人気の資格「宅地建物取引士」とは? 転職に有利? 不動産のプロが解説する取得のメリット
以前から人気が高い資格の一つに「宅地建物取引士」(宅建)があります。取得を検討している人は多いと思います。そもそも、宅地建物取引士とはどのような資格なのでしょうか。この資格を取得することで転職時に有利になる可能性はあるのでしょうか。資格を取得するメリットなどについて、不動産鑑定士・宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士の竹内英二さんに聞きました。
金融業界や建設業界でも役立つ資格
Q.そもそも、宅地建物取引士とはどのような資格なのでしょうか。資格を取得することで可能な業務も含めて、教えてください。
竹内さん「宅地建物取引士とは、主に不動産会社(宅地建物取引業者)に勤務している人を指します。不動産会社の事務所には、5人に1人以上の割合で宅地建物取引士が在籍しなければならないとされています。宅地建物取引士は、買い主や借り主に対し、売買契約や賃貸借契約を締結する前に重要事項説明を行います。
また、重要事項説明書のほか、契約書である『37条書面』に署名、押印できるのも宅地建物取引士で、彼らは都市計画法や建築基準法、民法、宅地建物取引業法などの不動産に関連する法律の知識を持っています」
Q.では、宅地建物取引士の資格を取得した場合、どのようなメリットがあるのでしょうか。ネット上では、「転職に有利」「独立も可能」という情報がありますが、本当なのでしょうか。
竹内さん「宅地建物取引士の知識が求められる業界は幅広く、不動産業界だけでなく、金融業界や建設業界でも活躍している人たちは多くいます。少なくとも不動産業界内での転職は有利です。
不動産業界といっても、仲介会社やデベロッパー(開発事業者)、投資会社、管理会社など、さまざまな領域の会社が存在します。宅地建物取引士を持っていれば、不動産業界内のさまざまな領域の会社へ転職しやすいです。
また、金融業界や建設業界の中でも、宅地建物取引士は転職に有利なアピール材料となります。宅地建物取引士を保有し、仲介の実務経験をしている人であれば、不動産会社を設立して独立開業することは可能です」
Q.近年、宅地建物取引士の人気が高まり、試験の難易度が高くなっているという情報がありますが、本当なのでしょうか。試験に合格するのに必要な勉強時間(目安)も含めて、教えてください。
竹内さん「宅地建物取引士の合格率は15〜17%程度となっており、6〜7人に1人しか合格できない試験であることから、難しい資格です。資格制度が創設された当初の昭和30年代には合格率が50%超の時期もあったようです。
その後、合格率は徐々に下がっていき、平成に入ってからは、現在の合格率と同水準で推移しています。そのため、昭和の時代と比べれば難易度は高くなったとは言えますが、少なくともここ30年程度は、難易度に変化はあまりありません。
勉強時間の目安は300〜500時間程度といわれています。ただし、むやみに時間をかけても合格するわけではなく、あいまいな知識をきちんと排除していく学習が合格への近道です」
Q.ちなみに、宅地建物取引士と不動産鑑定士は何が違うのでしょうか。
竹内さん「不動産鑑定士とは、不動産の適正な資産価値を評価する国家資格者です。試験の難易度は宅地建物取引士よりも不動産鑑定士の方が高いです。宅地建物取引士に合格後、不動産鑑定士にチャレンジする人が多いことから、結果的に不動産鑑定士は、宅地建物取引士の資格も保有している人が多いです。
試験の難易度のほかにも、両者は独占業務が違います。不動産鑑定士は不動産鑑定評価書の作成が独占業務であるのに対し、宅地建物取引士は重要事項説明などが独占業務になります」
宅地建物取引士の資格を取得すると、不動産業界だけでなく金融業界や建設業界などへの転職も有利になる可能性があるということです。これらの業界に転職したいと考えている場合、資格の取得を検討してみるとよいかもしれません。