医療痩身（メディカルダイエット）の初診～施術の流れ・費用を知っていますか？ 医師解説
「肥満」は今や単なる見た目の問題だけではなくさまざまな病気を引き起こすリスクであり、場合によっては治療の対象にもなるそうです。そこで今回は肥満のリスクや「医療痩身」の初診・施術の流れ、治療方法について消化器外科医の春田 英律先生（Lucina新宿四谷クリニック院長）にお聞きしました。
監修医師：
春田 英律（Lucina新宿四谷クリニック）
北里大学医学部卒業後、結城病院外科副部長や那須南病院外科医長、地域医療機能推進機構うつのみや病院外科部長などで経験を積み、現職。日本外科学会専門医・指導医、日本消化器内視鏡学会専門医・指導医、日本消化器外科学会専門医・指導医、ミラドライ公式認定医。
医療痩身って何？ 専門医が解説！
編集部
医療痩身について教えてください。
春田先生
医療痩身は、「メディカルダイエット（Medical Diet）」とも呼ばれ、医療機関が提供する、医薬品や医療機器を用いて行うダイエットを意味します。メディカルダイエットの治療には、生活習慣改善や薬物治療などがあります。
編集部
肥満は病気なのでしょうか？ 肥満だとなぜいけないのですか？
春田先生
肥満は世界中で大きな問題になっており、日本も例外ではありません。肥満というと、単なる「見た目の問題」と捉えられがちですが、決してそうではないのです。肥満は「糖尿病」「高血圧」「痛風」「睡眠時無呼吸症候群」「運動器（ひざ、股関節、脊椎）疾患」など、さまざまな病気のリスクになります。
編集部
見た目の問題だけではないのですね。
春田先生
そうですね。ほかにも「スティグマ」といって、太っていることが原因で社会から差別的に扱われたり（社会的スティグマ）、それにより自信がなくなり、引きこもりぎみになってしまったりする（自己スティグマ）という悪循環に陥るリスクもあります。
肥満の治療「医療痩身（Medical Diet）」ってどんなことをするの？
編集部
医療痩身（Medical Diet）ではどんなことをするのですか？
春田先生
主に生活習慣改善や薬物治療などを行います。生活習慣改善は、具体的には食事制限と運動を指します。ただし、これらはダイエットの基本であるとわかっているものの、減量効果が現れるまで継続するのは難しいという方がたくさんいらっしゃいます。
編集部
自分の意思だけで続けるというのは難しいですよね。
春田先生
そうですね。ご自身で食事・運動療法を続けるのが難しく十分な効果も得られない、一方で手術を受けるのは抵抗がある、と考える方は少なくありません。そんな方には、両者の中間に位置する薬物治療があります。近年、高い体重減少効果を有する薬物も出てきています。
編集部
例えばどんな薬物がありますか？
春田先生
一般的に処方される薬の中で代表的なものである「GLP-1（ヒトグルカゴン様ペプチド-1）製剤」は、脳の食欲中枢に作用して食事摂取量を減らす、胃や腸の動きを抑えることで食べものが長く胃内にとどまり、満腹感が得られやすくなるなどの作用があります。実際に体重減少効果が認められたという研究もあり、糖尿病治療薬として日本でも保険適用されています。
GLP-1を用いる場合の適応症は「肥満症」ですが、高血圧、脂質異常症又は2型糖尿病のいずれかを有し、食事療法・運動療法を行っても十分な効果が得られず、以下2つのいずれかに該当する場合も条件として挙げられています。
①BMIが27kg/m²以上であり、2つ以上の肥満に関連する健康障害を有する
②BMIが35kg/m²以上
病院でできるダイエット、「医療痩身（Medical Diet）」の流れを教えて！
編集部
では、実際に医療痩身を受けるときの流れを教えてください。
春田先生
当院の場合は、初診の際に詳細な問診に加えて、必要に応じて体重計測や血液検査を行い体の状態を評価します。また、当院ではオンライン診療も行っているのですが、初診時にオンライン診療を希望される方は、半年以内の採血結果をお持ちいただけると助かります。それらのデータを踏まえ、患者さんと相談のうえで治療方針を決定し、生活習慣の指導や薬剤の処方を検討します。
編集部
なるほど。相談しながら決められるのですね。
春田先生
もちろんです。さらに、2回目以降の来院の際も、問診、体重計測、必要に応じて血液検査などを行い、治療効果を確認します。そこで得られた情報や医師の診察結果を踏まえて、薬剤の追加処方なども行います。医療痩身は、ただ「薬を飲んで痩せる」といったものでなく、医師の診察に基づくれっきとした「治療」となります。
編集部
費用についても気になります。
春田先生
「医療痩身」の場合は保険が適用されず自由診療なので、費用が気になるという方は多いと思います。どんな薬でもそうですが、吐き気などの副作用が起きる可能性を踏まえて最初は少ない量から始め、効果と副作用のバランスを見ながら徐々に量を増やしていきます。ですので、薬の種類によりますが最初の1ヶ月分だと約2万円になります。これはあくまでも当院の場合ですので、事前にいくつかの医療機関での費用を比較してみると良いと思います。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
春田先生
基本的には、栄養バランスの良い食事と適切な運動を継続していれば、ダイエットの必要はなく、お薬を使う必要もありません。しかし、なかなか自分の意志だけで痩せるのが難しいという方もいらっしゃいます。肥満を放置してしまうと、先ほどお伝えしたような病気や運動器疾患などを引き起こす恐れもあります。そうならないためにも、一度、医療機関に相談してみるのも良いのではないでしょうか。薬以外にも医療痩身の方法はありますので、専門家に相談しながら計画的にダイエットを進めてみましょう。これまで自己流で痩せなかった方も、医師に相談すれば何か良い方法が見つかるかもしれません。
編集部まとめ
今回は「医療痩身」について、お話を伺いました。肥満は単なる見た目の問題ではなく、さまざまな病気や運動器疾患、スティグマなどを引き起こすのですね。1人で頑張っている方や、これまで自己流のダイエットで結果が出なかった方などは、一度専門家に相談してみると良いかもしれません。
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