妻が「夫の物を勝手にフリマアプリに…」 売上金は誰のもの? 弁護士が解説
夫もしくは妻、または家族が使っていない洋服や靴、インテリアを許可なく「フリマアプリなどに出品しちゃった」という人はいるのではないでしょうか。実際に売れて入った売上金は、 所有者のものなのか、売った人のものなのか…。そのような疑問について、佐藤みのり法律事務所の佐藤みのりさんに聞いてみました。
許可なく売却するのは「不法行為」
Q.ずばり、夫(妻)の不用品を許可なくフリマアプリなどでもうけた売上金は、所有者と売却者のどちらになるのでしょうか。
佐藤さん「現金は、原則、所持している人の所有になります。そのため、売上金についても、現に受け取った方の所有になります。
しかし、夫または妻個人の所有物を相手の許可なく売却する行為は、不法行為にあたるため、売却された側は売却した側に対して、売られてしまった物の時価相当額(売却した時点の価格)の賠償を求めることができます(民法709条)。そのため、結果的に、物の所有者は売上金相当額を受け取ることができるでしょう。
なお、夫または妻個人の所有物を勝手に売却する行為は、窃盗罪といった犯罪にあたる行為でもあります。夫婦の間で窃盗罪を犯しても刑が免除されるため(刑法244条)、罪に問われることはありませんが、夫婦とはいえ、相手の所有物を勝手に売却するのはやめましょう」
Q.金銭目的ではなく、勝手に、パートナーの物を捨ててしまった場合はどうなるのでしょうか。
佐藤さん「パートナーの同意なく勝手に捨てることも同様に、不法行為にあたります。そのため、処分された側は処分した側に対して、捨てられてしまった物の時価相当額(廃棄した時点の価格)の賠償を求めることができます。
なお、夫または妻個人の所有物を勝手に処分する行為は、器物損壊罪にあたります。器物損壊罪の場合、処罰には告訴が必要なので(刑法264条)、もしパートナーの罪を問いたいのならば告訴する必要があります。ただし、夫婦間の問題であるため、警察から告訴について再考を促されることも多いでしょう」
Q.勝手に売却、廃棄した場合、離婚に発展するケースなどはあったりするのでしょうか。
佐藤さん「勝手にパートナーの物を売ったり捨てたりしたことによって、夫婦仲が悪くなり、離婚に発展することは考えられます。
相手が離婚に応じない場合、勝手に物を売られたり、捨てられたりしただけでは、法律で定められた離婚事由にあたらない可能性が高く、裁判で離婚を認めてもらうことは難しいでしょう。
しかし、それに加えて、別居期間が長いなど、他の事情も加われば、『婚姻を継続し難い重大な事由』と認められ、離婚できる可能性もあります。
夫婦の財産は、家電や家具など、夫婦どちらのものと決めずに購入することも多く、法的には『共有』と考えられるものがたくさんあります(民法762条2項)。一方、『婚姻前から有する財産および婚姻中自分の名で得た財産』は夫婦の一方が単独で有する財産になります(民法762条1項)。
共有であれ、相手の所有物であれ、完全な“自分の物”ではありませんから、勝手に売ったり捨てたりすることは避け、話し合って決めることが大切です」