中国スマホ「トランシオン」が新興国市場で大躍進
トランシオンの主戦場はアフリカ、中東、ラテンアメリカなど中国国外の新興国市場だ(写真は同社のサブブランド「テクノ」のウェブサイトより)
世界のスマートフォン市場の勢力図に新たな変化が起きている。カナダのコンサルティング会社テックインサイツが2月2日に発表したデータによれば、2023年のメーカー別のスマホ出荷台数ランキングで中国の伝音控股(トランシオン)が第5位になり、初めてトップ5入りした。
広東省深圳市に本社を置くトランシオンは、低価格のスマホをアフリカなどの開発途上国で販売する戦略に特化している。テックインサイツのデータによれば、同社の2023年の出荷台数は前年同期比31%増の9510万台に達し、世界シェアを2022年の6%から8.3%に伸ばした。
世界首位争うサムスンとアップル
トランシオン以外のトップ5の顔ぶれを見ると、首位は韓国のサムスン電子で世界シェア19.6%、第2位はアメリカのアップルで同18.8%、第3位は中国の小米(シャオミ)で同12.7%、第4位は中国のOPPO(オッポ)で同9.2%だった。2022年に第5位だった中国のVIVO(ビボ)は、トランシオンに抜かれて圏外に去った。
2023年の全世界のスマホ出荷台数は、テックインサイツのデータでは前年比3.9%減の11億5200万台だった。市場全体が縮小するなか、上位メーカーは熾烈なシェア争いを繰り広げている。香港の市場調査会社カウンターポイントのデータでは、アップルの世界シェアは20%とサムスンの19%を僅差で逆転するなど、調査会社によるばらつきも見られる。
そんななか、トランシオンの成長ぶりはトップ5のなかでも抜きん出ている。市場調査会社IDCのデータで見ても、トランシオンの2023年のスマホ出荷台数は前年比30.8%増加。世界市場で8.1%のシェアを獲得し、メーカー別ランキングで第5位に上昇した。
トランシオンは中国企業ながら「アフリカのスマホ王」の異名を持つ(写真は深圳市の本社ビル)
同社の主戦場はアフリカ、中東、ラテンアメリカなど中国国外の新興国市場だ。「テクノ」「インフィニックス」「イテル」など複数のサブブランドを使い分け、ローエンドからミドルクラスまでの製品を展開する。
アフリカで5割弱の市場シェア
なかでもアフリカ市場で、トランシオンは「アフリカのスマホ王」と呼ばれるほどの存在感を持つ。
市場調査会社カナリスのデータによれば、トランシオンの2023年7〜9月期のアフリカ市場向け出荷台数は860万台に上り、48%という圧倒的な市場シェアを獲得した。同社は中東市場でもメーカー別シェアで第2位につけている。
トランシオンの躍進を後押ししたのは、新興国のスマホ市場の急成長にほかならない。その勢いを受け、2年連続で縮小していた世界市場は底入れに向かいそうだ。テックインサイツは、2024年の世界のスマホ出荷台数が前年比3%増加すると予想している。
(財新記者:翟少輝)
※原文は2月3日配信
(財新 Biz&Tech)