2024年1月9日、CES 2024で発表されたNVIDIAの最新GPU「GeForce RTX 40 SUPER」シリーズ。今回「GeForce RTX 4070 SUPER Founders Edition」を試用する機会を得たので、さっそくレビューをお届けしたい。RTX 4070 Ti / 4070、RTX 3070とパフォーマンスや消費電力の違いをチェックしていく。

「GeForce RTX 4070 SUPER」を10種類以上のベンチで徹底レビュー。ほぼ“低消費電力版”RTX 4070 Ti級

「GeForce RTX 40 SUPER」シリーズは、RTX 40シリーズに新たに加わったGPUだ。現在のところRTX 4080 SUPER / RTX 4070 Ti SUPER / RTX 4070 SUPERが発表されている。ここで紹介するGeForce RTX 4070 SUPERは、RTX 4070をベースにCUDAコア数を約20%増加させたもの。これによってCUDAコア数は7,168基になり、上位GPUであるRTX 4070 Tiの7,680基にかなり近くなった。

それでいて、カード電力はRTX 4070からわずか20W増えただけ(200W→220W)。RTX 40シリーズは総じてワットパーマンスに優れているが、RTX 4070 SUPERも同様かそれ以上と見てよいだろう。WQHD解像度での快適なゲームプレイをターゲットとし、なんとRTX 3090を上回る性能を実現したとしている。

NVIDIAの「GeForce RTX 4070 SUPER Founders Edition」(残念ながら日本での発売予定はない)。NVIDIAから発表されたRTX 4070 SUPERの価格の目安は86,000円から。2023年1月17日発売スタートだ

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RTX 4070 SUPERはRTX 4070からCUDAコア数の増加に加えて、2次キャッシュも36MBから48MBへとアップし、RTX 4070 Tiと同等になった。2次キャッシュ量が増えれば、ビデオメモリへのアクセス頻度が減り、ワットパフォーマンスはより高まる。その点でも、RTX 4070 SUPERはRTX 4070 Ti寄りのスペックと言ってよい。

原稿執筆時点でメーカーから発売される製品の価格は不明だが、NVIDIAが目安としている86,000円に近い価格ならばかなりお得感がある。RTX 4070の実売価格が最安値クラスで84,000円前後、RTX 4070 Tiは最安値クラスでも116,000円前後だからだ(2024年1月中旬、編集部調べ)。

ただし、RTX 4070 TiはNVENCを2基搭載しており、同時使用してのデュアルエンコードが可能だが、RTX 4070 SUPERは1基のみなので非対応。この違いがある点は注意しておきたい。

そのほか、Ada Lovelaceアーキテクチャの採用など基本的な特徴はこれまでのRTX 40シリーズと同じだ。特徴についてはRTX 4090のレビュー『「GeForce RTX 4090」の恐るべき性能をテストする - 4K+レイトレで高fpsも余裕のモンスターGPU』で確認してほしい。

性能テスト前に、GeForce RTX 4070 SUPER Founders Editionを紹介しておこう。カード電力は220Wで、ブーストクロックは2,475MHzと定格通りだ。カードのデザインについては『CES 2024発表の「GeForce RTX 4070 SUPER」がさっそくやってきた! 開封の儀を行う!!』で詳しく紹介している。

GeForce RTX 4070 SUPER Founders Edition。デザインはGeForce RTX 4070 Founders Edition(左)と同じだが、ブラック基調のシックなカラーリングになった

GPU-Zによる情報。ブーストクロックが2,475MHzと定格通り

カード電力は定格の220Wに設定されていた

RTX 4070を上回り、ワットパフォーマンスはさらに向上

さて、性能チェックに移ろう。テスト環境は以下の通りだ。Resizable BARは有効にした状態でテストしている。比較対象としてGeForce RTX 4070 TiとGeForce RTX 4070、GeForce RTX 3070を用意した。CPUのパワーリミットは無制限に設定。ドライバに関しては、RTX 4070 SUPERはレビュワー向けに配布された「Game Ready 546.52」を用い、それ以外は「Game Ready 546.33」を使用している。

CPU:Intel Core i9-13900K(24コア32スレッド)

マザーボード:MSI MPG Z790 CARBON WIFI(Intel Z690)

メモリ:Micron Crucial DDR5 Pro CP2K16G56C46U5(PC5-44800 DDR5 SDRAM 16GB×2)

システムSSD:Western Digital WD_BLACK SN850 NVMe WDS200T1X0E-00AFY0(PCI Express 4.0 x4、2TB)

CPUクーラー:Corsair iCUE H150i RGB PRO XT(簡易水冷、36cmクラス)

電源:SUPER Flower LEADEX V G130X 1000W(1,000W、80PLUS Gold)

OS:Windows 11 Pro(22H2)

さらに、ビデオカードの消費電力を実測できるNVIDIAの専用キット「PCAT」を使用し、ゲーム系のベンチマークではカード単体の消費電力も合わせて掲載する。PCATは、12VHPWRでの接続にも対応した最新モデルだ。

ビデオカード単体の消費電力を正確に測定できるNVIDIA「PCAT」。この基板のほか、PCI Express x16スロットに装着するライザーカードと組み合わせて使用する

まずは、3D性能を測定する定番ベンチマークの「3DMark」から見ていこう。

『3DMark』性能

CUDAコアの増加分、順当にRTX 4070から15〜20%の性能向上が確認できる。上位GPUのRTX 4070 Tiに対しては、DirectX 11ベースのFire Strikeはほぼ同等のスコアを出した。そのほかも10%低い程度だ。かなりRTX 4070 Tiに迫っていると言ってよいだろう。

次は、実際のゲームを試そう。まずは、軽めのFPSとして「レインボーシックス シージ」と「Apex Legends」を実行する。アップスケーラーは使用せず“素”の性能を確かめていきたい。レインボーシックス シージはゲーム内のベンチマーク機能を実行、Apex Legendsはトレーニングモードの一定コースを移動した際のフレームレートをそれぞれ「FrameView」で測定している。

『レインボーシックス シージ』性能

『レインボーシックス シージ』動作時の電力消費

レインボーシックス シージに関しては、RTX 4070 SUPERとRTX 4070の差はそれほど大きくないがポイントは消費電力だ。フレームレートで上回りながらもフルHDはRTX 4070 SUPERのほうが消費電力が小さく、WQHDでもほぼ同等だ。2次キャッシュ増量が効いているのか、ワットパフォーマンスは良好と言える。

『Apex Legends』性能

『Apex Legends』動作時の電力消費

Apex Legendはフレームレート制限を解除するコマンドを使っても最大300fpsまでしか出ない。そのため、RTX 4070 Ti / RTX 4070 SUPER / RTX 4070はフルHDだとほぼ上限に到達している。このゲームでもRTX 4070 SUPERとRTX 4070のフレームレートの差は小さいが、消費電力はフルHDとWQHDではRTX 4070 SUPERのほうが小さい点に注目したい。

続いて、アップスケーラーのないタイトルとして「ストリートファイター6」と「ARMORED CORE VI FIRES OF RUBICON」を試そう。ストリートファイター6はCPU同士の対戦を実行した際のフレームレート、ARMORED CORE VI FIRES OF RUBICONはミッション「武装採掘艦破壊」で一定コースを移動した際のフレームレートをそれぞれ「FrameView」で測定している。

『ストリートファイター6』性能

『ストリートファイター6』動作時の電力消費

ストリートファイター6は120fpsまで設定できるが、対戦時は上限60fpsに固定される。今回使用したGPUならば、最高画質設定でも4Kまで快適にプレイが可能だ。そのためポイントは消費電力になる。フルHDと4Kでは、RTX 4070 SUPERがもっとも低消費電力になった。フルHDではわずか39.7Wという低消費電力を実現しており、これで平均60fpsに到達できるのは驚きのワットパフォーマンスと言える。

『ARMORED CORE VI FIRES OF RUBICON』性能

『ARMORED CORE VI FIRES OF RUBICON』動作時の電力消費

ARMORED CORE VI FIRES OF RUBICONは、最大120fpsでプレイ可能なゲームタイトルだ。RTX 4070 TiはWQHDまでほぼ上限に到達しておりさすがの性能。しかし、RTX 4070 SUPERは4Kでも平均60fpsオーバーという十分遊べるフレームレートを出している点に注目したい。消費電力はRTX 4070に対してWQHDと4Kは約20Wアップと、スペック通りの順当な差が出ている。

DLSS 3対応ゲームを試す! フルレイトレーシングも満喫可能だ

次は、DLSS 3(アップスケール&フレーム生成)に対応したゲームを試していこう。DLSS 3はRTX 40シリーズだけで利用できるAIを活用した強烈なフレームレート向上技術だ。フレーム生成のないDLSS 2までの対応となるRTX 3070との差に注目したい。

従来のアップスケーラーにフレーム生成技術を加えたのがDLSS 3だ。すでに50以上のゲームが対応とその数は増え続けている

まずは、定番FPSの「Call of Duty: Modern Warfare 3」と人気レースゲームの「Forza Horizon 5」を実行する。どちらも画質はプリセットの最上位を設定し、DLSSはパフォーマンス、RTX 40シリーズはフレーム生成を有効化している。どちらもゲーム内蔵のベンチマーク機能を実行した際のフレームレートを「FrameView」で測定している。

『Call of Duty: Modern Warfare 3』性能

『Call of Duty: Modern Warfare 3』動作時の電力消費

『Forza Horizon 5』性能

『Forza Horizon 5』動作時の電力消費

フレーム生成が利用できないRTX 3070は、一気に不利となるゲームだ。Call of Duty: Modern Warfare 3のフルHDで見ると、RTX 4070 SUPERのほうが約1.8倍もフレームレートが出ている。それで消費電力は40W以上も小さい。DLSS機能を用いたことによるワットパフォーマンスの優秀さが際立つ。RTX 40シリーズは解像度が下がると消費電力もきっちり小さくなるのも特徴だ。RTX 4070に対しては概ね15%フレームレートが向上した。

Forza Horizon 5は、RTX 4070に対してフレームレートの向上が大きく、どの解像度でも20%以上もアップしている。CUDAコア数や2次キャッシュ量の増加が効きやすいタイトルと言えそうだ。消費電力はスペック通り、各解像度とも約20Wの増加となった。

次は、重量級タイトルとして「Starfield」と「サイバーパンク2077」を試そう。同じく画質のプリセットは最上位にし、DLSSはパフォーマンス、RTX 40シリーズはフレーム生成を有効化した。Starfieldはジェミソンのロッジ周辺の一定コースを移動した際のフレームレート、サイバーパンク2077はゲーム内のベンチマーク機能を実行した際のフレームレートをそれぞれ「FrameView」で測定している。

『Starfield』性能

『Starfield』動作時の電力消費

『サイバーパンク2077』性能

『サイバーパンク2077』動作時の電力消費

Starfieldは非常に描画負荷の高いゲームだが、アップデートでDLSS 3に対応したことで、RTX 40シリーズにおけるパフォーマンスはかなり改善された。RTX 4070 SUPERはRTX 4070に対して16〜17%のフレームレート向上が見られ、RTX 4070 Tiとの差は10%と以下と優れたパフォーマンスを見せた。消費電力では、RTX 4070 SUPERがRTX 3070より2倍以上のフレームレートを出しながら、最大で38.4Wも小さいのにも注目だ。

サイバーパンク2077は、すべての光をシミュレートする“フルレイトレーシング”とも呼ばれる「レイトレーシング:オーバードライブ」に設定している。そのため、現状のゲームで最大級の描画負荷と言ってよい。このため、DLSSをパフォーマンス設定にしてもRTX 4070 SUPERで快適なプレイの目安と言える平均60fpsに届くのはWQHDまで。

とは言え、レイトレーシング:オーバードライブの美しさは別格だ。それをWQHDでも高リフレッシュレートのゲーミングディスプレイと組み合わせてなめらかな描画が楽しめるのはうれしいところ。4Kでも平均55fpsという快適にプレイできるフレームレートが出ている。

AIやCGレンダリング性能もチェック

ここからはクリエイティブ系の処理をテストしていこう。まずは、3DCGアプリの「Blender」を使って、GPUによるレンダリング性能を測定する「Blender Open Data Benchmark」を試す。

『Blender Open Data Benchmark』性能

一定時間内にどれほどレンダリングできるのかをスコアとして出すベンチマークだ。この処理ではRTX 4070 SUPERはRTX 4070 Tiにかなり迫っており、junkshopやclassroomの処理では1〜2%程度の差しかない。処理によっては、同格になることもある。

次は「Procyon AI Inference Benchmark for Windows」を実行する。MobileNet V3、Inception V4、YOLO V3、DeepLab V3、Real-ESRGAN、ResNet 50と複数の推論エンジンを使ってAIの総合的なパフォーマンスを測定するベンチマークだ。Windows MLとNVIDIA TensorRTでテストした。

『Procyon AI Inference Benchmark for Windows』性能

RTX 4070 SUPERはRTX 4070に対して約20%の性能向上が見られ、CUDAコア増加分がキッチリと効いた形だ。AI処理にも強くなっているのが分かる。

続いて、動画編集アプリの「DaVinci Resolve STUDIO 18.6」を使って、Apple ProResの4K素材を使ったプロジェクト(約2分)をH.265とAV1にNVENCを使って変換する速度を測定した。品質:80Mbps/Rate Control:固定ビットレート/Preset:速度優先の設定でエンコードを実行している。

『DaVinci Resolve STUDIO 18.6 エンコード』性能

RTX 4070 TiはNVENCを2基搭載しており、それを同時使用するデュアルエンコードが可能なので処理時間は非常に短い。RTX 4070 SUPERとRTX 4070は同じNVENCが1基搭載なので処理速度はほぼ同じとなった。

扱いやすい消費電力で高い性能を持つ注目GPU

最後に温度とクロック、カード単体の消費電力推移をチェックしよう。サイバーパンク2077を10分間プレイした際の温度と動作クロックの推移を「HWiNFO Pro」で測定している。GPU温度は「GPU Temperature」、クロックは「GPU Clock」の値だ。室温は21度。バラック状態で動作させている。

『サイバーパンク2077』動作時の温度

ブーストクロックは2,670MHz前後で推移。仕様上のブーストクロック2,475MHzなので、ゲーム中はそれよりも高クロックで動作している。それほど大型のクーラーではないが、温度は最大68.3度、平均65.5度と冷却力は十分だ。

今回の試用を通して「RTX 4070 SUPER」についてまとめると、RTX 4070に対して概ね15〜20%の性能向上が確認でき、“SUPER”の名はダテではないと言える。それで消費電力はわずか20Wの増加なので、2スロット厚で扱いやすいサイズのカードが数多く登場するのではないだろうか。

WQHD解像度をターゲットにしたGPUだが、超重量級ゲーム以外は4K解像度で十分遊べるだけのパワーがあり、多くのゲーマーを満足させられる存在と言えるだろう。原稿執筆時点では、各社カードの価格は分からないが、目安通り8万円台で登場するならかなり人気の存在になるはずだ。(編注:実売価格は10〜11万円前後になるようです。)

装い新たに黒一色へと統一されたFounders Editionの高級感はかなりもの。日本での販売がないのは惜しい