お酒飲んで「夕方から絶好調の人」の危ない兆候
夕方からお酒を飲むと調子がいい。そんな習慣がある人に潜むリスクとは?(写真: mits / PIXTA)
仕事から帰ると、ついついお酒を飲んでしまう。休日も昼間から飲んでしまう。お酒を控えたいけれども、なかなかできない。そんな人にこそ、つらい禁酒や断酒ではなく、減酒がおすすめです。2024年には、国が初めて飲酒ガイドラインを発表しました。どのように生活習慣を改善するとよいのか、筑波大学医学医療系准教授で、筑波大学健幸ライフスタイル開発研究センター・センター長の吉本 尚さんが上梓した『あなたの時間と元気を取り戻す 減酒セラピー』を一部抜粋・再構成してお届けします。
リスキーな依存と単なる酒好きの違い
夕方になると、「今日はどこへ飲みに行こうか」と考えてソワソワし始める。
仕事帰りに行きつけの飲み屋さんでちょっと一杯など、日々の飲み方を自分で決めて楽しんでいる場合は、たとえ退社前にソワソワしたとしても、お酒に対する依存度はそれほど高くありません。
それに、飲酒するかしないかにかかわらず、仕事が終わって帰れるのは、誰にとっても待ち遠しいものですよね。
ただ、健康診断の前日、「今日はさすがに飲まないでしょう」と思いながらも、気づいたら店で飲んでいたというのは、自分をコントロールできていない状態。「自分もそうかも」という人は要注意です。
退社時間が近づくにつれお酒のことが頭に浮かび、家に帰り着くのを待てず、駅からの帰路や途中の公園で缶酎ハイをプシュッ!と開けてしまうという話も患者さんからよく聞きます。
多くの人が、「家に帰ってくつろいでから飲もう」「歩きながら飲むと変な人と思われる」と考え、飲みたい気持ちをとりあえず我慢します。それができず、飲みたい気持ちに流されて飲んでしまうというのは、依存度が高いかなり危険な状態です。
好きなものを我慢するつらさを感じながらも、我慢で行動を抑えられるかどうかは、お酒とうまく付き合っていくための大事なポイントです。
「夕方からが絶好調」という人は、危ない
日中は体調も仕事の調子もいまひとつで、周囲から見ても覇気がないのに、終業後飲み始めると「絶好調!」という人がいます。こういう人は、実は軽い離脱症状にあることが考えられます。
離脱症状とは、アルコールが体から抜けていくときに起こる不快な症状のことで、頭痛、イライラ、吐き気などをともないます。手が震える(振戦:しんせん)という症状は、みなさんよくご存じでしょう。
そのほかにも、微熱、眠れなくなる、寝汗をかく、食欲がない、脈が速くなるといった代表的な症状があります。
こうした症状が飲酒後、最短だと6時間ほどで現れます。そのつらい状態が、お酒を飲むと改善されるのです。いわゆる「迎え酒」ですね。
お酒を飲み始める夕方の5時、6時くらいが一番調子が良く、絶好調。11時、12時くらいまで飲んで、翌朝、起床したあたりからどんどん具合の悪さを感じるようになります。もちろん、絶不調で日中はパッとしないのですが、夕方が近づくにつれて気力を取り戻し、飲み始めると急にイキイキし始めるわけです。
(図:本書より引用)
外来ではこうした離脱症状のメカニズムを、患者さんにお話しすることもあります。日中のつらさが離脱症状だったとわかるだけで、お酒との付き合い方を変えられる例もあるからです。
一人で難しい場合はまずは相談を
しかし、「お酒を減らそうと思ったけど、嫌な離脱症状が出てきてしまうので減らせない」という切実な声もあります。
「飲めば体調が良くなる」とわかっていればなおさら、お酒を減らしたりやめたりするのが難しくなるのです。
今は、カウンセリングに加えて、減酒薬などを使った治療を行っている病院もあるので、一人では難しいと感じたら、相談してみるのも一つの手です。
(吉本 尚 : 筑波大学医学医療系准教授・筑波大学健幸ライフスタイル開発研究センター長)