ヤマハ XS-V1 Sakuraの待たれるその後!【このバイクに注目】(このバイクに注目)
2007年の東京モーターショーに、ヤマハは異彩を放つショーモデルをローンチ。
その名もXS-V1 Sakuraと、和をアピールするネーミングのコンセプト・モデルだ。
想定する排気量は空冷Vツインの1,000cc。
ヤマハの企業理念「感動創造」を具現化したモーターサイクルを"アート"という世界観でとらえ、乗り物の可能性・素晴らしさ・楽しさを主眼に展開と解説されていた。
ヤマハのデザインを手がけるGKデザインの習作で、展示された東京モーターショーでは、見た目が現実味に乏しいと映りあまり注目はされていなかった。
しかし16年以上を経過したいま、性能を追い求めるだけではないテイスティなスポーツバイクを求める層が具体的に増えており、そうした価値観でみると実は既に具体性を感じさせる造形であるのを気づかされる。
イメージの発端は1970年のヤマハXS-1。
同社にとって初の4ストロークによるバーチカルツイン(直立2気筒)で、当時ヤマハは英国のトライアンフやBSAにノートンといったバーチカルツインが、大型スポーツバイクの頂点と意識していたのだ。
それは佇まいがエンジンをはじめ、華麗なフォルムでまとめられているため、容易に想像できた。
ただ燃料タンクをはじめエンジンのカタチにしても、そこには日本のヤマハとしてのオリジナリティを込めていたのは見ての通り。
そのDNAをトラディショナル且つ未来を見据えたSakuraでも感じさせる。
当時はまだビッグバイクも性能追求がメインテーマで、大型バイクならではのテイスティな路線も、ヤマハではアメリカン・クルーザーなどかなりの比率で存在したが、いわゆる新しさを求めるニーズとしては捉えてなかった。
しかしスーパーバイクを筆頭に、そのパフォーマンスも既に発揮するには環境的に無理があるレベルに達している。
翻って性能の追求を最優先しないジャンルとなると、いきなりクラシカルな原点回帰を漂わせる"旧さ"になってしまい、モーターサイクルを"駆る"楽しさを訴求するのに乏しくなるコントラストを宿命的に感じさせてきた。
Sakuraは2007年の時点で、トラディショナルなデザイン・コンセプトながら新しさを明確に追求、走りにも空冷ビッグVツインの個性を前提に、軽量・スリム・低シート高・鼓動感を目標として掲げ、操る楽しさをハードとしてレベルアップしていくモチベーションを感じさせている。
こうした"新しさ"こそ、いま求められている「贅沢さ」のひとつであるのは間違いない。
マイノリティな個性を好むなら、生産台数の少なさからコストも相応に高く、日本車の価格帯から50パーセント増しなど当然の結果で、それでも購入するユーザーが存在するのはMT-01でも立証済みだ。
という"目"でSakuraを見ると、ローンチ当時の現実味に乏しい印象もない。
ぜひヤマハらしいオリジナリティに富んだジャンルをラインナップに加えて欲しいと切に思う。