海外で美容師として働くには?

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 専門的な技術や知識、資格を取得し、それを生かして仕事をする美容師は「手に職をつける」ことのできる職業の一つです。中には、美容師のスキルを武器に「海外で働いてみたい」と考える人もいると思います。しかし、海外で美容師になり、仕事をするためのプロセスについては、あまり知られていないかもしれません。そこで、海外で美容師として働くにはどうすればいいのか、実際の事情について美容師の原木佳祐さんに教えていただきました。

日本の美容師免許でアピールできる可能性も

Q.海外で美容師になるためには、どのような準備をしたらよいのでしょうか。

原木さん「まず、国やエリアによって大きく異なります。ヨーロッパなどのエリアよりも、アメリカで美容師になる方がとても難しいです。州によっても異なるため一概にはいえないのですが、『コスメトロジーライセンス』という国家資格が必要になります。この資格を取得するためには、日本におけるマイナンバーカードのような本人確認書類がまず必要になる他、『複数のビザを取得する』『日本人が経営するサロンで実績を積む』など条件が複雑なのです。

一方でヨーロッパでは、美容師は国家資格ではないどころか、美容師免許というものがそもそもありません。そのため、アメリカよりも美容師になるハードルは低いといえるでしょう。ただし、それぞれの国が定める認定資格を取得して保険に入ることで、より安定した環境で働くことができます」

Q.先に日本で美容師免許を取得していると、海外で有利に働くのでしょうか。

原木さん「必ずしも有利になる、とは言い切れないと思います。ただアメリカの場合、州によっては日本人用のライセンスがあり、数年の実務経験を積むなどの条件をクリアすることでアーティストビザの発行審査が通りやすい、などのメリットは考えられます。

一方で、アジアの新興国などに進出する場合、日本の美容師免許を持っていることで技術的に評価を得られる可能性があります。日本では、美容師は国家資格にあたりますが、海外では美容師になるための資格制度が存在しない国も少なくありません。こうした国やエリアでは、日本の美容師免許をアピールすることで仕事につながる可能性も十分にありますね」

Q.反対に、海外での美容師としての実績は、日本で働く際にプラスになりますか。

原木さん「海外で働いていたという実績は、もちろんアピールポイントになると思います。ただ、海外と日本では、お客さまへの対応のプロセスがそもそも異なります。

日本ではパーマ、カット、カラーといった全ての工程に担当の美容師がついて施術を行うパターンが多いと思うのですが、海外では分業制が主流なのです。パーマはこの人、カットはあの人、シャンプーはまた違う人…と複数の美容師が入れ替わって施術を行うため、施術の内容によって経験の差が出てくる可能性があるのです。そのため、分業制に慣れてしまった人は、同じプロセスで施術をする美容院を探した方が働きやすいかもしれません」

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 同じ「美容師」という職業でも、日本と海外では資格の取り方や働き方に大きな違いがあるのですね。海外で美容師としてデビューしたいと考えている人は、事前に各国のシステムをしっかりと把握してから目指した方がよいかもしれません。