中国BYD、ハンガリーを足場に欧州市場を攻略へ
BYDの工場用地購入に関する調印式には、ハンガリーの外務貿易相と中国の駐ハンガリー大使が立ち会った(写真は同社ウェブサイトより)
中国のEV(電気自動車)最大手の比亜迪(BYD)は、ヨーロッパのハンガリーに乗用車の完成車工場を建設する。同社は1月31日、ハンガリーのセゲド市政府と工場用地の購入に関する協議書に調印。その式典にはハンガリーのペーテル・シーヤールトー外務貿易相と、中国の龔韜見・駐ハンガリー大使が立ち会った。
「BYDはハンガリー政府と交渉を重ね、(BYDにとって)ヨーロッパで最初の乗用車工場をハンガリーに建設することを決めた。これはハンガリーにとって最も重要な投資プロジェクトの1つだ」。在ハンガリー中国大使館がウェブサイトで公表した情報によれば、上述の式典でシーヤールトー氏はそう述べた。
3年以内の工場稼働目指す
乗用車工場の建設は、BYDにとってハンガリーへの初めての投資ではない。同社は2016年、約2000万ユーロ(約31億9000万円)を投じてハンガリーに電動バスの工場を建設し、稼働させた実績がある。
BYDによれば、ハンガリーの乗用車工場では主にヨーロッパ市場向けの車種を現地生産する計画で、3年以内の操業開始を目指している。なお、同社は乗用車工場建設の投資規模については公表していない。
近年、ハンガリーは(ヨーロッパの中央に位置する)地理的な利便性や(ハンガリー政府の)さまざまな優遇政策をテコにして、海外のEV関連企業の投資を惹きつけている。
BYDはすでにハンガリーで電動バスを現地生産している(写真は同社ウェブサイトより)
中国からは車載電池大手の寧徳時代新能源科技(CATL)を筆頭格に、欣旺達電子(サンオーダ)、億緯鋰能(EVEエナジー)などの電池メーカーがハンガリーに進出。新興EVメーカーの蔚来汽車(NIO)は、電池交換式EV向けの(ユニット式の)電池交換ステーションをハンガリーで生産している。
すでに欧州19カ国に進出
高い購買力を持つヨーロッパ市場は、中国のEVメーカーにとって魅力的な進出先だ。ヨーロッパには現地の自動車ブランドがひしめき、中国ブランドが足場を築くのは容易なことではない。だがそれに成功すれば、中国国内やヨーロッパ以外の海外市場でもブランド力の向上につながる。
BYDもヨーロッパ市場の開拓を極めて重視している。同社は2021年、まずノルウェー向けに乗用車の輸出を開始。2022年10月からヨーロッパ各国への本格展開を開始した。
現在までに、BYDはヨーロッパ市場に5車種の乗用車を投入。進出先はドイツ、イギリス、スペイン、イタリア、フランスなど19カ国に広がり、販売店舗数は合計140店を超えた。
(財新記者:余聡)
※原文の配信は2月1日
(財新 Biz&Tech)