナーだ。K-1で世界王者になってからボクシングに転向以降、指導してきた愛弟子を大一番に送り出す。
「マロニーはクオリティーの高いボクシングをする。技術戦ではなく、武居の良さを出す試合にしたい。一方的にポイントアウトされるか、武居が倒すか。対策はあるけど、その中で武居のボクシングをぶつけます。相手は対応力のある選手。その上で12ラウンドの中で当てていく。武居はボクシングIQが高いし、対応された後の対応ができる。新しい武居が出ると思います」
21年3月にボクシングデビューすると、22年8月の東洋太平洋スーパーバンタム級タイトルマッチで5回TKO勝ちし、競技転向5戦目で初のタイトルを奪った。バンタム級転向を見据え、23年7月には54.0キロ契約8回戦で勝利。昨年12月には3戦連続で井上の前座に入り、54.5キロ契約8回戦でデビュー8勝(8KO)の連続KO勝ちを続けてきた。
これなら世界を獲れると思った瞬間は? 八重樫氏「ないです」
競技転向で最も苦労したのは「ラウンド数」という。最大3回が基本のK-1とは違い、ボクシングの世界戦は12回。「前はバーンと飛ばしていけたけど、12回だと頭を使わないといけない」と少しずつ覚えてきた。わずか8戦での世界挑戦。八重樫トレーナーは「これなら世界を獲れる」と思ったタイミングを聞かれ、「ないです」と率直な意見を口にした。
「世界挑戦に完璧なタイミングなんてありません。時期尚早と言われ、いろんな意見もあるけど(東京Dに出られるのは)最高のタイミング。(王者を相手にすれば)世界挑戦は不利予想になるもの。(世界挑戦は)準備をしていないところでチャンスが来るものなんです。
あと2か月どうするか。試合は僕が理詰めで伝えて、彼が自由にやる。それでいいんです。野性味がありますし、首輪は使わない。放し飼いです。彼を信じてます」
それだけリング上で発揮する格闘技センスを信頼しているということだ。
王者マロニーは20年10月に米ラスベガスで井上に世界挑戦し、7回KO負け。21年8月に再起すると、井上が返上したWBO世界バンタム級王座を23年5月に獲得した。今年1月に初防衛成功。再起後6連勝中の実力者だ。マイク・タイソン以来34年ぶりの東京Dボクシング興行。K-1とボクシングで世界王者になった日本人はいない。「誰もやったことがないことをやってみたかった」と武居は歴史的一日を見据えた。
「大舞台で強敵との試合。今までも自分のイメージしていない動きをして倒してきた。当日までと当日の自分の成長に期待したい。倒すか判定で持って行かれるか。一発を当てて倒したい。当てるまでの過程を八重樫さんとすり合わせたい。バチっと倒して勝ちます」
○…興行はAmazon プライム・ビデオにて「Prime Video presents Live Boxing」の第8弾として独占生配信される。井上と武居のほか、井上の弟のWBA世界バンタム級王者・拓真(大橋)が同級1位・石田匠(井岡)と2度目の防衛戦を行う。WBA世界フライ級王者・ユーリ阿久井政悟(倉敷守安)が同級3位・桑原拓(大橋)と初防衛戦。同じ興行で世界戦4試合は国内最多3試合を超える規模となる。
(THE ANSWER編集部)