(左から)高遠 丞:北園 涼、ガイ:輝馬

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MANKAI STAGE『A3!』ACT2! の2周目を締めくくる冬組公演、「ACT2! ~WINTER 2024~」より、劇中劇である第五回公演『剣に死す。』主演の高遠 丞役・北園 涼&準主演のガイ役・輝馬が登場。積み重なっていくエーステの歴史の中、変化を楽しみながら歩み続けるその思いを語り合ってもらった。
 

ーー昨年の冬組公演は1~2月に上演された「~WINTER 2023~」。どんな印象が残っていますか?

北園:新しくガイ役の輝馬が入って、劇中劇で初めての主演を担当。でも何も違和感なく、というか……馴染みすぎているから、輝馬(笑)。キャストのみんなもほぼ知り合いで、世代的にも性格的にも相性が良かったのがすごい感じられて。

ーーガイ主演の劇中劇は第四回公演『怪人Fと嘆きのオペラ』。大劇場のミュージカルのような様相で劇中劇自体の演出もさらにパワーアップ、ランクアップした表現に唸りました。

北園:そう、間違いない。そこで輝馬が……ガイが演じたファントムの力強さや素晴らしい歌声、そういうものを観た多くのお客様も納得したというか驚愕したというか、全体的にそんな作品になっていたんじゃないかと思います。

輝馬:僕は(取材時点では)「前回の冬組公演からまだ1年経ってないんだ!」って思いました(笑)。涼が言ったように……入った側として言うのもなんですが、ホントに違和感のない現場で、ありがたいことにみんな優しく受け入れてくれてすごく助かりました。ファントムはあんな風にストーリー仕立てで歌い上げることもなかなかないのですごく楽しかったですし、そもそもカンパニーの力強さだったり冬組みんなの熱量だったりがすごかったので、僕自身、周りからもたくさん力をもらっていました。お仕事とはいえとてもやりやすくて楽しい現場でしたね。

北園:いや、我々が輝馬に引っ張られてたんです、あれは。輝馬のファントムがあったから、たぶんみんなのパフォーマンスもああいうふうになっただろうし……輝馬にしかできないファントムだったなって思いますよ。

輝馬:嬉しい。僕、全員知ってる人たちだったんですけど、エーステをやって、その知ってる人たちの新しい一面がまたいろいろ見えて、劇中劇でも「この人こんなに熱くできるんだ」とか、新鮮な感触が結構あったのも良かったです。ただエーステの世界観って外から見る分には「すごくおもしろいな」って思っていたんですけど、やると結構大変ですね。

北園:そうなんだよね。なかなかないもん、ああいう感じ。

月岡 紬:定本楓馬          (C)Liber Entertainment Inc. All Rights Reserved. (C)MANKAI STAGE『A3!』製作委員会

ーー役者をやっているキャラクターを演じ、さらにそのキャラクターが物語の中で劇中劇の舞台にもうひとつ別の役で立つという入れ子構造。

輝馬:そこの設定を引きずりすぎるとなかなか難しいな、と思いました。だから自分は逆にもう全部を完全に切り替えて……「演じながら演じる」っていうのではなく、「ただ演じる」に徹しました。

北園:僕もまだまだ探しながらやってるところはありますけど、やっぱり高遠 丞という男も成長してるし、その中で僕自身もいろんな現場を踏んで毎回『エーステ』の世界に戻ってくるわけだから、そこもリンクさせつつ高遠 丞らしい芝居をしたいなと常に思ってます。輝馬と似ているけど「役が役を演じる」っていう感覚の層を作るというよりは、「高遠 丞だったらどうするか」を考えて、それを演じてるっていう感じ。役作りとしてフィルターは一個通すんですけど、『怪人Fと嘆きのオペラ』だったら「北園 涼が、高遠 丞が考えるラウルを演じる」。だから、ラウルは僕が演じてます。なんかそういう感じ。

ーー北園さんから見た輝馬さん、輝馬さんから見た北園さん。お二人はどんなふうにお互いのことを見ているのでしょうか。

輝馬:涼もそうですけど、涼だけじゃなくて冬組はみんなほんとに頼りになります。まず、放っとくべき時には放っといてくれるありがたさっていうのがあるので……そういう部分、全然世話焼きとかじゃないっていうのがすごく心地いいなって。みんなそれぞれにありがたいですね。なにしろ僕自身が放っといて欲しいほうなので、そういう空気を読み取ってちゃんと構わないでくれるのがすごく助かる。たまに甘えたい時も、こっちからじゃなくてたぶんそれを察して向こうから寄り添ってくれるし。本当にみーんな、人として素敵です。

北園:輝馬は3年前ぐらいに一回共演して以来の再会なのでちょっと間は空いてしまいましたけど、変わらないなぁって。当時から一緒にご飯へ行かせてもらったりとかしていたプライベートの面もそうだし、お芝居の向き合い方もいつもすごく真摯で、真面目でまっすぐで、しっかり「自分で作り上げたい」という意志も感じられるし。みんなが放っておくっていうのも、たぶんそういう人だからこそそうできる関係になれているんでしょうね。その上で「でももし困ってきたなら助けるよ」みたいなのが冬組なので。輝馬が言うように人としてちゃんとしてるなっていうのを、僕も冬組のみんなにすごく感じてます。

輝馬:なんかね、みんないいの。しかも全く違う感じで。

北園:うんうん。「これは嫌だろうな」「今これを求めてるかもな」「これに悩んでるな」がね、みんな分かりやすいのかもしれないですね、いい意味で。お互いの違いを知って、理解しあう関係。

御影 密:植田圭輔          (C)Liber Entertainment Inc. All Rights Reserved. (C)MANKAI STAGE『A3!』製作委員会

ーー演出の松崎(史也)さんとの共同作業はいかがでした?

輝馬:稽古場では毎回こちらの小さな変化だったり心動いたものをすごく敏感にキャッチして話しかけてくださいますし、そういう部分ではすごく繊細に作らせてもらいました。あるシーンも最初は動き回るはずだったんだけど、自分はそこはあまり動きたくないですとお話してそちらを取り入れてもらったということもあったし、アイデア出しも自由にやりとりしながらうまく作ることができたなって思います。

北園:史也さんのイメージしているものは一旦しっかり伝えてくださって、でもその上で僕らがどう動くのかっていうのはすごくフリーにやらせてくださる。で、役者同士で考えて「じゃあこうしよう」とかっていう僕らのセッションを……史也さんもちゃんと聞いてくださっていて、いざ必要な時には手助けしてくれる、みたいな感じで進めることが多いですね。

輝馬:「松崎さんっていいなぁ」って思うところは、同じ内容でも相手によって言い方ややり方を変えて合わせてくれるところ。一人ひとりに向き合って演出をつけてくれるのが、もうカウンセラーみたいなんですよ。個々に合った処方箋を出してくださって。なので、すごくクレバーな方だなっていうのをずっと感じながら接していました。以前ご一緒した時はすごく情熱的な史也さんだったので、その時とのギャップもなんか可愛いな、と思ったり(笑)。

北園:うんうん。史也さんは役者に対する気遣いがホントに素敵で、熱く、そしてロマンチスト。

輝馬:そう、ホントにロマンチストだと思う!

ーーそして迎える「ACT2! ~WINTER 2024~」。

輝馬:自分にとってまだ2回目ですし、とにかく劇中劇がね、今はまだ全く謎です!(笑)。前回は歌に全振りでしたけど、次は歌、芝居、アクション……違うセンテンスが加わることでどうなるんだろう?? っていうのは正直ありますね。まぁ、そこは新鮮にやらせてもらおうかなって。

ーー第五回公演『剣に死す。』北園さん演じる丞が宮本武蔵で主演、輝馬さん演じるガイが佐々木小次郎で準主演の劇中劇ですね。

北園:初めての高遠 丞の主演公演。どうですかねぇ、でも今までみんなが主演やっているのを見てきて、やっぱりすごく頼りになったし、主演のあり方みたいなのがそれぞれにあるので、僕も僕らしくそこに立たせていただこうかなとは思ってるんですけど……そうだなぁ、そこの真ん中から見える景色みたいなのは楽しみですね。そこから見えるものってたぶん今まで見てきたものと違うはずだから、僕にはきっともっと冬組のみんなが素敵に見えるんじゃないかな。あとは時代劇ですからね、輝馬との殺陣もあるでしょうし。丞にまつわるストーリーについてはまだ原作のどこを表現するのか、どのセリフが生きてくるのかっていうのが分からないので、そこはこれから現場でみんなと一緒に作っていきたいです。

MANKAI STAGE『A3!』ACT2! ~WINTER 2024~       (C)Liber Entertainment Inc. All Rights Reserved. (C)MANKAI STAGE『A3!』製作委員会

ーー月岡 紬役の定本楓馬さんは冬組単独公演としては今作が初登場で。

北園:そっか。僕はこの間の「ACT2! ~SPRING 2023~」に二人で参加してたんだけど……。どうですか?

輝馬:楓馬でしょ。彼なら心配はないでしょう。頼りにしてますよ。いい意味ですごく個性の強いヤツだし、そこがうまいバランスになって、いいチームになると思います。でもなんか、似てるんだよな、荒牧(慶彦)くんに……と、僕は思っている。ちょっと変な言い方になるんですけど、目の奥がすごく似てるんです。目を見て話しているときの「ああ、わかるなぁ」っていう、ちょっと深い感じとかが。

北園:そうなんだ。年齢的には今まで(有栖川 誉役の田中)涼星が末っ子だったけど、そこが楓馬に代わるんだよね。

輝馬:平均年齢を下げてきたな。やばい。ちょっと僕たちおじさん枠になっちゃう??

北園:いや、(雪白 東役の上田)堪大さんいますよ、最年長。

輝馬:おお、よかったよかった(笑)。

ーー今回第五回公演に続いて第六回公演『Risky Game』もあり、劇中劇が2本のスタイルに戻ります。

北園:それね。また戻ってきたよ~、2本体制! 稽古がね、すごいんですよ、頭バグります。1幕で1個の劇中劇とそれについてのお話。そして2幕もまたもう1個の劇中劇とそれについてのお話だから、単純に1公演で2作やってるわけじゃないですか。もうそこはしっかり切り替えなきゃなって、休憩中に思ってた記憶がありますね、かつて。

輝馬:1時間半程度の作品を、休憩挟んで2回やってる感じだよね。それ、まだ未体験なんだけど--

北園:結構メンタル面もしっかり持っておかないと負けそうになる時があります、この体制は。もう「やるぞー!」っていかないと。

輝馬:そうだよね。今回は1幕でもうかなり動くだろうし、前半でくたくたになっちゃうかも。

北園:そう、年齢高めだから……我々は(笑)。

輝馬:そう、足腰気をつけないと……って(笑)。

有栖川 誉:田中涼星          (C)Liber Entertainment Inc. All Rights Reserved. (C)MANKAI STAGE『A3!』製作委員会

ーー「ACT2! ~AUTUMN 2023~」では劇中劇でドローンが撮った映像をリアルタイムでスクリーンに映し出したりもしていました。冬組ならではの新たな演出も期待してしまいます。

輝馬:ドローンは専門職だから操作の方がずっといてくれたってことですよね。僕もドローンの免許取りたいんだよなぁ。ちなみに僕も出させていただいた「ACT2! ~SUMMER 2023~」の東京公演は水を使ってました。舞台ツラの前にちょっと浅いプールを作って、そこでガチで好きなようにバシャバシャ飛び込むっていう。だからもうびしょびしょよ(笑)。

北園:なにーっ? びしょびしょでいいんだ(笑)。夏っぽいね。素晴らしい。

輝馬:だから僕、松崎さんに「夏は水なら冬は雪降らしてくれるんですよね?」って言ったんだけどね。

北園:降雪機?(笑)。できるのかなぁ、そんなこと。

輝馬:んー、じゃあ他にまだやってないことなら……フライングとか!?

北園:だったら僕はバイクで登場したい。「高遠 丞、ハーレーに乗って登場します!」なんてね。冬組だったらオーケストラをバックにしても似合いそうだよね。

輝馬:いいねぇ。じゃあぜひフルオケで!

ーー夢が広がりますね。

輝馬:春・夏・秋・冬……冬組は4番目だからこそのプレッシャーもありますし、逆に最後だからこその楽しさもあります。締めだからこそおいしいというか、今まで各組がお客様へと投げていたものを総括し、一番いい形でかっさらってやろう、という意気込みでやれるのもいいなぁって。冬組が最後でよかったなって思ってます。

北園:僕はあんまりそういう順番とかは気にしてないんだけど、でもそうやってずっと繋がっていく思い、みたいなものは大事にしたいと思っています。また、「ACT2! ~SPRING 2023~」初めてサポートという立場で出演した時に、サポートの大変さだったりありがたみっていうのを今まで以上に実感したんです。なのでそこへの気持ちみたいなのも今回、より多く乗っけて、そしてまた次の春へと繋げていきたいですね。ここまでみんなが見せてくれた素晴らしい公演と同じように、僕たちも責任を持って冬組公演をやっていきたいなと思っています。

輝馬:わかる。僕も「ACT2! ~SUMMER 2023~」で初めてサポートやらせてもらって、あらためて「田口さんてすげー!」って思った。

北園:確かにそれはそう。あの人はすごい。

雪白 東:上田堪大          (C)Liber Entertainment Inc. All Rights Reserved. (C)MANKAI STAGE『A3!』製作委員会

ーー松川支配人役の田口 涼さん。

輝馬:はい。ご一緒して尊敬度が一気に爆上がりしました。

北園:田口さんに、雄三さん役の鯨井(康介)さんに……みなさんのサポート、すごいです。感謝です。

輝馬:鯨井さんって実は歌もめちゃくちゃ素敵なんですよ。ファンキーなかっこいい声で、ダンスもバチバチかっこいいし。だから僕はいつも「うわー、歌ってほしい」とか思いながら隣にいました(笑)。

北園:それいい! 雄三さんと支配人の曲が1曲ぐらいあってもおかしくないよね。むしろそれをやらないなんて、エーステは損してると思う!

輝馬:損してます! もったいないです! お二人にも歌わせるべきです。

北園:あぁ~、それはぜひどこかで入れていただきたいなぁ。

ーーエーステの可能性はまだまだ無限! 本番がますます楽しみになってきました。

輝馬:僕はまだまだ入り立てで右も左も分かっていないので、その中でどう冬組のみんなと力を合わせてやっていけるか……でもまぁ大好きな人たちばっかりなので、多分大丈夫でしょう! そして史也さんの頭の中の世界がどんな演出で表現されるのかは--みなさん、ホントに楽しみにしてほしいなと思いますし、僕自身もすごく楽しみなので、一緒に見届けてくださいね。ぜひ劇場でお会いしましょう。

北園:エーステはもう何年もやらせていただいていますけど、今回楓馬が入ってきて、そして輝馬も2回目で……顔ぶれも変化はしているのですが、そもそもストーリーごとに中心になる人物が変わると、毎回新しい冬組になっていくように思えるんです。その楽しい変化を毎回僕たち自身も感じているので、作品もいつまでもマンネリ化しないんだろうなとも思っています。もちろん今回もお客様には新しい冬組の物語を楽しんでいただけるはず。ぜひぜひ、本番を楽しみに待っていてください。

取材・文=横澤由香