フィリーズレビューに出走予定のシカゴスティング(c)netkeiba

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【文・構成:伊吹雅也(競馬評論家)=コラム『究極のAI予想!』】

netkeibaにある膨大な競走成績を人工知能によって機械学習するAiエスケープを開発したAIマスター・Mと、レースデータの分析を専門とする競馬評論家・伊吹雅也による今週末のメインレース展望。コンピュータの“脳”が導き出した注目馬の期待度を、人間の“脳”がさまざまな角度からチェックする。
(文・構成=伊吹雅也)

◆人気薄の伏兵が波乱を演出した例も少なくないレース

AIマスターM(以下、M) 先週は弥生賞が行われ、単勝オッズ34.9倍(6番人気)のコスモキュランダが優勝を果たしました。

伊吹 お見事と言うほかありません。あまりスタートが良くなかったこともあって後方からの競馬になり、1コーナーを9番手で、2コーナーを7番手で通過。しかし、そこからマクリ気味に進出し、3コーナーに入ったところでは逃げたシリウスコルト(3着)のすぐ後ろまでポジションを押し上げています。そのまま4コーナーでシリウスコルトに並びかけ、残り200m地点の手前で追い抜き、その後は独走態勢に。

 ゴールの手前で中団から伸びてきたシンエンペラー(2着)が迫ったものの、セーフティリードを保ったまま入線しました。結果論ではあるものの、序盤から積極的に仕掛けていくというM.デムーロ騎手の好判断がなければ、ここまでの完勝にはならなかったはず。鞍上のファインプレイとこの馬自身の潜在能力が噛み合った、素晴らしい勝利です。

M コスモキュランダは重賞初制覇。2走前の京都2歳Sで8着に、1勝クラスのレースだった前走でも2着に敗れていましたが、皐月賞トライアルのここで鮮やかにタイトルを奪取しました。

伊吹 前走はスタートで完全に出遅れてしまい、大外を周らされる苦しい形になってしまったのですが、ゴールの直前で猛然と追い込み、先に抜け出した勝ち馬をクビ差まで追い詰めて入線。この時に先着を許したファビュラススター(9着)が今回の弥生賞で単勝オッズ6.8倍(4番人気)の支持を集めていたわけですし、人気の盲点だったと言って良いでしょう。私自身も、もう少し評価を引き上げるべきだったと反省しています。

M 前評判が低い中での勝利でしたから、皐月賞ではまた妙味あるオッズがつくかもしれませんね。

伊吹 今回は11頭立てでしたが、さすがに本番は出走頭数が増えるでしょうし、同じような競馬で上位に食い込むのは難しいはず。最終的なメンバー構成にもよるとはいえ、上位人気グループの一角を占める可能性はそれほど高くなさそうです。

 ただ、実戦経験を積む中で着実に力をつけてきたうえ、母のサザンスピードは現役時代にコーフィールドC(豪G1)などを勝っている名牝。大舞台でも通用しそうなポテンシャルの持ち主ですから、皐月賞やその後のビッグレースでも激走を警戒しておきましょう。

M 今週の日曜阪神メインレースは、1~3着馬に桜花賞への優先出走権が付与されるトライアル競走のフィリーズレビュー。昨年は単勝オッズ4.8倍(2番人気)のシングザットソングが優勝を果たしました。

 なお、その2023年は単勝オッズ14.8倍(7番人気)のムーンプローブが2着に、単勝オッズ27.6倍(11番人気)のジューンオレンジが3着に食い込んだこともあって、3連単10万3380円の好配当決着。波乱含みの一戦という印象ですが、単勝人気順別成績はどうなっていますか?

伊吹 2頭が1着同着となった2019年を含む過去10年の優勝馬11頭中、単勝1番人気の支持を集めていたのは2015年のクイーンズリングだけ。ただし、単勝2番人気の馬は2014年以降[4-3-2-1](3着内率90.0%)ですから、上位人気馬の成績が極端に悪いというわけではありません。

M とはいえ、3着以内馬30頭のうち10頭は単勝7番人気以下。やはり伏兵の台頭を警戒しておいた方が良さそうです。

伊吹 より実態に即した区切り方をすると、単勝2番人気以内の馬は2014年以降[5-6-2-7](3着内率65.0%)、単勝3~8番人気の馬は2014年以降[5-2-5-48](3着内率20.0%)、単勝9~13番人気の馬は2014年以降[1-1-3-45](3着内率10.0%)、単勝14番人気以下の馬は2014年以降[0-0-0-45](3着内率0.0%)となっていました。波乱必至とまでは言えませんが、思い切った穴狙いを選択するのもひとつの手でしょう。

M そんなフィリーズレビューでAiエスケープが指名した特別登録時点の注目馬は、シカゴスティングです。

伊吹 もう少し穴っぽいところを狙ってくるかと思いましたが、それなりに人気が集まりそうな馬を挙げてきましたね。

M シカゴスティングは2歳時にフェニックス賞を勝っている馬。2走前のファンタジーSで3着に、前走の阪神JFで5着に健闘した実績もあります。特に前走の阪神JFは、差し馬が上位を占める中でしぶとく逃げ粘る強い競馬。単勝1番人気ということはなさそうですが、2番手グループの一角を占めることになるでしょう。

伊吹 前走はもちろん、2走前の時点でも前評判は低かったのですが、さすがに今回は注目を集めそう。ただ、それでもなお狙い目であるとAiエスケープが判断したわけですから、素直に信頼して良いのかもしれません。この見立てを踏まえたうえで、私はレースの傾向からシカゴスティングの信頼度をジャッジしていきたいと思います。

M 最大のポイントはどのあたりですか?

伊吹 まずは臨戦過程をチェックしておきたいところ。前走の条件がGIだった馬は2020年以降[1-4-0-7](3着内率41.7%)なので、相応に高く評価するべきでしょう。一方、前走の条件がGI以外だったにもかかわらず3着以内となった7頭のうち6頭は、前走の着順が5着以内、かつ前走の4コーナー通過順が4番手以下でした。

M ビッグレースからの直行組でない限り、大敗直後の馬や前走で先行していた馬は強調できませんね。

伊吹 おっしゃる通り。近走の着順だけでなく、脚質にも注目しておいた方が良いと思います。

M シカゴスティングは前走の4コーナー通過順こそ1番手でしたが、その前走が阪神JF。強調材料のひとつと見て良さそうです。

伊吹 あとは関西圏、かつ1400m以上のレースにおける実績も重要。同じく2020年以降の3着以内馬12頭は、いずれも“京都・阪神の、1200m超のレース”において“着順が6着以内、かつ4コーナー通過順が3番手以下”となった経験がある馬でした。

M 関東圏やローカル場のレース、1200m以下のレースにしか実績がない馬は過信禁物、と。

伊吹 今年もこの条件に引っ掛かっている馬がわりと多いので、しっかり確認しておきましょう。

M シカゴスティングは2走前のファンタジーSでこの条件をクリアしています。

伊吹 さらに、近年は小柄な馬が不振。同じく2020年以降の3着以内馬12頭は、いずれも前走の馬体重が440kg以上でした。

M なるほど。小柄な馬は割り引きが必要ですね。

伊吹 大型馬である必要はないのですが、極端に馬格のない馬は疑ってかかるべきでしょう。

M シカゴスティングは前走の馬体重が428kg。残念ながらこちらの条件には引っ掛かっています。

伊吹 ただ、今年はすべての条件を綺麗にクリアしている馬があまりいないので、適度に妥協しながら連軸候補を選ぶしかありません。馬格の他に大きな不安要素がない以上、シカゴスティングも選択肢のひとつと考えておいた方が良さそう。Aiエスケープが有力と見ているのであれば尚更です。枠順や実際のオッズなども加味したうえで、最終的な評価を下したいと思います。