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12月10日、duo MUSIC EXCHANGEにて“青山吉能トーク&ライブツアー2023「こぼればな(し)」”の東京公演が開催。声優アーティスト・青山吉能によるソロとしては初のツアーのファイナルを飾る本公演では、故郷・熊本や大阪での公演を通じて得た想いを歌声に込め、成長とともに提示。今年の振り返りなどを行なったトークパートとともに、今の青山吉能としての表現で魅せ・聴かせてくれた。

本稿では昼夜2回開催されたライブのうち、夜開催の2部の模様をお届けする。

PHOTOGRAPHY BY スエヨシリョウタ

TEXT BY 須永兼次

様々な“喜び”とともに、怒涛の2023年を振り返るトークパート



開演前、各客席には一輪の花と青山からのメッセージカードが置かれており、雰囲気を作るのと同時に彼女の想いをファンに届ける。そして開演時間を迎えたところで青山がステージに登場し、まずは「Sunday」の歌唱で公演はスタート。イントロ中に「素敵なSundayを彩りましょう!」と呼びかけ、クラップの音に包まれながら笑顔で歌い上げていく。ファルセットも効果的に用いながら響かせていく明るさ感じるボーカルは、まるで降り注ぐ日差しのよう。豊かな表情変化を通じて晴れやかに幕開けを飾る。



歌唱後には「悔いなく終えられるように今日も頑張りたい」と意気込み、前半・トークパートへ。今回はかねてから親交のある構成作家・浅野ゆーじ氏をMCとして迎え、青山が本筋を外れてボケると浅野氏が即座にツッコみ笑いを起こすという小気味良いやり取りとともにトークを展開。アーティスト活動を中心に2023年を振り返った1部に対し、2部では声優業などその他の側面も含めて振り返っていく。

2022年に出演作のヒットで一気に脚光を浴びた青山、2023年についても「常に駆け抜け続けてる、みたいな感覚」と変わらず忙しかったことをうかがわせる。だが、そんな濃い1年もあってかこの日は初めて彼女のライブに足を運んだファンの姿も散見されており、素直に嬉しさを口にしていた。



そうした出逢いもあった3ヵ所を巡るツアーというのも、今年初挑戦したことの1つ。ライブハウスならではの距離感について「この距離感が私は結構好きかも。これよりも奥に深くなったりすると、どうしても手が届かないから」と率直な心情を語り、「大きなステージに立つ姿を見たいという気持ちもわかるけど、このツアーは私の好きな距離感のステージで回ることができて良かった」と結ぶ。しかもそのうち“凱旋公演”にあたった熊本公演の会場は、青山自身がよく観客として足を運んでいた憧れの場所。そこに立てたことへの感慨も強烈だったと述懐し、「“凱旋”ってなかなかできることじゃないし、みんな九州は『行っても福岡』で熊本まで来ないんですよ」と自身が感じていた残念さから1公演目の会場に熊本を選んだと明かしていた。



そんなツアーの振り返りを経て、今度は来年・2024年について聞かれたところで、なぜか「えへへへぇー(笑)」と愛想笑いでごまかそうとする青山。「今年『も』やりたいことがなかった」と明かすと、浅野氏の導きもあって一旦は「来年も不幸せにならない」に落ち着く。その後、ライブやイベントの回数が増えることによるファンの労力や出費を心配するなかで改めて「来てくれてありがとう!」と感謝を述べ、「これからも『ありがとう』をためらわずに言います」と宣言して、結果的に目標も生まれていた。また、「(ライブに)来てない人はセトリだけを見てなんとなく『ふーん』ってなってるけど、みんなはここにしかない思い出を得ている」と表現。「ライブに来るのって大変だから、そのぶん愛おしい」と改めて感謝していた。

さて、トークパートの後半は企画コーナー「よぴぴん家のクリスマス」。スタッフ提供の情報を元にしたクイズに正解すれば、福引券をゲット。プレゼント抽選に挑戦できる……という、浅野氏曰く「接待コーナー」だ。まず第1問は、マネージャーからの「『空飛ぶペンギン』MV撮影で、本編はとってもかわいい赤いチークでしたが、眠気と戦う休憩中の裏側はまさに〇〇でした」とのクイズに、「まさに“ただの酔っ払い”でした」との正解に到達。福引券ゲットとなるが、代わりに画像が公開され「この写真をマネジメント側がOKするのが信じられない」と驚嘆していた。



続いて第2問はファンクラブ「よぴぴん家DX」メンバーへの「青山吉能に来年やってほしいこと・やりそうなことは?」のアンケートの2位がクイズに。FC動画で発言していた「オーベルジーヌ再現祭り」を挙げ、浅野氏からの「(FCは)セントラルキッチンじゃねぇから(笑)」とのツッコミが爆笑を生むが、それからすぐに「FCラジオをやってほしい!」と確信しての回答でまたも正解。ラストとなる第3問はレーベルスタッフによる「アーティスト活動のイベントのなかで『ちょっと怖かった』と思ったこと2つ」。浅野氏からの「リリースイベントと店舗挨拶」とのヒントを受けて「自分からお客さんにずんずん声を掛けに行く」を正解するももう1つが出ず、たまらず浅野氏に2択の大ヒントをもらうも「開始時間にトイレに行っていなくなった」と回答し、残念ながら不正解。正解は「リリースイベントの開演前、パーテーションの隙間から客を微動だにせず観ていた」で、こちらも第1問同様に写真も公開されていた。



ただ、福引券は計3枚ゲット。昼公演ではポケットティッシュ2個に終わっていたが、1回目からガラガラから玉が出てきた瞬間大絶叫。なんとのっけから特賞:55型有機ELディスプレイテレビをゲット!さらに2回目も1等:新型iPadが当選し、歓喜の絶叫。使用していたiPadの暗証番号を忘れて永久ロックがかかってしまった青山、ここでそれを取り戻す結果となった。ちなみに3回目には4等:うまい棒詰め合わせをゲットし、こちらは目録ではなく現物がその場で送られた。

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ツアーを通じて積み上げた表現を届けたライブパートでは、作りかけの新曲も初披露に



さて、しばし準備の時間を挟んでスタートした後半・ライブパートは、「Sweetly Lullaby」からのスタート。序盤のスキャットから歌声も弾ませながら、微笑みとともに歌唱していく。2-Aメロ序盤の低音部分などではグルーヴ感も感じさせつつ、楽曲後半の間奏などもノリよくこなしてぱあっと明るいステージをみせれば、そのまま続いた「あやめ色の夏に」は客席にあやめ色のペンライトの輝きが点在するなか訥々と歌い始めながらも、1サビ最後にウィスパー気味に歌われた「つぶやく」のフレーズなど、この日この曲に乗った感情は微笑みの中の優しさ・温かさがやや強め。その一方で、2-Bメロのラスト4小節では彼女の感情はぐいっと盛り上がり、歌声も微笑みとともに会場中へぐわっと広がっていく。青山吉能というシンガーの表現力の片鱗を感じさせつつ、ラストには青からあやめ色へと色を変えた照明に包まれながら曲を閉じた。



2曲歌ってのMCパートでは、初めてのツアーについて「セトリが大きく変わらないので、表現を追い求められるのが良いところ」とシンガーとしての立場から振り返り「最終公演なので噛み締めながら、ゆったり楽しむ気持ちを忘れないように」とまとめると、「Mandala」のイントロが流れるなか、逆光に包まれ下を向いて首を振りスイッチ切り替え。ボサノバ風のアレンジに合わせるようにやや穏やかに歌い始めると、2-Aメロなどではこの曲ならではの溜めを活かしたりウィスパー気味に歌ったり、直前に言及したとおりのこのツアーならではの表現の挑戦・成長から生まれたものを歌声に込めていく。

そしてここで、約2年前に生まれた初作詞曲「たび」が歌われる。ツアーという旅路を経ての披露となったこの曲では、優しくしっとりと歌い始め、繊細なボーカルワークを通じて心の振れをありありと映し出していく。その歌声は、真っ直ぐだけれども確かに心の揺れが伝わる、この日も自然と聴き手の心を震わせてくれるもの。Dメロあたりからは息遣いも荒く、ボーカルにも力強さが加わってエモーショナルさをどんどん増していき、大サビでは歌声が少々裏返るほどにその感情は膨れ上がる。その感情の吐露を経て、最後のフレーズが微笑みとともに優しく歌われたところで、胸に熱いものが込み上げてきた観客も多かったのではないだろうか。



歌唱後、この曲に「『たびを一緒に歩んでくれてありがとう』の気持ちを込めた」と語った青山。そんな2021年の自身の気持ちに続いて、新鮮な今の気持ちが込められたツアーを通じて生まれた新曲が、1コーラスだけ初披露されることに!今の想いを乗せたその新曲は、優しい表情での歌唱に。湧き上がる強い想いがきっかけで音楽活動が始まり、歩みを続けてきたこの2年間。その歩みを止めずに続けたいという想いと、その原動力や勇気の源の1つだったファンへの想いを込めた楽曲を、大事に歌い上げていた。

歌唱後には「このツアーは私の『花』と『愛』みたいなものを同義として作ったもので。ぎゅっと集まって花束のようになって見えるみんなのことが、そのまま『愛』なんだなぁという想いを今までももらっていたし、このツアーでもそう感じました」と、ツアーを通じて感じた想いをしっかりと言葉にする。そんな新曲の次に歌ったのは、「透明人間」。直前の感情をそのまま持ち越してか、この日はほかの曲以上に顔と視線を客席のあらゆる方向へと向けていき、音源よりもやや強めな歌声とともに想いを直接的に感じさせた点が非常に印象的。2サビでは少々頭を振り乱しながら歌うことで、まさに歌詞どおり生モノの“今しかない感情”を形にすると、最後には心の内を全放出するかのような歌声をもって、聴く者すべての心を突き動かしていった。そして1stシングル「Page」では、白の逆光を背に歌い始める青山。「透明人間」と続けて歌われることで、ライブ終盤にして「この『たび』を経て、また新しいページを開いていく」という意志をも感じさせていき、美しくも堂々とした歌声や彼女の晴れやかな表情が彼女の“これから”にも観客自身の未来にも希望を与えていく。また、Dメロで歌い上げる歌声には力強さが増しており、前に立つ者としての堂々さを感じさせるそれが、またたまらなくかっこいい。



ラストのスキャットまで晴れやかに歌いきって大事な2曲を締め括ると、曲明けには「年内は歌うのがラストと思うと寂しい」と率直な想いを口にし自身も惜しみながらも、ラストナンバーとして最新シングル「空飛ぶペンギン」の歌唱へ。ふわふわと歩きながらやや軽めに歌い出すと、この歌詞ならではの飄々とした雰囲気を醸し出しながら歌唱していく。歌詞とともに心を躍らせるようにその歌声をどんどん大きく広げていきながら、広大で爽やかな青空を思わせる楽曲の中を自在に泳ぐかのように、ラストまで歌唱を楽しんでいった。

歌唱後にはやや過剰に哀しげに「“こぼればな(し)ツアー2023”、終わりまーす」とおどけつつも一礼して、まるで何かの“フリ”のように「あーあ、終わっちゃうのかぁ……」とこぼしながらステージを降りる青山。そこからすかさずクラップアンコールが起こると、「バンドメンバーの紹介漏れ」と「ちゃんと『ありがとうございました』をちゃんと言っていない」ことを理由にステージに帰還。まずはバンドメンバー2人を紹介しつつ気心知れたトークを繰り広げると、「みんなと一緒にライブを作るうえで欠かせない曲を、手拍子で彩ってもらっていいですか?」と呼びかけ、「やっぱりやっててすごく楽しいし、皆さんの楽しい顔が見られるのもすごく嬉しい」曲、「STEP&CLAP」をアンコールに歌い始める。会場中から凄まじく響きに響いた手拍子の音を耳にした青山は、嬉しそうな表情でエネルギッシュさのある歌声を届けていく。2サビ後は「たくさん“愛”聴かせてもらってもいいですか!?」と呼びかけると、Dメロでその“愛”の演奏はさらに大きく響き渡っていく。それを受け取った青山がステージ上で笑顔の花を咲かせてラストを高らかに歌い上げると、会場全体でのクラップエンドでライブを締めくくった。



最後に、忘れていた感謝の言葉も生声で「ありがとうございましたー!」と大きく響かせ、深々と長い時間一礼。大きな拍手に心弾ませながらステージを降りた。……が、すかさずWアンコールを求めるクラップがスタート。それを受けて現れた青山、「お願いだから、帰ってくださーい!」と冗談でひと笑い起こしつつ、熊本・大阪公演の観客にも想いを馳せ、「皆さんの気持ちをぎゅっとして、できかけの新曲にも注入して……皆さんとともに私の音楽って成り立っておりますので、これからも末永く応援していただけると嬉しいです」と誓いも込めた言葉で、記念すべき初ツアーは幕。終演後の影ナレ後に沸き起こった拍手は、このツアーの成功を言外に示していたようだった。

2部の開演直前にBGMとして流れていた「STEP&CLAP」の1-Aメロ部分、“3時間のお喋りより なんか気持ちが通じる気がする 高鳴る鼓動で分かるよ 出逢いこそ奇跡だ”との歌詞どおり、たくさんの人との奇跡のような出逢いを果たして、歌とトークで気持ちを通じ合わせてみせた青山吉能。目の前に広がる光景から美しい“花束”を受け取った彼女が、作りかけの新曲をどう完成させていくのか。フルサイズが発表予定の、「何かの花が咲く頃」が楽しみだ。



■青山吉能トーク&ライブツアー2023「こぼればな(し)」東京公演 2部

2023.12.10@duo MUSIC EXCHANGE

【SET LIST】

M00. Sunday

M01. Sweetly Lullaby

M02. あやめ色の夏に

M03. Mandala

M04. たび

M05. (新曲 1コーラス)

M06. 透明人間

M07. Page

M08. 空飛ぶペンギン

M09. STEP&CLAP

●リリース情報

デジタルシングル

「空飛ぶペンギン」

配信リンクはこちら

https://aoyama-yoshino.lnk.to/soratobu-penguin

関連リンク



青山吉能オフィシャルサイト

https://www.teichiku.co.jp/artist/aoyama-yoshino/